謝罪代行社 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ト 7-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151792014

作品紹介・あらすじ

新聞社をリストラされた若者クリスは、彼の弟ヴォルフ、友人の二人の女性タマラ、フラウケとともに、依頼人に代わって謝罪する仕事を始めた。これが大当たりして四人は半年後にベルリン南西部の湖畔にある邸宅を買い、そこを住居兼仕事場にするまでになる。ところがある日、依頼を受けて、指定された場所をヴォルフが訪れると、そこには壁に磔にされた女性の死体が!巧妙な仕掛けに満ちたドイツ推理作家協会賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • クロアチア出身でドイツで活動している作家「ゾラン・ドヴェンカー」の長篇ミステリ作品『謝罪代行社(原題:Sorry)』を読みました。

    「フェルディナント・フォン・シーラッハ」、「ハラルト・ギルバース」、「ペトラ・ブッシュ」、「ネレ・ノイハウス」に続きドイツ作家の作品です。

    -----story-------------
    ハヤカワ・ミステリ・リニューアル1周年&ハヤカワ・ミステリ文庫創刊35周年記念作品。
    ドイツ推理作家協会賞受賞作。

    〈上〉
    新聞社をリストラされた若者「クリス」は、彼の弟「ヴォルフ」、友人の二人の女性「タマラ」、「フラウケ」とともに、依頼人に代わって謝罪する仕事を始めた。
    これが大当たりして四人は半年後にベルリン南西部の湖畔にある邸宅を買い、そこを住居兼仕事場にするまでになる。
    ところがある日、依頼を受けて、指定された場所を「ヴォルフ」が訪れると、そこには壁に磔にされた女性の死体が! 
    巧妙な仕掛けに満ちた驚愕のミステリ。

    〈下〉
    現場に着いた「クリス」が電話をすると、依頼人は死体に謝罪し、それを録音して送れと告げた。
    死体を始末するよう指示もしていた。
    拒否はできなかった。
    家族に危害を加えられるからだ。
    こうして彼らは殺人事件に巻き込まれ、さらに不可解な事件が起きる。
    そして、彼らを悲劇が襲う! 
    ひたすら車を走らせる「わたし」とは誰か? 
    女性を殺した「おまえ」の正体は? 
    謎めいた行動をする「彼」とは?
    -----------------------

    「ゾラン・ドヴェンカー」って、本作がミステリ作品としてはデビュー作になるようですが、ドイツ児童文学の分野では中堅作家として成功を収めている作家のようです、、、

    謝罪を代行するという奇妙な職業で成功した4人の若者が事件に巻き込まれるという物語… 児童文学作家の作品ということやタイトルから、軽い犯罪小説を想起させますが、冒頭から、女性を磔にして額に長い釘を打ち込んで殺害するという、なかなか激しいシーンで始まるし、児童虐待も絡むハードな内容で、ちょっとイメージが違いましたね。

    そして、謝罪代行社のメンバー4人… 中心人物の「クリス」と弟の「ヴォルフ」、そして「タマラ」、「フラウケ」に加え、「おまえ」と呼ばれる殺人者、事件後に何者かをクルマに監禁して輸送している「私」、中盤から加わる謎の「現場にいなかった男」と人称も違う7人の視点で語られるうえに、事件の最中(あいだで起きたこと)、事件後(以後に起きたこと)、過去(以前に起きたこと)と時間も前後するので、全体像が掴みにくく混乱しちゃいがちで、序盤は少し苛立ちを感じながら読みましたが、、、

    生き残った「クリス」と「タマラ」は、どんどん追い詰められていくが、自らの命を守るために、仲間の死の真相を知るために行動し、「おまえ」、「私」、「現場にいなかった男」の正体や、それぞれの動機が徐々に判明していく終盤は、どんどん先を読みたくなる展開が愉しめました… もう少し若者たちの言動に共感できたら、序盤から愉しめたんだけどな。

    それだけが残念でしたね、、、

    でも、青春小説を読んだ後のような、甘酸っぱいような読後感があったのも事実… 評価が難しい、独特の印象が残る作品でした。


    あっ、そうそう… 本書の終盤に「ロイド・コール&ザ・コモーションズ」のポスターが出てくるシーンがありました、、、

    大好きですが、マイナーなミュージシャンなので驚きました… 作者が同世代なので、音楽観が近いのかも、ちょっと嬉しくなったワンシーンでした。



    以下は、主な登場人物です。

    「クリス・マルラー」
     謝罪代行社<SORRY>の中心人物。元新聞記者

    「ヴォルフ・マルラー」
     謝罪代行社<SORRY>メンバー。クリスの弟

    「タマラ・ベルガー」
     謝罪代行社<SORRY>メンバー。クリスとヴォルフの友人

    「フラウケ・レヴィン」
     謝罪代行社<SORRY>メンバー。タマラの親友

    「ルトゥガー・マルラー」
     クリスとヴォルフの父親

    「アストリット・ベルガー」
     タマラの姉

    「ゲルト・レヴィン」
     フラウケの父親

    「タニヤ・レヴィン」
     フラウケの母親

    「ベルント・ヨスト-テーゲン」
     クリスの元上司

    「マルコ・M」
     クリスの旧友

    「エリン」
     ヴォルフの元恋人

    「ヨアヒム・ベルツェン」
     湖畔の家の住人

    「へレーナ・ベルツェン」
     ヨアヒムの妻

    「ザムエル」
     ベルツェン家の留守番

    「フランク・レッフラー」
     スーパーマーケットの店員

    「ラルス・マイバッハ」
     謝罪代行社<SORRY>の依頼人

    「ヨナス・クロナウアー」
     ラルスと同じマンションの住人

    「カール」
     ブッチを連れ去った人物

    「ファンニ」
     ブッチを連れ去った人物

    「ブッチ」
     少年

    「サンダンス」
     少年。ブッチの親友

    「ゲラルト」
     刑事

  • 再読 全く記憶なし!

  • 2013/05/08読了

  • 予備知識ナシにたまたま購入したが、大当りの作品であった。ドイツ人作家で彼のミステリ処女作とのこと、2011年の作品であるが、このミスはじめミステリランキングには載ってなかったようである、今年の対象なのか?とにかく面白い小説だった。

    現代ドイツ、ベルリンを舞台にしている。主人公は男女4人の若者達、彼らが起した「依頼人のために謝罪を代行するサービス」謝罪代行社が事件に巻き込まれる。先の読めない展開に読者を休ませない一級のサスペンスであった。

    構成として語り手の人称の変化が実に多彩である、主人公4人の他に「おまえ」「わたし」中盤以降「現場にいなかった男」と、やや混乱しがちである。さらに時系列も飛ぶ、「以前に起きたこと」「以後におきたこと」。「おまえ」や「わたし」が実は誰なのかは、終盤まで読みきれない。混在するパズルのピースを当てはめていく作業に読者は駆られるが、物語のスピード感に煽られて終盤まで一気に読み進めるしかないように思える。

    色々な立場の人たちの思惑が交錯し、結果思いがけない事態を招き、さらに予想外の展開を生む。ヒッチコックが好んで使いそうな筋立てであった。

    主人公達の「謝罪代行社」は宗教的見地から欧州では、日本とは違った意味合いがあるのだろう、そのあたりの事情、哲学を読み取ることは自分にはできなかったが、サスペンスとしての色を濃く映し出すことにおいては問題なかったと思う。

    原題「SORRY」を「謝罪代行社」としたのにも出版元のセンスが感じられてよかった。

  • 4人の若者が立ち上げた謝罪代行社"SORRY"は成功をおさめるが、ある依頼をきっかけに歯車が狂い始める、、。次々と変わる視点、時間に最初はしっくりこなかったが、慣れてくると謎を残しつつも、先が読めない展開に次々と読み進められた。背景となる現代ドイツの事情も興味深い。

  • 昔読んだ『シンプルプラン』(かなり売れて映画化もされた)がどうにも苦手だったので、そんなはずじゃなかったのに、というストーリー展開のものには身構えるようになっているのですがこの作品は特に苦手意識を持つこともなく引き込まれて読了。下巻の中盤から、どうやら思っていたのと違うぞこれってどう終わるんだろう、、、と思い始め、池上冬樹氏の解説文を読んで「なるほど」と思いました。大きな謎はちゃんと解けるけれど、起きたこと全てに対する説明が作品中でされるわけではないので、スッキリした種明かしを期待して読むと、肩すかしを喰らう人もいるかもしれません。「わたし」「おまえ」「現場にいなかった男」「クリス」「ヴォリス」「フラウケ」「タマラ」という、複数の視点から、「あいだにあったこと」「以前にあったこと」「以後にあったこと」という3つの時系列で書き分けられており技巧が凝らされた作品ですが、ビックリのどんでん返しのための技巧ではなくて、近しい人の死をどう受け入れるのかとか、人生における理不尽さとか、そういう作品のテーマを一層浮かび上がらせるための工夫、という感じでした。読み応えはかなりあり、読後はズッシリと重量感が残りました。面白かった!とは言いにくいけれど、展開は意外性に富んでいて、上巻〜下巻の頭くらいまでは、これはなかなか!と引きつけられて夢中で読みました。高校時代の友人同士で、謝罪代行のビジネスを立ち上げた4人が予期せぬ事態に巻き込まれる、というお話です。いろいろ考えさせられ、心がザワザワしました。

  • 面白いのか、面白くないのか、よく分からないけど、とりあえず上巻、サクサク読めた。

    冒頭の、殺害場面は、かなり冷徹で、いい感触で読み始めたんだけど、謝罪代行社の立ち上げあたりのぬるさ、その温度差がイヤだな、と。
    そうかと思いきや、過去の出来事らしい語りのトコで、かなりエグい児童虐待…ちょっと気分悪くなった。


    面白いか否かは、下巻読んでからかな。
    この事件の収拾のつきかたと、この小説のタイトルか、“謝罪代行社”であることに納得がいけば、きっと面白いと思う。
    単にそういう会社を立ち上げたから、という理由でこのタイトルなら、がっかりしそう。

  • 「BOOK」データベースより
    新聞社をリストラされた若者クリスは、彼の弟ヴォルフ、友人の二人の女性タマラ、フラウケとともに、依頼人に代わって謝罪する仕事を始めた。これが大当たりして四人は半年後にベルリン南西部の湖畔にある邸宅を買い、そこを住居兼仕事場にするまでになる。ところがある日、依頼を受けて、指定された場所をヴォルフが訪れると、そこには壁に磔にされた女性の死体が!

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