複数の時計 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (501ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300295

感想・レビュー・書評

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  • このシリーズを読み続けているからこそ、見当違いの方向に導かれた感がある。
    これぞ無意識の先入観か。
    正体不明の男の死体と、彼を囲むように置かれた複数の時計。
    もうこれだけでワクワクしてしまうもんなあ。
    それにしてもポアロってこんなに年老いてたっけ?
    すごくお爺さん感があって、ちょっと驚いてしまった。

  • クリスティーの黄金期の名作には劣るものの、後年の良さが感じられる作品だった。

  •  クリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。ポアロが安楽椅子探偵を演じている作品。(結局は好奇心に敗れ行動してしまうわけだが)
    クリスティ作品はある程度学生時代に読んでいたのだが(特に長編は沢山読んだ)今作は未読だったらしい。幸い、ポアロシリーズの目新しい作品を読んだ気分であり得した気持ちだ。作中、驚いた事にポアロがミステリーにのめり込んでいた(オリヴァの作品がお気に召さないのは彼らしい)ポアロのミステリー批評は面白いが、ポアロらしくない印象を受けてしまう。(作家や作品への言及はクリスティ自身を反映しているかもしれないが、クリスティとポアロが同じ批評になるとは思えない。)まただいぶ長いパートになっており少し疲れてしまった。ただし、後半になり、このパートが真相に大きな影響があった事に驚いた。ある意味伏線として作用しており、流石だと感心してしまった。
     とある盲目の女性の家で、全く見ず知らじの紳士が殺害される。発見したのは家に派遣されたタイピストの女性シェイラであり、彼女は驚き家から飛び出した所で青年コリン(今作の主な語り手)に介抱される。警察到着後、捜査の結果、この家のものではない時計が当然のごとくおいてある事に気がつく。
     一見、全く意味がわからない設定であり、この問題がどこに繋がるのか全く想像しなかった。
     盲目のペプマーシュはタイピストの依頼もしていないし亡くなっている男性も知らない、家にある時計は二つのはずで、それ以外は自身が出かける早朝までは無かった。一方、タイピストのシェイラは会社の所長から名指しで電話があったと伝えられ、指示通り到着後死体を発見、死体は知らない人だし、ペプマーシュとも面識がない。
     主な語り手のコリンは情報部員であり、このミステリーではスパイ探しの様な側面も並行して進められている。また、彼はかねてよりポアロの友人で、彼へ刺激を与え、兼ねてより椅子に座ったまま必要な情報だけで事件が解決できるという自尊心に悪戯してやろうという気持ちを秘めながらポアロを訪ねる。
     ポアロ作品の中でもより安楽椅子探偵に近い役回りの作品だが、最後、ポアロの人柄が滲み出る(笑)犯人について、作中でとある事を仄めかしており、時計の謎については納得できる。
     第二、第三の事件がなければ発見は難しいと思われる。完全犯罪たり得るのは、現代の様なセキュリティ社会では無いためであり、今回の様なトリックは不可能に近い。しかし、時計を置いた動機(犯人の一人が過去にとある理由で知り得たミステリーのオマージュ)というのは面白い。

  • 惚れっぽいヒーローがもしかしたらクリスティーは好きなのかもしれない

  • 大好きなポアロシリーズ。
    ポアロの活躍がもっとあると良かったな〜。
    ポアロ途中で登場だった。
    内容は、ん〜という印象だった。

  • ポアロ@住宅街!隣近所を巡りながら、噂話を聞いて歩く。この街、なんか変じゃない!?といっても動き回るのは警部と諜報部員で、ポアロは安楽椅子に座り小説を貪り読んでいるのだけど。そのポアロの口を借りて展開される推理小説論がすこぶる愉しい。大仰な事件の仕掛けと、それの解決される顛末は、古今東西の小説で繰りひろげられる、奇妙奇天烈なトリックを嘲笑うかのよう。晩年のクリスティーは、自ら創りあげたミステリの枠組みそのものを破壊しようと腐心していたようにおもえる。枠の、本の外側へ!ポアロだって時には外へ出たくなるのだ。

  • 翻訳の問題か?楽しさが微妙に伝わらない。読者の方の酷い感想が多々書かれていた。やっぱり。。。タイプ引受所に勤務するシェイラは、速記タイピスト派遣の依頼を受け、依頼人のもとへ向かった。しかしそこで目にしたのは知らない男の死体だった。その部屋の住人は目が見えないペプマーシュ。彼女はタイピストを依頼していなかった。また部屋に置かれた複数の時計、死んだ男は何者なのか?誰が彼女を呼んだのか…。多くの謎が残る中、タイピストが殺され、さらにもう1人。犯人動機はまあ納得、が、伏線未回収の酷さと不明なミスリードが多すぎ。②

  • アガサ・クリスティー。ポアロシリーズ。
    盲目の教師の家でタイピストが謎の男の死体を見つける。
    現場には謎の複数の時計が置かれていた。
    ポアロシリーズではあるがポアロの出番は少なく、ぽっとでの情報部員が語り手となり進んていく。
    正直平凡以上のできではなく、複数の時計の意味も拍子抜けで、情報部員側の任務も、なぜ混ぜたのかわからないできでした

  • タイピストのシェイラは、派遣先である住宅街の一室で男性の死体を発見する。そこには複数の時計が置かれており、時計の針は本来の時刻ではなく四時十三分を示していた。ポワロは友人の秘密情報部員、コリン・ラムの情報を得て謎を解明する。

    ううむ、これはちょっともったいない。最初に広げた風呂敷をうまくたためていない、という感じだ。
    話のつかみはおもしろい。いきなり現れる身元不明の死体。謎を呼ぶ複数の時計。四時十三分の謎。どことなく怪しげな住宅街の住民。コリン・ラムのくだりに嫌な予感を感じつつも(クリスティの作品はスパイが絡むと面白くなくなる)、『ナイルに死す』のような見事な収束を期待したのだが、一番の謎がかなりどうでもよいトリックだったことが判明し、がっかりする。

    ポアロがほとんど活動しないのも残念ポイントの一つだ。彼はもともと足を使った調査はあまりしないが、それでも自ら関係者に話を聞きに行くことは多い。そしてそのやり取りの中でちょっとした伏線がまぎれこませてあったり、ポアロのユーモアやジェントルマンな振る舞いが読者を楽しませてくれるのだが、この話にはそれもない。それほど切れ者とは思えないコリンのまだるっこしい聞き取りや捜査の様子が終盤まで続くので、退屈してしまうのだ。
    この作品は後期の作品。クリスティ、ちょっと疲れてきたのかな。
    『アガサ・クリスティー完全攻略』ではこの話の評価は甚だ低い。今回は私も著者の霜月氏に一票、である。

    ちなみに、先日BSプレミアムでこの話のドラマが放映されていた。話はわりと原作に忠実に作ってあったように思うが、恋人を自分の過失で失い傷心のコリンと、恵まれない境遇のシェイラが、疑心暗鬼になりながら少しずつ心を通わせていく様子が盛り上げ要素としてストーリーにうまく肉付けされていて、原作よりも面白く感じた。

    • b-matatabiさん
      111108さん、こんばんは。いつもレビュー楽しく拝見しています。

      この前のドラマ、よかったですよね。
      クリスティの作品の中で、男性...
      111108さん、こんばんは。いつもレビュー楽しく拝見しています。

      この前のドラマ、よかったですよね。
      クリスティの作品の中で、男性キャラがまだどんな人かわからないのに美しい女性をすぐ好きになって、最後に結婚まで申し込むのがいつも納得いかず…
      この前のドラマは、お互いに惹かれあっていく様子が丁寧に描かれていたので納得しました。
      コリンもちゃんと働いていましたね。
      2021/08/17
    • 111108さん
      お返事ありがとうございます♪
      こちらこそ丁寧なレビューをいつも楽しく感心しながら拝見してます。

      「男性キャラが美しい女性をすぐ好きになって...
      お返事ありがとうございます♪
      こちらこそ丁寧なレビューをいつも楽しく感心しながら拝見してます。

      「男性キャラが美しい女性をすぐ好きになって結婚まで申し込む‥」確かに、ヘイスティングスを筆頭に惚れっぽい男の人多いですね。時代なのか?話を盛り上げるためのクリスティーの常套手段なんでしょうか?
      2021/08/17
    • b-matatabiさん
      クリスティ、結構情熱的な感じなので、会ってすぐ運命感じてしまうのが当たり前、と思っていたのかもしれませんね。
      クリスティ、結構情熱的な感じなので、会ってすぐ運命感じてしまうのが当たり前、と思っていたのかもしれませんね。
      2021/08/17
  • 盲目の女性が暮らす家で、家主の外出中に突如現れた身元不明の男性の死体、その現場に、何者かに名指しで呼ばれたタイピスト、部屋には外から持ち込まれた複数の時計…。
    物凄くドラマチックに、物語が始まります。
    舞台となる住宅地の形状も特徴的で、読みながら想像する楽しさがありました。
    若者目線で話が進んでいくからなのか、ポアロが面倒くさいおじいちゃんと化していて、何だかふふっと笑ってしまいました。
    実は2つの事件が同時進行、殺人事件の片が付いた後にもうひと展開あり、クライマックスの対峙シーンの、静謐でびりびりした空気感がとても好きです。

  • ドラマで見た覚えがうっすらあるが思い出さないうちに読み終えた。霜月さんの攻略本で低評価だったが、語り手が変わる形式や殺人と諜報活動の2つの謎が入り乱れつつ恋愛要素もあり、最後まで読者を飽きさせないような配慮?が感じられ面白かった。

    • ポプラ並木さん
      111108さん、
      共読ですね。
      本作は何だか面白くなかったです。
      伏線回収が多く、関係ないアイテムが出てきたり。
      ちょっと悩ましい...
      111108さん、
      共読ですね。
      本作は何だか面白くなかったです。
      伏線回収が多く、関係ないアイテムが出てきたり。
      ちょっと悩ましい感じでした。
      2023/05/21
    • 111108さん
      ポプラ並木さん、コメントありがとうございます。

      ポプラ並木さんもこれはダメでしたか。攻略本でもかなり低評価でしたね。私は場面が切り替わるこ...
      ポプラ並木さん、コメントありがとうございます。

      ポプラ並木さんもこれはダメでしたか。攻略本でもかなり低評価でしたね。私は場面が切り替わることでめりはりあって一気に読めたので、伏線回収できないことには目をつぶって(!)それなりに楽しめました。
      ただ、ポアロとスパイ物語の相性は良くない気がしますね。
      2023/05/21
    • ポプラ並木さん
      そうそう!しかもリンクしない2話。単純な事件だったのでがっくり・・・
      そうそう!しかもリンクしない2話。単純な事件だったのでがっくり・・・
      2023/05/21
  • クリスティーでよくある展開。特に目立ったトリックやキャラはいなかった。柿沼瑛子さんの後書きが良かった。

  • ポアロじゃない2人の人物の視点で話が進められていく。
    でも最後はやっぱりポアロがさらっと事件を解明していくのがさすが!
    今回もポアロの自惚れ具合にクスッとした。

    今回の語り手の一人が殺人犯とは別に、ある人物を探していた。
    最後にそれも明るみに出るけど、予想外の人物で驚いた。
    さらにその人は他の人とも縁ある人だったり…
    最後の最後にビックリさせられた。

  • 中学生の頃読んで話は記憶にないけど、とてつもなく面白くなかったという印象だけ覚えていた本書。例の『完全攻略』でも⭐︎と最低評価だったのでちょっとクリスティ完全読破のためとはいえ、少々気が重かったが…

    読み出してみるとそれほど悪くない。すぐに事件は始まるし最初に提出される謎も興味を惹かれる。が、そこまで。

    謎は中途半端でしかないし後出しの設定も多い。なんだかテンポも悪くコリンの手記風に語られる章も一人称が変わるだけでその必然性が分からない。ポアロの態度も何だか煮え切らないし、スパイものテイストが混じるのもポアロものでは良かった試しがない(トミーとタペンスは好きだけど)。中学生の頃の記憶は正しかったかな…
    しかしビッグ4よりはましかもしれない。

  • 小説もドラマも初見だと思ってたけど、エドナの件、ドラマで覚えがあった。

    小説版でのポアロの登場シーンは少なく、コリン・ラムさん中心でしたね。ラムさんとハードキャスルさん。
    ラムさんの一人称の章も多かったし。
    わざわざ一人称である必要があったとは思えないけど。

    よく読んでたつもりだったけど、最後はやっぱり、『これが関係してたのかぁ!』てなった。

  • 2020/02/02読了

  • ポアロシリーズ29作目。
    あらすじの内容に惹かれて読みはじめたのだけれど、<死体を囲むあまたの時計の謎に、ポアロが挑む>というほど時計は多くない。笑
    そして晩年の作品だけあって、年老いたポアロの登場が少ないのが残念。
    ほとんどが情報部員のコリンとハードキャスル警部の捜査でストーリーが進む。

    でも、いいとこ取りのポアロの謎解きスピーチはやっぱり引き込まれる。
    複雑な人間関係と、こことここが繋がるのか、と読んでいるだけでは想像つかない結末だったけれど、ポアロの謎解きでおおー!と合点がいった。
    ポアロが読み耽っていた歴史ミステリーと、その講義のような紹介も大事な構成のひとつだったのだと納得。

    ヘイスティングズを想い、回想するシーンは切なくなってしまった。
    ポアロシリーズ、やはりポアロとヘイスティングズのバディがいちばん好きだ!

  • 著者:アガサ・クリスティ(Christie, Agatha, 1890-1976、イングランド、小説家)

  • 久しぶりに最初から引き込まれる舞台装置だった。動機の部分(人に成り代わっているから、成り代わった人を知っている人に会いたくない)は他にもあったような。舞台装置はめくらましで関係ないのは、よくあるパターンかもしれない。それにしても二重の解決編があるとは。

  • 映像で見たことがあったので、犯人はなんとなく覚えていたけど、やっぱり本で読むと詳細がわかる。もう一度映像を見直したい。

  • なぜ殺害現場に時計が置かれていたのか?とか、指していた時刻にはどんな意味が?とか、…真剣に頭を捻った自分がバカみたいだなぁ、と思いました。

  • タイピストが登場するミステリーという点に惹かれて読んだクリスティー作品。奇妙な殺人事件。個性的な隣人たち。スパイ要素もあり。お馴染みの名探偵ポアロが主人公ではなく、ゲスト的扱いで公物語後半から登場。もったいぶりながらしっかり美味しいところを持っていく老人探偵。推理しながら読むのは楽しかったけど最後の最後で正直なところ え?!というような終わり方だった。タイトルの複数の時計が実は…若干拍子抜け。犯人が誰かわかりそうでわからない感じが楽しい。

  • 「ことにワトスン医師というすばらしい人物の創造。あれはまさに大成功だよ。」
    「あの愛すべき友。ヘイスティングズ。きみにも幾度となく話したことのあるわが友、ヘイスティングズ。」
    歳をとったポアロのこういう発言はなんだか切ない。

  • 数あるアガサ・クリスティ作品としてそれほど目立ったものがあるとは思いませんでしたが、1960年代の作品とあってか当時ブームとなったスパイ要素が加味されていてそこが面白かった

  • ポワロおじさんはソファに座って事件を鮮やかに解く。
    スパイもののような展開もあり、その時代の、というか、語り手の?社会主義に対する目線もあり、おもしろい。
    読むのに、ちょっと時間がかかりましたか、ね。

  • タイトルからして時計が重要な役割を担っているのかと思いきや、時計である必要性はなくしょぼい解答で拍子抜け。
    また、話はダラダラと長いですし、ご都合主義的な展開が多く鼻につきます。ポアロによるミステリー評論も感心する内容ではなく、総じて不出来な印象です。

  • ポアロはほとんど登場せず。
    おいしい所だけちゃっかりと持っていく。

    主人公の出番が少ないのは
    「バートラム・ホテルにて」と似ているが、
    それと比べると物足りない。
    ポアロもので彼の出番が少ないのはいまいちかも。

  • ポアロシリーズ久しぶりだぁ。
    でも、あんまりポアロ出てこなかった。。。の割に、面白かった。
    最初読んでたときは犯人を予想出来てたんだけど、いろんな人が次々に出てくるもんだから、頭の中こんがらがったよ。
    ほんと、ポアロの言うように真相は単純だったわけですね。
    しかし、その犯人とは別に衝撃的な真実も最後にわかってびっくりしました。あれは予期せぬことだった。
    盲目のペブマーシュさんの毅然とした態度、素敵です。
    もっと、彼女を登場させてもらいたかった。
    したら、もっと感慨深いものになったのに。。。ざーんねん。

  • 思わせぶりなタイトルだなあ。
    思わせぶりなタイトル…ということがポイントなのかな。
    あまり印象に残らない話だった。
    ポワロの出番も少ないし。

  • ポワロ作品

    【あらすじ】
    タイプ事務所に勤める女が訪ねた家で男の死体が見つかった。死体のあった部屋には複数の時計が置かれていたが、事件の後処理の最中、その1つがなくなった。別件で付近にいた情報機関の男は、警察と一緒に聞き込んだ情報を持って、ポワロの元を訪れる。

    【感想】
    今回、ポワロはあまり表に出ず、情報機関の男の目線で多くが語られている。話の構成としては、住民の聞き込みから不審な点を調査している内に、気になる動きを見せた人物が魔の手に…という展開になっている。
    序盤に興味を引く伏線が幾つか張られているのだが、あまり意味が無かったり、軽い説明で片付けられるため、全体的に拍子抜けしてしまう点が残念。タイトルの「複数の時計」もさほどトリックには関係なく、読み始めの期待が裏切られた感が残る。
    なお、本中にはポワロを通して語られる推理小説の批評があり、古典が好きな人は読んでおく価値はあるかも。

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