シンパサイザー (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 25-2)

  • 早川書房
3.17
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151828522

感想・レビュー・書評

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  • 原書名:THE SYMPATHIZER

    2016ピューリッツァー賞フィクション部門、2016エドガー賞処女長編他
    著者:ヴィエト・タン・ウェン(Nguyen, Viet Thanh, 1971-、ヴェトナム、小説家)
    訳者:上岡伸雄(1958-、東京都、アメリカ文学)

  •  本書の上巻は、全体に抑揚のないストーリーで、ベトナム戦争について何らかの原体験がないと楽しめない本だと感じた。もう下巻は読むこともないと思っていたが、なぜか気になる存在ではあった。しばらくたって思い立ち、下巻を読み始めると、抑揚のないストーリーの中にも激しく迫るものを感じ、やめられなくなっていた。
     
     北側の2重スパイの南ベトナム軍の情報将校として従軍し、サイゴン陥落以降はアメリカに逃れた。アメリカでもスパイ活動は続き、ラオス国境に舞い戻る。そこで捕らわれの身になった主人公は北側のスパイだったにかかわらず、抑留され半生を振り返る告白文を書かせられる。それが本書だ。
     ベトナム戦争を戦い、同時代を生きた人々を通じて、読み手は存在の意義や、存在すること自体が何の意味を持つのか、問われだす。哲学だ。

     原文は韻を踏み、ダブルミーニングが多用された美しい文章のようだ。翻訳に苦労が現れている。日本語でしか読めないことを少し残念に思いつつも、風変わりな印象を残した面白い1冊でした。

  • 長かった。真面目な小説なのだが、拷問や強姦の場面の過剰な描き方は、ありきたりのテレビドラマドラマかハリウッド映画のようで、わざとなのかがよくわからない。長いだけの重いテーマではあるが。ずいぶん久しぶりの長い小説。

  • ヴィエト・タン・ウェン『シンパサイザー (下)』ハヤカワ・ミステリ文庫。

    騙された。全くもってつまらない。本当につまらない。

    主人公のヴェトナム共和国の大尉が延々と一人称で語るのだが、何らストーリーも映像も見えて来ない。『ミステリが読みたい!』の第7位はインチキかい。

    手を出すんではなかった。時間の無駄だった。

  • 北ヴェトナムのスパイとして南ヴェトナムの将軍に遣える主人公の大尉。共産主義に共感しつつも、戦争に負け恐怖に脅える南ヴェトナム人に同情してしまう。西洋の文化に親近感を覚えるが、彼の国を引き裂き今日の惨状をもたらしたのも西洋である。そして父が西洋人であるために、同国人であるはずのヴェトナム人からも蔑まれる。すべての意味で矛盾に満ちた彼が、ラストで自分自身を「私たち」と自称し始めるのも必然の成り行きだろう。自らの弱さ醜さを目の前に突き付けられ、それでも何にも救いを求めることのできない残酷さが胸に響く。これまでヴェトナム戦争をヴェトナム人の目からこんなに詳細に描かれたものを目にしたことはなかった。決して読みやすくはなくエンタメ小説ではないが、読み始めたら途中でやめることはできない。傑作だと思う。

  • 静かに熱い。

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