- Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152093523
感想・レビュー・書評
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[事実は小説よりも危なり]その全貌については知られていないけれど、泣く子も黙るという形容がピッタリとくるほど圧倒的な存在感を誇る、イスラエルの諜報機関「モサド」。彼らが手がけてきた数々の秘密オペレーションの成功、そして失敗を徹底的な調査を基にしてまとめた作品です。作家としても活躍するマイケル・バー・ゾウハーとニシム・ミシェルによる共著作品で本書はベストセラーとなりました。訳者はミステリー作品なども手がけている上野元美。原題は、『Mossad: The Greatest Missions of the Israeli Secret Service』。
スパイ小説顔負けの作戦の数々に驚かされること間違いなし。暗殺をも厭わない任務の数々に、読み終えた後に思わず「尋常じゃないな......」とつぶやいてしまうほど。他方、そのモサドを貫く倫理観(これは場外からイスラエルを眺める人間のもののそれとはまるっきり質が異なるものではないでしょうか)の淵源と強靭さを、本書後半のエチオピアからのユダヤ人救出エピソードに見ることができるように思います。
個人的に本書を読んでいて勉強になったのは、モサドという組織がどのように国家機構の中に位置付けられていて、政策決定プロセスと絡んでいるのかというところ。圧倒的な力を有する機関が人的・組織的にいかにコントロールされているのかという点は、組織運営という点でも参考になる点が多いのではないのかと思います。
〜だれかが殺しにくるのなら――立ちあがって、その男を先に殺せ〜
しかしよく調べたな☆5つ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
早くも今年のベストを予感させるほどの必読本。読み終えるのが惜しかったし、今後も折りに触れて再読するだろうなと思わせる本。
一人始末するのに、30人近くが現地入りしたりする。国籍も多彩で、旅行者の格好で現れ、捕まりそうになると各大使館に駆け込む。現地では、弁舌巧みに説得したり、賄賂を贈るかと思えば、誘惑し、静かに引き金を引く。
決して忘れないのは、受けた仕打ちだけでなく、不運にも捕まってしまった仲間に対しても。決して捨て駒にはしない。工作員もそれぞれ頭の回転が速く、機転が利き、とにかく献身的なのだ。
ただ注意深く読めば、その歴史においてモサドの活動が変質していることがわかるし、いまインテリジェンスの世界で占める地位も不変ではないことがわかる。
勝ち逃げを決して許さず、一度でもお尋ね者のリストに加えられれば、モサドの手から逃れることはできないとテロリストに思わせることで、敵を動揺させ、危機を未然に防ぐ狙いもあってか、最強神話を自ら作り上げている。 -
世界最強のインテリジェンス機関と言われているイスラエル モサドの過去のエピソードが綴られている。
ただし、単にエスピオナージを踏み越えた、国家権力としての国際法を踏み越えたオペレーション(拉致、暗殺)には、ただただ震撼するのみ。
平和国家日本にとどまっているだけではイメージできないこの地球上で実際に起きた事実が体感できます。
ただし、イスラエルの方が著者なので、その点は多少のバイアスを考慮した方がいいかもしれません。 -
モサドの活動記録を綴った短編集である。建国まもない頃から最近2010年頃までの大失敗も含めた21事例を実名を挙げて、誰が決断し、どのように行動したかを具体的に手口を記している。よくまあ執筆出版を許したと思う。20カ国以上でほぼ同時出版もさもありなんと言う内容だ。あの事件はやはりモサドの仕業だったかとも思うが、巻頭の長官やテロリストなど関係者の写真が新旧さまざまに並んでいるのを見ながら本章読むと、現実は小説より奇なりという常套句が浮かんでくる。テロリストやあからさまに敵視する国々に狙われたイスラエルには生き延びるために不可欠な機関だろうが、時には作戦が失敗し要員が死に至ってしまう。それを政府がきちんと原因究明して決してうやむやにしないところがこの国の凄みのひとつだろう。モサドが活躍せざるえをえない辛い現実に終わりは来るのだろうか。