- Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300448
作品紹介・あらすじ
大都会ロンドンの一画に、エドワード王朝時代そのままのたたずまいを保つバートラム・ホテル。だが、その平和で静穏なムードの裏でも、事件の影はうごめいていたのだ。常連客の牧師が謎めいた失踪をとげ、やがて霧の夜、恐るべき殺人事件が!ホテルで休暇を過ごしていたミス・マープルが暴く、驚愕の真実とは。
感想・レビュー・書評
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ミス・マープルものと言うより古き良き雰囲気のホテルに滞在してる人達の群像ミステリー。さまざまな人物達が語る形式で進む物語は面白いが、真相まで残りページこんなで大丈夫?と心配になった。おやじさんことデイビー主任警部がいい味だしてた。
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大都会ロンドンの一角に、エドワード王朝時代そのままのたたずまいを保つバートラム・ホテルはあった。懐かしい過去と英国の伝統に、近代化された技術を取り入れた空間は平穏そのもの。しかし、宿泊していた常連客の牧師が謎めいた失踪を遂げてしまう。ホテルで休暇を過ごしていたミス・マープルの瞳に映った真実とは?!
1965年に発表されたミス・マープルシリーズの第十作目の長編。姪からの厚意で旅行をプレゼントされたマープル。彼女が旅先に選んだのは、14歳の頃に滞在した思い出の場所「バートラム・ホテル」だった。ホテル内は近代化されながらも、見た目は昔とそっくり変わっていない。古き良き英国がここには残っていた。ただ、人間も社会も変わる。老いたマープルが抱いた憧憬とわずかな違和感。それがやがて大きな意味を持つことになる。
ドラマの中心になってくるのは、若き娘・エルヴァイラ。両親不在の彼女は、イタリアの学校を出て、後見人・ラスコム大佐のいとこの家で一緒に暮らすことになっていた。亡くなった父の莫大な遺産を受け継ぐ予定の彼女は、バートラム・ホテルにて想像だにしない母との再会を果たすことになる。彼女を置いて家を去った女流冒険家のベス。その封じられた過去が動き出す時、事件もまた並行して動き出していく。多発する強盗事件、ペニファザー牧師の失踪、パズルのピースがばら撒かれていく。
そして、このペニファザー牧師がくせ者(笑) 彼の視点にもなるんだけど、物忘れが多すぎてヒヤヒヤする!よくこれで無事に生きてこられたなと思うレベル。家政婦がホテルに問い合わせた時の会話が好き。
「先生はごぞんじのとおり、その……ときどき物忘れをなさることがございますのでね」
「ほんとにそうなんですよ!」
家政婦、心の叫び(笑) また、彼を捜索する「おやじさん」ことフレッド・デイビー主任警部の言い回しも楽しい。
「それがですね、まあいうなれば、じぶんを忘れてしまわれたんです」
飛行機でルツェルンへ飛ぶつもりが、記憶が飛んでしまう牧師に右往左往するのが喜劇的。
中盤まではゆったりと、後半はおやじさんがマープルに助言をもらいつつ、真相へと迫っていく。駆け抜けるレーシングカーのような怒涛の展開からの、ラストシーンが余韻深くていい。決して気持ちいい終わり方ではないけど、これぞマープルという切れ味を感じられるのがたまらない。
p.52
「しかし、すばらしい人を母として持つのは、必ずしも幸せなことではない。これは真実として受け取ってもらいたい」(デリク・ラスコム大佐)
p.290,291
ミス・マープルはため息をついて、
「はじめ、ここはすばらしいところだと思いました……ちっとも昔と変わってませんからね……まるで過去へ舞いもどったようで……昔、愛し楽しんだ過去へ帰ったようで」
とちょっとことばを切った。
「でも、もちろん本当はこんなじゃありませんでした。わかっているつもりだったんですけれど、あらためて悟りました──人は過去へもどることも、また過去へもどろうとしてもいけない──人生は前へ進むことだということ。ほんとに、人生って“一方通行”なんですね?」
p.323
「そう、あの人だ。あの人は長い経験を持っていて、悪をかぎつけ、悪をさがし出し、悪と進んで戦う気概を持っている」(フレッド・デイビー主任警部)
p.374
ミス・マープルはフランスの警句を思い出していた──“変われば変わるほど同じことになる”──その語句を逆にしてみる。──“同じであればあるほど、物は変わる”──どちらも真理だ、とミス・マープルは思う。
p.386,387
「長年、いろいろと失敗を重ねたあげくに、やっとわかってきたことがあります……あんまり物事が単純明快な時には、それを信用してはいけないということですね。単純明快に見えることは、どうかすると真実ではないことがあります。」(フレッド・デイビー主任警部) -
ミス・マープルもの。
舞台はロンドンにある、クラシックな佇まいを保つバートラム・ホテル。
この古き良き英国を彷彿させる高級ホテルに滞在中のマープルさん。ロンドンでのお買い物などを楽しみつつ、ホテル内外での人間観察も怠りません。
一方、ロンドン警視庁では、最近頻発している大掛かりな列車強盗等の犯行グループを追っているのですが、これらの犯行とバートラム・ホテルとの関わりは・・?
滞在客の牧師の失踪、霧の夜に起こった狙撃事件・・数々の点が終盤に見事に集約され、驚きの大仕掛けが明らかになるさまは圧巻です。
今回、真相解明するのはデイビー主任警部で、マープルさんはその協力者のようなポジションでした。勿論マープルさんも真相にたどりついていましたし、彼女の観察力あってこその証言により捜査が大きく進展したのですけどね。
狙撃事件の真犯人の処遇について、結局どうするのか曖昧なままだったのですが、それが却って余韻が残る終わり方だなと思いました。 -
推理小説としてのプロットはかなり緩いし、犯罪シンジゲートの描き方はかなり雑で現実味がない。しかし、ビートルズが登場し、古き時代の英国が失なわれていく中で、何とかしてかつての「雰囲気」を描こうとしたのか。全てに古色蒼然とした魅力をたたえるバートラムホテルと個性豊かな登場人物たちは健在。
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2023/01/14
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2023/01/14
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2023/01/14
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ロンドンの片隅にある老舗のバートラム・ホテルは、創業当時の地味で目立たない上品さを保ち、上流階級の人々に長く愛されているホテル。
そんな格式高いホテルに、姪の計らいで宿泊することになったミス・マープル。ゆっくりとロンドン旅行を楽しむつもりだったのだが、隣室の牧師が突然の失踪。さらにドアマンが何者かに殺されるという事件まで起きて……。
捜査にあたる警部から協力を求められたミス・マープルは真相究明に乗り出すが。
古き良き時代の英国を思わせるホテルを舞台に、謎めいた登場人物が繰り広げる不可解な行動……と舞台設定はばっちり。美味しい紅茶(もちろんブラックティーで)をいただきながらの読書がおすすめです。 -
アガサクリスティー。ミスマープルシリーズ。
古き良きバートラムホテルにて神父の失踪事件がおこり
ついでドアマンが殺され事件が起こる。
ミスマープルはあくまで宿泊客のひとりという立ち位置で
物語はデイビー刑事が引っ張っていく
マープルの出番が少なく、いつものセントメアリ・リードの推理方法が見受けられないのでマープル好きには物足りないと思った -
マープルが若い頃泊まったロンドンのバートラムホテル。戦禍をのがれ今も古いたたづまいをみせるそのホテルに、おそらく発表年とおぼしき1965年頃再びマープルが泊まる。やってくる人々はホテルとおなじ老体が主だが、忘れっぽい牧師が行方不明になった。片やロンドン郊外では列車強盗が。泊客の冒険家の女性、その相手のカーレーサー、若い娘がからみ謎が収斂してゆく。
ホテルの小部屋にいたマープルが鍵になる会話を偶然聞き、またレストランで偶然みつけた宿泊客の会話をそばを通って聞く、これが鍵となり事件解決。
エドワード王朝時代の様相が戦禍を逃れ今も息づいているなどとあって、エドワード王朝なるものを調べたら、1901年から1910年だった。マープルが泊まったのが1909年だ、などという記述も確かあった。
牧師、若い娘、冒険家女性、ホテル、とが多重に重なる犯罪。
1965発表
2004.7.15発行2012.10.25第5刷 図書館