- Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152079701
作品紹介・あらすじ
40億年にわたる生物進化の道のりは、驚くほど多様で奇妙な生きものたちを生み出してきた。哺乳類でありながら卵をうむカモノハシ、りっぱな脳をもつハリモグラ、染色体がたった一本しかないアリまでいるとは。だが、進化が生みだした最も奇妙な生きものは、並外れて大きな脳を獲得したヒトだ。知性をもったわれわれは、なぜ恐竜に熱狂し、なぜさまざまな荒唐無稽なアイデアを持ち出してまで自分の起源を知りたがるのだろう。図書館の書庫の引き出しに忘れられていた小さなメモの秘密を探り、癌との闘いの最中にも死亡率の意味を考える。目の前に現われる多様な事象の奥に、グールドは常に自然の本質を見抜こうとしているのだ。驚きと喜びと明快さをモットーとする著者が、自ら最高の出来とよぶ科学エッセー。
感想・レビュー・書評
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配置場所:摂枚普通図書
請求記号:467.5||G
資料ID:29515653詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
進化とモノの起源との関係。面白い科学エッセイ。
いくつかの科学エッセイが編集されていますが、この中で面白かったのは、英文タイプライターの文字の配列と進化についてのエッセイです。
現在パソコンで使われているキーボードですが、このキーボードのことを「QWERTY」(クワーティ)と言います。何故この様に呼ぶのかと言えば、第一列のキーが「QWERTY」と並んでいるからです。
で、このキーの配列なのですが、英語の単語の70%以上は「DHIATENSOR」の10種類の文字でタイプできるそうで、そうであればこのキーを使いやすい第2列に並べればよいはずなのですが、実際には並んでいないのです。以前は、確かにそういう配列のタイプライターがあったのですが、何故か消え去ってしまいました。
そこで、グールドの考察です。「QWERTY」が体勢を占めた理由というのは、機種の改良等のハードウェアーというよりは、教師や推進者といったソフトウェアに負うところが大きいという見方です。
これが広く使われるきっかけとなったのは、1888年にタイプの早打ち競争が行われ、たまたまキーの位置を暗記していた「QWERTY」のユーザーが勝った(これがブラインドタッチの起源)ことで広く宣伝されたのが、優秀性と勘違いした多くのユーザーに使われる要因になったということです。
これには、その他の多くの偶然も重なったことが「QWERTY」に取って有利に働いたということが言え、同じように「生物の進化」というのも偶然が重なった結果として、現在に至っているということで理解すべきというのが彼の見解です。
大変判りやすい例えと、教養溢れる文章がこの本の好きな理由です。ものの起源を探るというのは、なかなか面白いものです。
グールドが鬼籍に入ってしまい、このような知的好奇心を擽るエッセイが読めなくなってしまったのが、今でもとても残念です。
PS グールドの「QWERTY」に関する記述は、実はどうも誤りなのだそうです。
でもグールドは古生物学者であって、「QWERTY」配列の歴史を調査している専門家ではないのですから、彼が間接的に他から引用したとすれば、誤りは仕方のないことかもしれません。彼は既に鬼籍に入り反論の余地が無いのですから、当時のグールドは誤った情報を基に考察していたと解釈するほうが良いのでしょうね。