処刑台広場の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
3.53
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本棚登録 : 690
感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151856518

作品紹介・あらすじ

密室での奇妙な自殺や不可解な焼死の真犯人は、名探偵レイチェル・サヴァナクなのか? 記者ジェイコブが暴きだす、彼女の秘密とは

感想・レビュー・書評

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  • ★5 謎の探偵レイチェルの魅力に惹かれっぱなし!読み応え抜群のスリラー&ミステリ #処刑台広場の女

    ■あらすじ
    1930年のロンドン。新聞記者のジェイコブは、かつて難事件を解決したとして名をはせていた探偵レイチェルを調査していた。実はレイチェルには隠された裏の顔があり、見つけた犯人を自殺に追い込んでいたのだ。その後、次々と発生する殺人事件していくのだが、ジェイコブも巻き込まれてしまい… この事件の背景と、彼女の正体はいったい何者なのか。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    濃密なミステリーであり、スリラーですね。これは読みごたえがあります。本作は登場人物が多く、関係性も次々と発展するので、人物表とにらめっこしながら読まないと置いて行かれるのでじっくり読みましょう。

    次々発生する殺人事件。女の事件関連性は明示されているけど、背後関係がよくわからない。まずこの女はいったい何者なんだよ、全知全能的で、目的を達成するためにどんなことでも支配する。怖い…でも惹かれる。

    本作は主に新人記者のジェイコブ目線と、謎の探偵レイチェル目線で物語は進行していくのですが、謎めいたレイチェルや仲間たちの言動にぐいぐい引き込まれる。でも何故こんなことをしているのかが分からない。特に情報の出し方や、事件の演出が上手で、このまま海外ドラマでなりそうですね。

    レイチェルは善なのか悪なのか… いや、すくなくとも善ではないような…と、考えているうちに、どんどん事件は展開し、舞台が混乱してくる。これだけ読者を惹きつけ、忠心させてしまう主人公はそうはいない。いや、これはすげぇ。

    そして読み進めると徐々に明るみになってくる物語ですが、真相があまりに強烈すぎて、読んでいて腸がひっくり返ります。謎解きの仕掛けもしっかりパンチがあって、ミステリーファンとしても満足です。また1930年代の腐敗した格差社会を丁寧に描かれていて、今年の海外ミステリーのランキングを賑わす作品になりそうです。

    ■ぜっさん推しポイント
    昔の映画監督の言葉です。
    「正義」の反対語は「悪」ではない。「もうひとつの正義」である。

    本書引用:真実には様々な形があり、現実は見る者によって変わる。

    放たれる痛烈なセリフの数々、読んでいると昨今のネット界隈での言動があまりにも恥ずかしい。一方的な正義を振りかざし、全員が付和雷同する社会はもう卒業したいですね。

  • マーティン・エドワーズ『処刑台広場の女』ハヤカワ文庫。

    『このミステリーがすごい! 2024年版』などでも上位にランクインしていたので読みたいと思いながら、少し寝かせていた。しかし、大いに期待外れだった。他人の評判というのも当てにならぬな。


    1930年のロンドン。名探偵レイチェル・サヴァナクには、自分が突きとめた殺人者を死に追いやっているという黒い噂が付きまとっていた。レイチェルの秘密を暴こうとする新聞記者ジェイコブ・フリントは、密室での奇妙な自殺や、ショー上演中の焼死といった不可解な事件に巻き込まれる。

    本体価格1,200円
    ★★★

  • ちょっとハードルあげすぎたかも

    はい2024年このミス海外第三位の『処刑台広場の女』でございます

    なぜか焦らしに焦らしての読了
    全体を覆う雰囲気は訳者加賀山卓郎さんの得意分野だなと思いました
    うーん、我ながら通な意見w

    主人公レイチェルは非常に魅力的でかっこよい、かつめちゃくちゃに切れる
    そして謎めいている
    この主人公に引っ張られて物語は不安定に揺れながらもスピーディに進んで行くんだけど、話しの筋としてはありきたりな印象

    ただサヴァナク家の使用人3人も含めたチームはまだまだ底が見えてなさそうで、それぞれに魅力的でもある
    どうやらシリーズものっぽいので、このあとも翻訳が続くとうれしいなあ

    • ひまわりめろんさん
      分かる〜
      表紙にピンときたら読むべし!
      分かる〜
      表紙にピンときたら読むべし!
      2024/02/01
    • みんみんさん
      イラストレーター・鈴木康二
      めちゃくちゃ素敵な絵だ〜好みo(*'▽︎'*)/
      イラストレーター・鈴木康二
      めちゃくちゃ素敵な絵だ〜好みo(*'▽︎'*)/
      2024/02/01
    • 1Q84O1さん
      表紙にピンときたら読むべし!
      師匠の有り難いお言葉メモメモφ(..)
      表紙にピンときたら読むべし!
      師匠の有り難いお言葉メモメモφ(..)
      2024/02/01
  • 名探偵レイチェル・サヴァナクには、自分が突きとめた殺人者を死に追いやっている…という黒い噂がつきまとっている。
    それを暴こうとするのは、新聞記者ジェイコブである。
    次々と起こる密室での奇妙な自殺やショー上演中の焼死といった不可解な事件は…。

    最初からレイチェルに違和感があったが、終焉に近づくにつれてそういうことか…と。
    終始、謎めいた感情を持たないレイチェルに振り回されたようなジェイコブであったが、彼の方が人間味溢れる人物であったことにほっとした。






  • 思っていたより楽しめた。
    何となくこてこてのスパイものとか隠密行動的な話を想像してしまっていたのだが、ちょっと違った。

    高名な判事、「処刑台のサヴァナク」の娘レイチェル・サヴァナク。
    彼女の行く先々、関わる人々、皆非業の死に巻き込まれていく。
    ある者は服毒死、またある者は拳銃自殺、そして火を用いた奇術舞台での焼死。
    裏で手を引いていることは間違いないが、これは彼女の悪魔的享楽の一種なのか、それとも真の目的を持った一連のプロジェクトなのか。。

    ミステリアスで完璧な立ち振る舞い、計画性が光るダークヒロインのレイチェル。
    残虐さこそ滲めど、矛先は選定されており、強きをくじき弱きを助ける必殺仕事人かのようなのだが、一方で挟み込まれる、とある少女の過去の日記から読み取れるレイチェル像は悪魔そのもの。

    このギャップ、食い違いが、一体どこへ向かっているのか、何が裏で蠢いているのかの霧が深まり、読みが牽引される。
    終わってみればあるあるな構図、結末までの演出なのだが、途中の捉えどころのなさ加減が面白かった。

    英国推理小説会の巨匠なんて謳われているし、著作リストも結構なものだけど、翻訳はほとんどない著者。
    本作もシリーズものとのことだし、このスマッシュヒットを機にこれから順次訳されていくのでしょうかねー。

  • 途中まであまり好みでないノワール物かもと思い乗れなかったが、ページ数からいってこれは何かあると気づいてからは読むスピードが加速。ある意味順当な着地だけど物語として楽しめた。解説で紹介された『探偵小説の黄金時代』読みたい!

  • 物語の舞台は1930年代のロンドン。著名な銀行家が自らの悪事を告白した遺書を残して自殺した。そこに絡んでくるのが、富豪にして探偵、妖艶な美女のレイチェル・サヴァナク。なぜか彼女の周囲で起こる事件の数々。ゴシップ新聞の新人記者ジェイコブは、サヴァナクの行動に疑問を覚え、接近を試みるのだが…。

    多くの書評で指摘されるように、黄金時代ミステリを思わせる重厚な仕上がりに大満足な一冊である。主人公のレイチェル・サヴァナクは、いわばダークヒロイン。この作品の最大の謎は、彼女自身なのである。なぜか私は、バットマンのブルース・ウェインを思い浮かべてしまった。身体を鍛えることに余念がないあたりも共通点。

    本作はシリーズ化されているらしい。早晩、新しい物語を読めるのかもしれない。

  • 1930年、ロンドンで活躍する名探偵レイチェル・サヴァナクには黒い噂があった。突き止めた殺人者を死に追いやっているという疑惑。それを調べる新聞記者ジェイコブは、恐るべき事件へと巻き込まれていく。

    「この女は名探偵か、悪魔か」
    まさに帯のこの一言に尽きる。数多く起きる事件は、あくまで彼女が踊る舞台でしかない。レイチェル・サヴァナクは何者なのか?という巨大な謎に、ジェイコブも読者も踊らされる。記者というには純粋なジェイコブがストーリーテラーとして活躍。事件に食らいつくひた向きさ、傷つけられた先輩記者を思うやさしさ、彼の人間臭さによってレイチェルの魅力もまた輝く。途中から逆にヒロイン化していて面白かった。

    「わたしは後悔なんかで時間を無駄にしないの」
    「涙は流す価値のある人のために取っておきなさい」
    レイチェルの言葉に痺れる!目的のためには手段を選ばない冷徹さを持ちながらも、ある種の信念とあたたかさも感じるところが悪魔的だー!ミステリとしては勘がいい人なら察することができる内容。見どころは事件を巡るサスペンスの雰囲気と、レイチェルの存在なのかなと。ミステリだと思って読み始めたら、え?!そういう感じなの?!となるので、そこだけ要注意。あと、600ページに迫る厚さはさすがに長く感じた。

    「ウイスキーを一杯つげば、世界はもっといい場所になる」
    この言葉に完全同意!まさにウイスキーを楽しみながら、グイグイと読み進めていくのがちょうどよさそうな一冊。ウイスキーとレイチェルに酔いながら物語を楽しみましょう。本から独立した登場人物リストが挟まっているのもいいね(ぼくは手書きで作っちゃうけど)。

    p.334
    「あなたも長く報道の世界で働いて、真実にはさまざまな形があることを学んでいるはずよ。現実は見る者によって決まる」

    p.342
    「誰もレイチェル・サヴァナクを出し抜くことはできません。負かそうとするだけでも命にかかわる。わたしのことばを信じなさい、お若い人。彼女を滅ぼせる人はただひとり……彼女自身です」

    p.371
    「本ですべてが学べるわけじゃないわ。あなたもしょっちゅうそう言ってるじゃない。教育は人生の準備をさせてくれるけど、人生の代わりにはならない」

  • 何度も騙された。兎に角ミステリの上書き上書きの繰り返しで、自分の立ち位置すらわからない、と言う展開。騙された作品の中で転がされているのもひとつの趣向かも。

  • マーティン・エドワーズの長編初翻訳。
    早川ミステリ文庫では今年イチオシの作品の様。

    殺人を犯したと思われる犯人たちが次々と死んでいく。その影にはレイチェル・サヴァナクという美貌の名探偵が見え隠れする。彼女は一体何者なのか。また間に語られる日記は何を意味するのか。

    うーーーーん、読みやすさ、先が気になる展開、どれを取っても良かった。良かったのだが、思ってたのと違う、というのが正直なところ。ミステリだと思ったら必殺仕事人だった、みたいな。
    中盤のある展開からとんでもなく面白くなるのだが、そこまでが長い。そして起こっている事件にほとんど意味がない。キモとなる展開がわかりやすすぎて途中から予想できる。というので星4でした。

    いや、本当に良い作品なのだけど、ミステリとしての期待値を勝手に上げすぎた。。。次作があるらしいので、楽しみにしてます。

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著者プロフィール

Martin Edwards (1955~ )イギリスのミステリ作家・評論家。約20冊の長編、50編以上の短編を発表、英国推理作家協会(CWA)の最優秀短編賞を受賞した。多数のアンソロジーを編纂し、英国国立図書館の〈古典ミステリ〉シリーズの監修など、精力的に活動している。現在、ディテクション・クラブ会長および英国推理作家協会会長。

「2018年 『探偵小説の黄金時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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