- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150707170
感想・レビュー・書評
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共産主義国家ソ連が地図から消えてずいぶん経つ。冷戦を背景にしたスパイ小説を今読むと、なんとなく現実のことのような気がしなくて不思議だ。むしろ、ファンタジーのような気さえしてくる。
フランシスの小説のいくつかには情報小説的な一面もあって、共産主義国家というものを一般人の視点からレポートしてくれていて、新鮮な驚きがたくさんある。どちらかといえば憂鬱なものが多いのだけど。
そういう憂鬱な、息が詰まるような重苦しい世界の中で、馬を愛する気持ちがいわば心と心をつなげるパスポートになるという設定が美しい。ふたつの異なる世界が出会い敵視があり、その中に小さな共通語を発見し交流が始まる。普遍性を持つ物語なのではないだろうか。
その他にも、テロリズムが取り上げられるなど、フランシスの作品としては異例な要素がたくさんある。小説としてのレベルを考えるなら、苦し紛れではなく意欲作と言うべきだろう。もちろん、主人公に襲いかかる肉体的な危機をはじめとする、いつものフランシス節も魅力もたっぷり盛り込んである。
ただし、全体としてはちょっと理屈に走っている部分があるような気がするし、テーマを露骨に語り過ぎている気もする。毎度お楽しみの恋愛話も、あまり後味がいいとはいえない。全体としてどうも爽快感に欠けるのだ。
フランシス作品の入門書とはとても言えないけれど、ちょっとした変化球としては魅力的なのではないかと思う。 -
競馬シリーズ第17作。モスクワ・オリンピック直前の作品。謎の言葉を残して急死した騎手。彼は、オリンピック優勝をめざす英国の王子の義弟と同性愛の噂があった。スキャンダルを恐れた王室は、元騎手ドルーに密かにモスクワでの調査を依頼した。しかし・・・。別に諜報部員でもなく、視力の低下や気管支の既往症をもつ元騎手が調査するところが、この作品のみそ。旧ソ連の描写の多くは、実体験によるものなのでしょうか?
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