イマココ――渡り鳥からグーグル・アースまで、空間認知の科学

  • 早川書房
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本棚登録 : 338
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091260

作品紹介・あらすじ

地上でもっとも方向音痴な生物であるヒトは、どうやって自分の現在位置を知ったり、目的地までの道のりを決めたりしているのだろう?ヒト独自の空間認知システムは、GPSなどのナビゲーション技術や、都市・建物・インターネット空間の設計にどう反映されているのだろう?そして、こうした人工空間のはざまで生きることは、私たち現代人の振るまいや想像力に、どんな影響を与えているのだろうか-。斯界の第一人者がナビゲートする、空間認知科学の最前線。

感想・レビュー・書評

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  • 英語の副題が月へ行く道はわかるのにモールで道に迷ってしまうのはなぜかとあるのが興味深かったが、引用などが私的な扱いが多く根拠に納得できない。翻訳がわかりやすい反面口語調なのが気になるがそもそもの内容の浅さなのかもしれない。空間なのか距離なのか説明意図が曖昧な為、迷路アトラクションで迷わない為の読解本としてくらいの程度と感じた。

  • ふむ

  • 空間をキーワードに現実はもちろん,バーチャルな世界までを含めて,どう認識しているかを語った一冊。現実でどんな思い込みをしているのか,結果それがどんな現象になっているのか。バーチャルな世界での実感とは何か…トピックの幅も広く,教養的であり哲学的であり,興味深い。

  • 人間を含む動物はどうやって道を見つけているのか、逆にどうやれば迷子になるかが第一部。第二部では人の空間認知を居心地を中心に述べているが最後の方はサイバースペースや自然の話になってやや散漫な印象。

    フランク・ロイド・ライトの教え子で都市計画設計者のケヴィン・リンチによると都市のイメージの主要な5要素はパス(道)、ノード(結節点)、リージョン(区域)、バウンダリー(境界)そしてランドマークだという。例えば渋谷なら世界一有名なスクランブル交差点がノードでそこにつながるのがパス。センター街はリージョンでJRがバウンダリーだ。ハチ公をランドマークというのかというと少し違い遠くから見える目印がランドマークなので谷底の渋谷では109ぐらいか。新しい駅ビルができればランドマークになるのだろう。

    見晴らしの良い土地であればランドマークがナヴィゲーションの起点になる。東京タワーとスカイツリーの両方が見えるところであれば位置関係を把握していれば方向がわかる。ジガバチは巣穴を探すのに巣の周りのものを目印にしているし、ポリネシアの航海士は島やその上を飛ぶ海鳥、夜ならば星の位置を数10kmの航海をする。

    簡単に迷子になる人間と違いアリは例え仲間が通った道の痕跡、匂いを消しても道を見つけることができる。どうやら経路積分をしているようだ。言葉にすると難しいがどれだけ歩いて曲がってどれだけすすんだから「イマココ」にいるというのをカウントしている。ほんまかいな。ある実験ではアリをつまんで異動させると元の位置で巣のあった方向に向かって歩き出した。つまり巣の位置がわかってるのではなく自分の位置から巣のあるはずの方向がわかっている。ネズミも迷路を造りエサの部屋を覚え込ませると、最初の道を閉じてもエサの部屋の方向を覚えている。また、アリの場合は太陽光の偏光が見えるらしい。偏光フィルムで覆った部屋ではアリも迷子にさせることができた。伝書鳩やウミガメが元の巣箱や砂浜に戻れるのは磁場を利用して方向を見つけているらしい。しかし、磁場だと南北はわかっても東西はどうやってわかるのだろう?謎だ。

    頭の中の地図はどれだけあてになるのか?本の中ではアメリカの都市が例にあったが日本でも同じ様な質問ができる。東京と秋田市はどちらが東にあるか?高知市と福岡氏ではどちらが北か?地図を見ると秋田は日本海側=西で東京は太平洋側だが実際にはほぼ南北に位置しわずかに秋田が東に来る。同様に四国の南の高知よりも九州の北にある福岡の方がすこし南にあるのだ。

    家の中の居心地が良い場所は出入り口を含めてできるだけ広い範囲が見渡せる場所だと言う。部屋が一番広く見える場所と思えば良いのか。寝室はできれば屋根が低い方がよく、入り口が見える洞穴が安全な隠れがだったのでその名残なのではないかと。確かにでかくて天井が高い部屋のど真ん中にベッドを置いても落ち着かない。これがオフィスになるとどの程度開放的にすればいいかのバランスが重要になるらしい。個人の作業とグループの作業がどういう意味を持つかによってもバランスは変わる。意図せぬ出会いを起こすようにデザインされたオフィスと言うのも増えて来ている。都市の場合だと人通りの多さをデザインできる。一般的に人は多少遠回りでもわかりやすい道を選ぶ傾向があるらしく、曲がる回数が少ないのがわかりやすさにつながる。裏通りであっても表から1本入ったところとさらにその裏ではだいぶ違う。隠れ家的なお店もいいが本当に見つからないようではだめで、ここらに何かありそうと表から入ってちょっとで見つけられる塩梅がいいのだろう。

  • 内容は空間認知学について章毎に様々なテーマで論じられています。

    一章では、なぜ人は迷うのか?という疑問から、動物と比較しながら人間の空間認知のプロセスを論じています。
    二章では範囲が広がり、家や都市、サイバースペースや自然空間の中での人間の空間との関わり方を論じています。

    自宅の周りで迷子になってしまうような、空間オンチな人間だからこそ
    様々な工夫をして空間と自分を結びつけようとしてきました。
    セカンドライフなどの歪んだ空間でも暮らせるようになりました。


    この本中に”私たちは特定の場所に繋がっていることの必要性を理解している”とありました。

    先日の大震災で被災した街は、多くのランドマークや人が住む家をも失ってしまいました。しかし、その土地に留まりテント生活や避難所生活をしている住民の様子も報道されました。
    住民は、自分がその空間と繋がっている証を失い、そこに留まることでしか自分がその空間に属する感覚が得られないのかもしれません。

    関東でのうのうと生活している我々に彼らの気持ちは到底理解できないと思いますが、この本を読むことで街が消えるとは一体どういう事なのかをも、少し知ることが出来ると思います。


    全体としては、広く浅くという印象は受けましたが、凄く面白かったです。

  • 前半部と後の方で別の本のような感じ。いろいろな動物の位置感覚について触れた前半は面白いんだけど、後半のサイバースペースの話はちょっと我田引水的な印象。

  • 多少イヌイットや砂漠の蟻のエピソードが面白い位で、他は専門的知見もなく冗長でした
    なによりセカンドライフについて良く書かれたくだりを見るに、あまりにも想像力が欠けていたと断定せざるを得ないです

  • 「人間は屋内/都市/バーチャルの別を問わず、あらゆる空間を頭の中で位相学的に再構築して理解している」・・・著者はこのことに起因する現象や問題点を、家具の配置から環境問題に至るまで、さまざまな切り口で洗い出す。

    印象に残ったのは次の2点。

    ①人間を空間に結びつけるのは「物語」であるということが繰り返し言及される。仕事柄、地方の衰退中心地を見ることが多いが、ここに人を呼び戻すには、経済的なインセンティブよりも、「そこ」が我々にとって「どこ」であるかを具象化する何物かが必要なのだろう。しかし当然ながらそれは容易ではない。特に空洞化した中心商業地はすでに生活人口の激減により、従前との歴史的連続性が絶たれているケースが殆どだからだ。「再生」ではなく「創作」された物語=「開発」では、人を惹きつける力に乏しいだろう。

    ②「私たちの頭には、もともと現実の空間と自分たちを切り離す傾向があるかもしれない」・・・私たち、特に首都圏生活者は、「フクシマ」に関してこれを現実にやってしまったのではないか。首都圏への重要な電力供給源が、我々の現実の生活基盤と地続きであることを忘れ、どこか遠くの自分たちとは隔離された仮想的な空間から電気が沸いて出てきていると勘違いしていたのではないだろうか。また今、「大飯」がどこにあり、どのような歴史(物語)を持つ土地であるかを我々は認識しているだろうか?

    なお、本書内では人間の空間認知に関するさまざまな実験に触れているが、もう少し詳しい実験内容への言及があればより理解が深まったと思う。

  • 情報空間の情報によって生み出された世界も同じ現実。
    エコロジカル・フットプリント

  • 方向音痴になるのは人だけなのだという。
    アリも渡り鳥も迷わず目的地に着けるのに、そしてイヌイットやアボリジニーは独自のナビゲーション術を身につけているのに、なぜ現代人はその能力をなくしてしまったのかというのが本書の主題である。

    自分もバリバリの方向音痴なので、おもしろそうかなと図書館で借りてみた。

    サハラサバクアリは、自分の体調の2万倍もの距離を移動しても、出発点がどこだったのか、相当正確に把握しているのだそうだ。経路積分(どの方向にどのくらいの距離を移動したかの累計)能力と偏光を感じる能力が高い動物なのだという。
    伝書バトが数千キロ離れた箇所から巣に戻るには、磁場を感じる能力・嗅覚・ランドマーク(目印)などを利用しているらしい。
    イヌイットやアボリジニー、ポリネシアンは、風のパターンや海のうねり、星図を元に、正確に目的地に向かう。アボリジニーに伝わる天地創造にまつわる物語には、風景の物理的形状が歌い込まれているという(『ソングライン』)。

    目的地への地図の他に、空間認識に関して、人はどのような空間を心地よいと感じるか、それはなぜかという話もある。日常を多く過ごす場所には、広い視野が取れる場所が選ばれる傾向があるという指摘がおもしろかった。
    イスラム圏やイギリスを例に挙げて、各文化圏ごとの公共空間・私的空間の区切り方の違いも興味深かった。
    都市や職場の設計について、効率だけを考えて設計すると、魅力を失って、結局は機能しなくなる霊もあるあたり、空間が人に影響を及ぼすのは確かだが、具体的にはどのように影響するのか、わかっていないことも多いということだろう。

    著者の結論は、簡単に言えば、道を見つける能力を失ってしまった現代人は、子どものうちからもっと自然に触れ、空間感覚を掴み直すべきだというもの。もっともといえばもっともだが、個々に論じられてきた研究結果が時にスリリングなのに比べて、いささか茫漠としていて具体性に欠ける。論理的というより、情緒的な結論という感じ。まだまだ問題点と解決法を結ぶ線ははっきりとは見えないということか。

    *可視グラフ、イソビスタ、スペース・シンタックスなど、空間の性質を表す尺度の話もおもしろかった。数理的にあらわそうとすると、こういう風になるのか。これって何学っていうのだろう?

    *とはいえ、カタカナ語が多くてちょっと閉口した。学術用語をすべて日本語にするのも大変だろうし、いたしかたないのかもしれないが。

    *原題は”You Are Here”なのだが、それに対して、この日本語タイトルは、いかにもインターネット関連の書籍という感じがしてしまうのは私だけだろうか。それと巻末の補論。題して「『アーキテクチャ』について――これからの情報空間を読み解き、設計していくためのキーワード」。どちらも、ミス・リーディングとまでは言わないが、本書の本来の重点を微妙にずらしているように思える。日本版刊行者側(って一体誰なんだ?)の意図なんだろうか?
    原著者は、サイバースペースについても述べてはいるが、もっと俯瞰的に、空間認知について研究されてきたこと・これまでにわかっていることを総括し、我々人間の空間認知能力がなぜ劣ってきてしまったのか、今後どうすればよいのかを模索しつつ問題提起しているのだと思う。
    補論において、解説者(訳者でもないし、何でいきなりこの人が出てくるんだ?という感じ)が自著を持ち出して、原著者の主題とずれていることを語るのは、他人の褌で相撲を取っている感じがして、個人的には違和感を覚えた。

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