パンチとジュディ (ハヤカワ・ミステリ文庫 クラシック・セレクション)

  • 早川書房
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150704131

感想・レビュー・書評

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  • 「金」にまつわるミステリー事件では、往々にして捜査する側の内部組織が疑われるがその一つだ。いくつかの証拠に、アリバイ等を用意するのはお手の物、だがやはりミスはどこかで発見され疑問を持たれ、解決に向かう。この小説のミスは偽金で挟んだ本物紙幣束を見抜いたこと、複雑化させる人物・証拠・アリバイなど人柄からの陽動心理作戦だ。

  • 翻訳ミステリって、馴染みのない文化やワードもあったりして読みづらいから、読んでるうちに寝落ちしてしまうケースが多い。(つまらないからじゃなくて、面白いんだけど寝ちゃう、みたいな)
    でもこの本は、前半は一気に読み進められた。もう、ケンを勘弁してあげてー、ってくらい色々な事件が起こって、ちょっと笑っちゃうくらいだった。
    そしてほんとに翌朝結婚式なんてできるの?なんて思ってたけど最後もきっちり終わって良かった。ミステリというより、アドベンチャー的な感じだった。

  • 結婚前夜に元調査員の男がある人物について調査して欲しいという依頼を受ける。
    調べを進めていくうちに殺人事件に遭遇し警察にも疑われ逃亡していくどたばた劇の色が強い作品。
    毒薬をすり替えた者を軸にH・M卿たち四人の推論を披露する終盤が謎解きものとしてわくわくする要素。

  • 『貴婦人として死す』が思いのほか面白く、またもやカーター・ディクスンに挑戦。とにかくヘンリー・メリヴェールのキャラクターが最高。いやったらしさの一歩手前、何ともいえずめんどくさいんだけど憎めないおもろいおっさん。良い。

  • H・M卿シリーズです。
    物語は「一角獣の殺人」の続きとなります。
    ケンはイヴリンとの結婚式前日にH・M卿に呼び出されます。
    元ドイツスパイのホウゲナウアが国際指名手配中のLの正体を明かすと情報部に接触してきたので、その真偽を確かめる為にこの元ドイツスパイの老人の屋敷へ潜入をしろとの事なのです。
    潜入した屋敷でケンは老人の死体を発見します。
    さらにケンはほぼ同じ状況下でもう1体の死体も発見します。
    全編、ケンが次から次へと大変な目にあっていてドタバタしていますが、そのケンの奮闘が笑えてしまうのです。
    最後のオチまでも笑えました。
    本書は題名の「パンチとジュディ」のままにドタバタしています。

  • H・M卿もの。H・Mに突然呼ばれたケンは、結婚式を明日に控えていた。ケンはH・Mに渋々従い、ある老人の家に忍び込む任務を与えられる。しかし、老人は死体として発見されケンは手違いから警察に追われるはめに……奇怪な事件を解決しケンは結婚式をあげられるのか。スパイチックな冒険ものなのに、裏に巧妙な謎が隠されていて展開がすごいなあと思いました。ケンの冒険潭もドキドキする場面も多かったですね。犯人もなかなかな人物で面白かったです。ただ、なんかいまいちしっくりこないのは何故かなあ……いまいちあの謎装置が理解できなかったせいかな……。

  • ええー?あんたが犯人?
    釈然としない何かが。
    国籍・性別・名前不明で超天才の
    重大機密ブローカー“L”は、死んでいた……!??

  • 異色のスパイもの。
    もちろんご多分に漏れず
    狂気めいた雰囲気つき。

    せっかくの爽快感も
    狂気に押しつぶされて
    なんかさびしいものがあります。
    というか、爽快感は歴史ミステリ以外
    カーには求めてはいけない…

    ただし犯人は思わぬところから
    出てきますよ。
    ヒントは出てくるけど、
    たぶん情報に惑わされて
    見えなくなっているかと。

    ちなみにこの作品は
    ある意味完全な解決を見ません。

  • 「これまで、わしは数多くの変わった事件を手がけてきた。わしはパンチとジュディの芝居に出てくる道化のようなものだ。階段の上から頭を出すたびに、誰かに棒で叩かれる。そして、観客はどっと笑うのさ。だが、いいかね、パンチとジュディの芝居で最後まで生き残るのは道化だけだ。誰にも褒めてはもらえない。ふん」

    2023/6/11読了
    カーの作品で、特に〈H・M〉ものはドタバタ喜劇的な要素が強いのだが、本作はタイトルからしてドタバタ全面展開。しかし、明日結婚式だっていう部下を事件に引っ張り込むとか、パワハラにも程があるだろう、H・M!

  • 道化役を演じたケンの東奔西走する姿が描かれる前半は今までのカー作品と違うドタバタスパイ劇のようで、読者はH・M卿の意図が解らぬまま、ケンと一緒に迷走させられる。
    やがて物語は大規模な偽札事件へと発展していくのだが、この辺の話は複雑すぎて頭に入りにくかった。

    題名の「パンチとジュディ」はドタバタ喜劇の人形劇の名前に由来する。つまり物語のメインの設定である“L”の正体探しは実は実体のない事件だったということを現している。

    つまり、今回のカーがこの作品でやりたかった仕掛けは物語の設定自体がトリックだったというもので、元ドイツ・スパイの登場、心霊実験、偽札事件といった設定を盛り込み、何故犯人が嘘をついたのかを成立させるために腐心しているが、前述したように複雑になりすぎて、仕掛けのための設定になってしまい、小説としての結構を損なっているように感じた。
    もう一度読めば、それぞれの事柄について犯人の作為を思い浮かべながら読めるかもしれないが、それは遠慮したい。

    ところで18章にて登場人物にさせられる犯人当てはもしかしたらカーなりの“読者への挑戦状”だったのかもしれない。その挑戦に私は敗れてしまったが、果たしてこの犯人を当てられる読者はいるのだろうか?
    恐らくカーは見破られない自信があったからこそ、今回あえてこのような挑戦状を盛り込んだのはないだろうか。だとしたら、かなりの負けず嫌いだなぁ、カーは。

    しかしホウゲナウアとケッペルの殺人事件の真相はちょっとがっかりした。遠距離で起きた2つの同種殺人(どちらもストリキニーネによる毒殺)の謎が非常に魅力的だっただけに残念だった。この二つの殺人は本作のもっとも際立つ場面であるのに、真相が明かされたら実は単なる物語の末節に過ぎなかったというのが驚いた。
    これがカーのケレン味なのか?いやはや・・・。

    しかし本作で災難なのはケンとイヴリンの二人である。親戚とはいえ、結婚式の前日にこんな困難な仕事を頼むかね~、普通?

  • 2020/06/11読了

  • 結婚式前日にH・Mに呼び出されたケン・ブレイク。Lと呼ばれるスパイの正体をさぐるためにでかけるケンを捉える警官。ヘンリーと警察所長チャーターズの命令での逮捕。警官からの脱出。ケンが発見した元ドイツのスパイ・ホウゲナウアの毒殺死体。金と引き換えにLの正体を明かすと約束していたホウゲナウア。偽札を盗み逃亡したチャーターズの秘書サーポス。逃亡中のケンが発見したホウゲナウアの友人で科学者のケッペルの毒殺死体。

    市川図書館

    2009年2月18日購入

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著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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