君の話

著者 :
  • 早川書房
4.15
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本棚登録 : 1218
感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152097828

作品紹介・あらすじ

親しい友人もおらず、両親とも縁を切って孤独の中で暮らす青年・天谷千尋。彼には"一度も会ったことない幼馴染"の記憶があった。とある夏の日、千尋の前に存在するはずのない幼馴染・夏凪灯花が現れる。優しい嘘と美しい喪失が織りなす、君と僕の……恋の話。

感想・レビュー・書評

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  • 記憶を買えたり、忘れることが出来る技術がある、今よりもう少し先のお話。
    記憶をいじれるのは、とても便利で優しくて温かくて、寂しい。忘れてしまうのも、忘れられてしまうのも、切ない。
    どんなに苦しくて、辛くて、虚しくて、悲しくても、自分に諦めたつもりでも、幸せなんて望んでいないつもりでも
    あんなことがなければ。とか、世界中のどこかに“運命”の相手がいるんじゃないか。と信じてみたくなってしまう。そんな期待をしてしまう。
    だからこそ、その期待を、本物の救いにするために、人間は、想像に、夢に、恋い焦がれてしまうのかもしれないな。そう思った。

  • 記憶改変により出会ったばかりの幼なじみ、千尋と灯花の物語。
    幻想の中の記憶の幸せな思い出。実際はない思い出。その中の理想の幼なじみ。現実の幻想の狭間で揺れる2人の心。儚く哀しいストーリーがありました。
    彼女の思い出と意思を継ぎ現在を生きる千尋。幸せな脚本を提供し続け、ようやく自身も幸せになった最中旅だった灯花。彼らが共に過ごした幻想の時間軸は大切なものになったんでしょうね。たとえそれが嘘でも、幸せなら。
    半ば186ページ目の2人は、また別の世界軸の2人かな。せめてその世界軸の中では、どうぞ末永く幸せに…。

  • この人の作風は、救いのないハッピーエンドという言葉に集約できるのではないかと思うことがある。絶望するほど不幸で、だけど他の誰よりも幸福を手に入れる物語。文体のやわらかさと素直さが、その両方をこれでもかというほど盛り立てている。
    強烈なインパクトに打ちひしがれる読者だけを残して、本当に呆気なく物語は終わってしまう。そして、本を閉じてもまだ、ハッピーエンドから抜け出せない自分がいることに気づく。

  • 記憶とにせの記憶「義憶」。
    義憶が自由に買えるとしたらという設定の話。
    この本を読んで、記憶って何だろうと思ってしまいました。特に楽しかった記憶は義憶でもよいかもと思えてきました。
    この本の構成はレコードのA面とB面と本の中で表現していましたが、違う視点から構成されています。

  • 三秋さんの作品、初読みです。まず装丁、この雰囲気が好きです。内容は一言でいうのなら「すごく切ない、けどなんかキレイ…!」ってことでしょうか…。記憶改変の技術が進歩し、人々は新たな記憶を購入することができるようになった。手違いによって主人公の天谷千尋くんは幼なじみの夏凪灯花さんとの記憶を持つことになった…。その夏凪灯花さんとの思い出を消すことにためらいを感じた天谷千尋くんの隣に、現実の夏凪灯花さんが現れる…。この2人がもっと早く出逢っていたら…どうなっていたのか…ちょっと考えてしまったり、でもこれでよかったんじゃないかって思ったりもしました。でも記憶が義憶としてその人の人生を左右する時代が来たら…ちょっと怖いとも感じました。

  • 孤独なふたりが出会い、ただただ甘い話が語られるところ、この小説の構造(敢えて書かない。読んでなるほどと思って欲しい)が上手くこそばゆさを躱してくれる、楽しい読み心地だった。

  • 義憶というSF設定の中で、切なく美しい青春ラブストーリー。どこか懐かしさを感じるような描写や、繊細な文章にラストは思わず涙してしまいました。

    三秋 縋さんの作品を読んだのは本作が初めてだったのですが、他の作品も読んでみたいと思います。

  •  決してハッピーエンドではない。バッドエンドでもない。ビターエンドというには甘すぎる。
     読中から読後数時間に至るまで、ただただ優しい世界に浸ることができる。
    「世界観」
     記憶を操ることが実用化された世界で、記憶を消そうとした主人公が、手違い?で存在しない幼馴染の記憶を手に入れた。
     存在しないはずの幼馴染が、実在した。
     存在しないはずの幼馴染と、共に過ごした。
     存在しないはずの幼馴染がーーーというお話。

     一行日記からの展開は想像可能回避不可能。一気に世界に引き込まれる。
     一人称小説における主観の転換はありふれた手法であるが、この作品は、今まで読んだ中で、最も巧みに活用している。

    尊死、えも死系小説です。

  • #日本SF読者クラブ
    切ない話だ。記憶に関する話で、フィリップ・K・ディックの作品や「攻殻機動隊」(義体ならぬ義憶が登場)を彷彿させられる。三秋氏の作品を読むのは、これで2冊目。最初は、話に入り込みがたいのが、一旦入ってしまえばあとはスラスラ読める。三秋氏は、女の子を「可愛く」描くことが巧い。映画化されるかもしれないな。

    • かなさん
      魚雷屋の読書録さん、こんばんは。初めまして。
      この作品、私もすごく印象に残っています。
      女の子を「可愛く」描くことが巧い…同感です!
      ...
      魚雷屋の読書録さん、こんばんは。初めまして。
      この作品、私もすごく印象に残っています。
      女の子を「可愛く」描くことが巧い…同感です!

      このたびはこちらへのの沢山のいいねをありがとうございました。
      魚雷屋の読書録さんが今後読まれる作品にも興味がありますので
      フォローさせていただきます。よろしくお願いします。
      2022/10/01
    • 魚雷屋阿須倫さん
      かなさん、こんにちは。フォローありがとうございます。こちらもフォローさせていただきます。
      最近は忙しくて、あまり本を読んでいません。
      かなさん、こんにちは。フォローありがとうございます。こちらもフォローさせていただきます。
      最近は忙しくて、あまり本を読んでいません。
      2022/10/01
  • 記憶を植え付けられることで始まる恋愛ものSF。過去を消したりうまく作られた思い出を植え付けることができる薬がある世界。千尋は過去のことを消す薬を飲んだが、手違いで幼馴染という女の子・灯花との思い出が入った薬を飲んだ。植え付けられた”義憶”の(存在しない)灯花であったが彼女と出会い…。最初は義憶とか薬とかその世界の説明で、どうかなあと思ったけれど、読み進めると切なく悲しく。孤独であること、寂しさ、二人が感じたこと、描写が素晴らしい。世界に対してもう望みはないけれど、でも求めてしまう。想像であった人。運命の人の存在。物語全体の世界といい、流れといい、言葉といいうまく作ったなあという感じ。

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著者プロフィール

WEBで小説を発表していた作家

「2015年 『僕が電話をかけていた場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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