ブラインド・ウォッチメイカー 下: 自然淘汰は偶然か

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152078124

感想・レビュー・書評

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  •  本書は1986年に出版された。もはや古典的な文献でもある。自然選択による生物進化の解説と、進化論の反対論者を論破する。ダーウィンの進化論は大きな物語の仮説でしかない。生物の進化は、46億年まえに地球が誕生し、40億年に自己複製できる生命が生まれたことから、長い時間をかけて進化してきた。時間スケールが大きいのだ。
    タイトルの『盲目の時計職人』は、18世紀のイギリスの神学者ウィリアム・ペイリーが『自然神学』において記した「時計職人のアナロジー」に帰している。ペイリーはダーウィンが『種の起源』を発表するより半世紀以上も前に、ある時計の存在が、その時計を作り出した職人が存在するという、生物もまたその複雑性から生命の作り手である神の存在を肯定するとした。これを受けドーキンスは、人間によるデザインと自然選択作用がもたらす設計能力とを対比させ、自然淘汰などの進化の作用は「盲目の時計職人」のようなものだと述べている。進化は、意志を持っていない行為であるとする。キリンは高いところの葉を食べようとして首が長くなったわけではない。たまたま首が長くなったキリンが生き延びたにすぎない。
    ドーキンスは言う「我々自身が存在しているのはなぜか?ダーウィンとウォレスがその謎を解いた」
    ドーキンスっておもしろい。いささか、エキセントリックで、テンションが高く。論争好きで、論破したがる。「はい。論破」って言いたいオトコだ。いつまでも機関車のように走り続け、しゃべり続けるオトコを見ていると楽しい。言葉の扱い方が、うまくて、おしゃれでもあり、曲がりくねって、めんどくさく、やかましいくらいなところがある。
    「利己的な遺伝子」「生物は遺伝子の乗り物である」なんてキャッチコピーを選び出している。利己的な遺伝子という自分のため、わがままなという印象を受けるが、ドーキンスは自分勝手に生きようとする意志があるわけではなく、結果として自分勝手に生きているように見えると言っているのだ。
    マスコミ受けする言葉 キャッチコピーを作り出す才能もある。そのことで、誤解されやすいオトコでもある。アナロジーの手法がうまいのだね。アナロジーをどんどんと広げて行く。その広げ方が、縦横無尽なのだ。そして本書では最初から「この本はサイエンス・フィクションのように読んでもらいたい」と断っている。
    それでもドーキンスは、「神撲滅運動」をしているので、ローマ法王も、迷惑な話だ。八百万の神について、ドーキンスは、どう考えのだろう。
    ダーウィンのかんがえていることは、①ダーウィンのタイムスケールがちがう。数万年から億年の考えをしている。②ダーウィンは、偶然の理論だった。③原始的な単純さから、複雑に発展した。結局は、ダーウィンは複製する能力を持っているものを予測できたのだ。それが遺伝子だった。遺伝子は、二重らせんの鎖にしている。ドーキンスはこれを生命をつかさどる「不滅のコイル」といった。ミミズと人間は遺伝子を共有しているのだ。「ぼくらはみんな生きている。ミミズだって、オケラだって、アメンボだって、みんな生きているんだ。友達なんだ」という進化論の歌がある。生物の進化とは、コピペの技術だった。そして、コピーするときに間違えること(地球外からくる放射線などによって突然変異)が起こったので、環境に適応したものが生き残ってきた。ドーキンスは、突然変異と自然選択だけで進化が起きること、つまり進化とはBlind watch maker(盲目で無目的な時計職人)なのだと説明する。つまり、ニンゲンは、利他的な行為をしているのはなぜなのか?利己的な遺伝子にもかかわらずという謎かけでもある。ダーウィンの「最適者生存」の論理をドーキンスは駆使する。
    猿にタイプライターを叩かせてシェイクスピアの作品が生まれるのか?という典型的な反ダーウィン論に対して、それは莫大な時間を与えて自然淘汰が進めば起こりうるのだと言っちゃう。ドーキンスが「進化は利己的な自然淘汰だ」という。
    生物体の複雑さは、その外見的なデザインのもつすぐれた効率に見あっている。もし、これほどまで多くの複雑なデザインがどうしてできたのかを説明する必要がある。とドーキンスは、考えている。
    ドーキンスはいう「ダーウィン主義とは、そこに遺伝的変異があって、しかもデタラメではない繁殖のもたらす結果が累積される時間がありさえすれば、途方もない結果が生まれる」
    デタラメな偶然は、変異においてであり、繁殖は、デタラメではなく、累積自然選択は合理的である。ふーむ。ドーキンス。刺激的な言葉を使って、論破したい思いだけが強すぎるところが、なんとも言えず魅力的だ。

  • 上巻に比べダーウィニズムの正当化に必死?

  • 下巻は上巻に引き続きちょっとくどい。進化論に宗教を絡めて語られることが比較的に少ない自分のような日本人には「そこまでムキにならなくても」と感じる。

    上巻に続いて様々な説を紹介しているのだけど、「例えば」に続く話がわかりやすく、かなり難解なことも読んでいて伝わる。

    とにかく、ずっと前のめり。そのまま前のめりの勢いのまま突然終わる。雑なようでいて、構成はそれなりにしっかりしているので読みやすかった。

  • ブラインドウォッチメーカーの後編は、様々なたとえを用いて、進化論に対する誤解やそこから派生した異なる理論をとことん論破する内容です。

    この本で主に批判されるのはグールドたちが唱えた、爆発的進化があったというアイデアです。その批判には説得力がありますが、どことなくヒートアップしすぎな感じも。

    また最後の章ではダーウィニズムを否定するべく出された多種のアイデアを一蹴し、その勘違いの滑稽さを巧みな比喩を用いて痛快に批判します。

    上巻と比較すると、誤解を招くような他の科学者の考えをとことん否定する内容がほとんどに感じました。それだけこの進化論という現象が捉えづらい概念を含んでいるのでしょうが、置いてかれた感じがしました。
    対象となる読者はどういった層なのか、わかりません。

  • なんかヒステリック。

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著者プロフィール

英国の進化生物学者。世界的ベストセラー『利己的な遺伝子』で知られる。ほかの著書に『盲目の時計職人』『神は妄想である』『遺伝子の川』『進化とは何か』など多数。

「2022年 『これが見納め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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