死者のあやまち (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-72)

  • 早川書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150700720

感想・レビュー・書評

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  • ポアロはオリヴァ夫人に呼ばれて、彼女が殺人ゲームの筋書きを引き受けて滞在しているナス屋敷へ赴いた。彼女は何か不穏なものを感じるのでポアロに事件を防いでほしいというが、ゲームの最中に被害者役の少女が本物の死体となって発見される…
    キャラは典型的だが描写がうまい。戦後に没落して屋敷を手放したり、それがユースホステルになったりという時代の変化が切ない。
    中盤はポアロの活躍があまり見られず少し冗長に思えるし、ラストで真相がわかるところも唐突な感じだが面白かった。
    それにしてもポアロがコーヒーに砂糖4つ入れててびっくり。入れすぎ。

  • 新訳版読了後記載
     クリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。相棒はオリヴァ夫人。
     再読によりクリスティの作品を沢山読み返しているが、久しぶりにオリヴァ夫人の熱量に討たれた。ポアロシリーズは周辺人物も魅力的だが、何故か少し苦笑いしている様に見えるポアロが新鮮であり、彼に対して突進してくる様なオリヴァ夫人のおばちゃん感はとても魅力的で実は好きなコンビだ。クリスティはオリヴァ夫人に自身を投影している様だが、これだけ生き生きとした登場人物は他の作家でも中々思い出せないし、本当に魂がある様に錯覚させられてしまう。
     今作では、ポアロにオリヴァ夫人からいきなり電話がかかって来て怒涛の如く捲し立てられ、ミスレモンが呆れる熱量でなにも知らないままのポアロを引っ張り出す荒技だ(笑)現地のナス屋敷に赴いたポアロにオリヴァがお祭りの為に考えた殺人ゲームの表彰者になってくれといわれた時の彼の自尊心が怒りに震えてある描写は読者にもありありと伝わるが、彼女がポアロを呼び寄せた本心はこの屋敷に蔓延る不穏な空気であり、中傷的だが感覚の鋭いオリヴァの話を受け入れ、このナス屋敷で開催される地域のお祭りに参加する。その中でオリヴァが考案した殺人ゲームの死体役が実際に殺害され、合わせて屋敷の夫人が失踪し行方不明になる。
     今作もやはり序盤から面白く、オリヴァに振り回されるポアロはある意味お約束であり読者の大好物のはずだ(笑)長編に相応しく最後数ページ迄真相が見えてこないスリリングな展開はとても面白く、読者も同じ道筋を辿りながらも納得のいく推理に中々進んでいかない。そんな中、ボート管理人の老人が酔って誤って池に転落し亡くなった事を受け、そこから物語が進展し、一気に解決へと進んでいく。
     クリスティの作品では人物の入れ替わりや変装がよく登場するが、今作はよくその効果を活用している。ハティを訪ねてくる従兄のド・スーザという人物を効果的に見せる事で読者を混乱させており(当然、長らく女史の作品を読んでいればまず疑う人物なのだが)実際にかれの作用が何にたいしてなのか、何を偽装する為に彼を登場させたのかは巧妙の限りだ。しかし、少なくともフォリアット夫人がもう少し彼女の家族やハティについて証言したり描写しなければ、読者はこの真相を思いつかないだろう(冒頭、ボート管理の先代から使える老人が匂わせており、色々と疑ってはみたが。)
    クリスティの作品では犯人以外の人物達は事件後幸せになる事が多く、今回例に漏れず科学者夫婦のロマンスは好転する予測があるが、フォリアット夫人には更に悲しい結末が用意され、彼女の人生はリドルストーリーの様に締められており、もしかすると悲劇的な最後を選んでいるのかも知れない。
     クリスティ作品の中でも悲哀に満ちたいる作品であり、プロット、トリック、余韻とどれをとっても満足度の高い作品だ。

  • ポアロでは珍しい子供の犠牲者が出る。
    中々話が前に進まない展開ですが、残りページ少なくなってからのポアロの推理が早い!!こんだけのページで終わるの!?と違うトコロにハラハラした。

  • 「アガサ・クリスティ」の長篇推理小説『死者のあやまち(原題:Dead Man's Folly)』を読みました。

    『ホロー荘の殺人』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。

    -----story-------------
    田舎屋敷で催し物として犯人探しゲームが行なわれることになった。
    「ポアロ」の良き友で作家の「オリヴァ」がその筋書きを考えたのだが、まもなくゲームの死体役の少女が本当に絞殺されてしまう。
    さらに主催者の夫人が忽然と姿を消し、事態は混迷してしまうが…
    名探偵「ポアロ」が卑劣な殺人遊戯を止めるために立ち上がる。
    -----------------------

    本作品は1956年に発表された「エルキュール・ポアロ」シリーズ長編第27作目だそうです… 先日読んだ『ホロー荘の殺人』から、ちょうど10年後の作品にあたりますね。

    舞台はデヴォンシャー、時代は70年くらい違いますが、「ホームズ」シリーズの名作『バスカヴィル家の犬』と近い場所のようです… そんな田舎での屋敷で起こった事件、、、

    お祭りでの目新しい趣向として、著名な女流探偵作家「アリアドニ・オリヴァ」がプロデュースした、殺人事件の犯人探しゲームが催されますが、死体役の少女「マーリン・タッカー」がホンモノの絞殺死体として発見され、時を同じくして屋敷主人の婦人「ハティ・スタッブス」が姿を消してしまいます。

    その後、村の老人「マーデル」が舟から落ちて溺死するという事件が発生しますが、泥酔していたことから事故として処理される… この老人は絞殺死体として発見された「マーリン・タッカー」の祖父であったことから、「ポアロ」は、その関連性に着目します、、、

    いやぁ… 他人の秘密を知ってしまうのは怖ろしいことですね。

    戦後の混乱時、戦死したと思っていた息子が還ってきて、別な人物になりすます… という展開は「横溝正史」っぽい雰囲気を感じましたね。

    本作の中で「ポアロ」が推理をパズルに例えるシーンがありますが、、、

    ホントにその通りで、一つひとつのピースが埋まり、全てのことが繋がるとスッキリ… 本作も最後のピースが埋まった瞬間に、「アガサ・クリスティ」作品読後に共通する満足感がありました。


    以下、主な登場人物です。

    「エルキュール・ポアロ」
     私立探偵。

    「ジョージ・スタッブス卿」
     ナス屋敷の主人。
     資産家で先頃ナス屋敷を買い移り住んでくる。

    「ハティ・スタッブス」
     ジョージの妻。
     知能に障害があり天涯孤独の身だが多額の遺産を持つ。
     犯人当てゲームと前後して行方不明となる。

    「フォリアット夫人」
     ナス屋敷の元所有者。
     戦争で息子2人を亡くす。

    「アマンダ・ブルイス」
     スタッブス卿の秘書。

    「ヘンデン」
     スタッブス卿の執事。

    「マイケル・ウエイマン」
     建築家。
     ナス屋敷の改装のため屋敷に滞在している。

    「アレック・レッグ」
     原子科学者。

    「サリイ・レッグ」
     アレックの妻。

    「ウイルフレッド・マスタートン」
     地方議員。

    「コニイ・マスタートン」
     ウイルフレッドの妻。

    「ワーバートン大尉」
     マスタートン家の代理人。

    「マーリン・タッカー」
     少女団の団員。
     犯人当てゲームの被害者役だったが、本物の死体となって発見される。

    「マーデル」
     村の老人。
     マーデルの祖父。
     だいたい酔っており曖昧な言動が多い。

    「エティエンヌ・ド・スーザ」
     ハティの従兄。
     ヨットで世界中を旅しており、祭りの日にやってくる。

    「ブランド」
     警部。

    「アリアドニ・オリヴァ」
     女流探偵作家。
     ポアロとは旧知の仲で、彼をナス屋敷へと招待する。

  • 何年かぶりに読んだので、犯人も忘れていて楽しめた。

  • ネットのレビューで、
    「ラストで うあーーーーってなった」
    みたいなことが書いてあったので、興味をひかれて読んでみた。

    うあーーーーってなった。

  • 読んでいる最中に、ここは伏線なんだろうとか、之はこういうことなんだろうと思ったことが、ことごとく回収されたのは良かった。ただ、推理に必要なすべての情報が提示されるのが遅すぎる気がする。

  • 最初の殺人が少女で
    何の恨み関連もない上に
    誰がやったかはわかりづらい作品。

    だけれども真相につながる作品は
    徐々に出てくるので
    怪しい人はある程度出てくるかと。

    しかしポアロも事件以外のもので行ったのに
    巻き込まれてしまうのは災難ですよね。

    必見は真相判明部。
    ひじょうにおどろおどろしいです。
    この手の作品は過去の作品にはあったけど
    ぐはぁ、となってしまうことでしょう。

    犯人の狡猾さが
    目を惹く作品です。

  • 1956年発表
    原題:Dead Man's Folly

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