トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー

  • 早川書房
4.19
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本棚登録 : 448
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152102737

作品紹介・あらすじ

セイディはMITの学生。ある冬、彼女は幼い頃一緒にマリオで遊んだ仲のサムに再会する。二人はゲームを共同開発し、成功を収め一躍ゲーム界の寵児となる。だが行き違いでゲーム制作でも友情でも次第に溝が深まっていき――。本屋大賞受賞作家による最新長篇

感想・レビュー・書評

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  • ★5 秀才ゲームクリエイターの愛と友情の物語 #トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー

    ■はじめに
    子どもの頃、友人と一緒にファミコンで遊んだ日々が懐かしい。スーパーマリオ、ゼビウス、ドルアーガの塔、ドラゴンクエスト…数々の名作を思い出す。

    大学生の頃はアルバイトで稼いだお金を全て話題作につぎ込み、休み前は友人宅で夜通しで対戦ゲームに入れ込み、初めてつないだオンラインゲームで、見も知らずの外国人と朝までチャットに興じたり。

    今ではあまりゲームに時間を割くことは少なくなりましたが、私も本作の登場人物と同じように、ゲームが大好きなひとりなんですよね。ゲームクリエイターたちの物語があると知り、ぜひ読んでみたいと思いました。

    ■あらすじ
    ハーバード大学に通っているサムは、ある日幼馴染のセイディと出会う。彼女もMITに通う大学生であった。彼らは幼い頃にスーパーマリオを楽しんだ仲だった。ゲームに対する愛情とスキルを持っていた二人は、サムの友人であるマークスと共に、自分たちだけでゲーム制作に挑戦する。そして完成した「イチゴ」というゲームは世界中で大反響を呼ぶことになるのだった。
    彼らはさらに面白いゲームを作り続けるはずだったのだが、少しずつ価値観がずれ始めていき…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    友人、親友、仕事仲間、恋人、夫婦、家族…人と人との繋がりは様々な種類がある。そして人の環境は常に変化し、日々生活をしながら年齢も重ね、さらに価値観や経験値もアップデートされてゆく。本作はゲーム作りと会社経営を通して、人間の色々な絆の形を描いた作品です。

    本作は粘り気のある強い文章で綴られており、読者の胸を締め付ける気の利いたセリフが印象的。読めば読むほど、人の心の深みに入ってしまう感覚に陥ってしまい、感情移入が半端ないのよ。

    様々な過去の経験から、少しだけ偏った性格を持ち合わせた彼ら。大人が端から見ていると、もっと相手の気持ちを考えて仲良くやれよって思うかもしれませんが、それだとモノづくりなんて成功しないんですよね。個々の想いと情熱をぶつけることで、はじめて最高傑作が生みだされる。

    そして出会った頃から異性としても惹かれ合い、誰よりも相手を思いやる気持ちはあるにも関わらず、いつも喧嘩が絶えない。相手のことは誰よりも知っているのに、自分と相手の間にある食い違いを理解し、それを調整しようとする意思がない。友情も愛情も超えた精神的な部分でつながっているのに、決して幸せにはならない。ゲーム制作という夢が実現して、経済的にも成功しているのに…

    ゲームでハッピーエンドを迎えるのは容易ですが、人が幸せになるのは、本当に難しいですね。しかし彼らの努力はしっかり目に焼き付けました。「よくがんばったね」と、彼らを抱きしめたくなる、そんな素敵な作品でした。

  • ゲーム制作に青春をかけた二人の友情の物語『トゥモロー・アンド・トゥモロー(仮題)』(ガブリエル・ゼヴィン/池田真紀子訳)10月4日発売のお知らせ|Hayakawa Books & Magazines(β)
    https://www.hayakawabooks.com/n/n8131d4853a2f

    'Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow' review: This video game novel is a winner : NPR
    https://www.npr.org/2022/07/28/1114196664/video-game-novel-tomorrow-and-tomorrow-and-tomorrow-gabrielle-zevin

    Gabrielle Zevin – Writer
    https://gabriellezevin.com/

    Gabrielle Zevin(@gabriellezevin) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/gabriellezevin/

    トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000015604

  • なんだか最近レトロ・ゲーム愛が止まらない。年とった証拠か。
    そんなゲームの制作を背景にした男女の物語があると聞いて読んでみる。うーん、男女の友情?愛が一周回って友情ってなる?
    中身はそんな薄っぺらな話ではなかった。80年代から2010年代付近までのゲーム開発に情熱を傾ける人々の物語であり、その時代ごとに変わっていく愛についての物語でもあった。男女の愛が一周まわって友情になんかならないから悲劇も生まれるわけだけれども、そんな中でも結局尊敬しあい支え合って生きていく姿はなんだかホッとするとともにとても切ない感じです。

    登場人物の一人に、愛とは結局のところ何ものだ?と語らせています。「進化のために競争を忘れてまで他人の人生の旅路を楽にさせてやりたいと願う不合理な欲求でないとしたら、いったい何だ?」これについてはドーキンスがその著書「利己的な遺伝子」の中で既に答えを出しているように思える。そこを乗り越えての物語になっていたらもっとハードな作品になっていたのではないかと思います。それでも十分に胸にせまる作品であり、また読んでみたくなります。傑作。代表作でもある「書店主フィクリーのものがたり」も読んでみようかな。
    さらに、自分でもゲームを作ってみたくなります。やっぱりゲームはプレイするより作る方が面白いのかもしれない。

  • 「ゲーム制作に青春をかけた男女の友情の物語」と書かれていた。
    こういうお話は、大体、「友情」にテーマが偏っていく。
    けれど、この作品は、セイディとサムの関係性よりも(むしろ、と言うと失礼かもしれないけれど)作られたゲームの内容が魅力的なのだ。

    セイディが大学時代に作る「ソリューション」なんて、ネタバレを喰らっても、やってみたいなと思わせる魔力があるし。

    代表作となる「イチゴ」も、その後に作られる「ボース•サイズ」も、作り込まれた世界が、上手く翻訳されていて、それだけをスピンオフして欲しいなと感じるくらいだった。

    では、本来メインとなる「友情」の方は、なかなかシーソーゲームのような様相を呈する。
    セイディにも、サムにも、落とし穴が待ち受けるし、何より関係の戻し方がくどい。

    でも、二人に「アナザーワールド」があったことは、またとない奇跡であり、救いであったことはよく分かる。

    なかなか読み切るまでに時間がかかったけれど、だからこそ、二人の結末に一息つけたような気がする。

  • 謎の読了感…。三人の学生時代のノリと勢いですごい勢いで制作にのめり込む臨場感、社会人初期の少しずつ価値感が合わなくなってくる感じ、中年期の全く合わない&人生のステップ自体も合わなくて理解できない感じがリアル…。足の障害の度合いがひどくなっていくのもリアルに書かれるの読むのが辛かった。。。
    友情関係なんてお互いのこと理解しきっていても…合わないときは全く噛み合うことができない、サムの気持ちが切なすぎて泣く。(でもちょっとキモイ。)
    大抵の場合そこで友愛なんか疎遠になるものなのにゲームへの情熱と互いのリスペクトががひたすら二人をつなげてる。中盤まではマジで引いてたけどリスペクトが強すぎてもうそれ至高の愛だから胸張ってくれと、後半は応援すらしてた。
    でも好きなのになんで煽るかな、そのスキル強すぎて、お母さんのヒス構文になってて最後の方の喧嘩はヒス構文vsヒス構文で収集つかなくなってた。
    アメリカ人て日本語訳すると大体ヒスって喧嘩してるけど国民性なのかな。
    あと、本文にあった’リアルが充実’なんて死後単語もってくるのなんかいいなって思った。ゲーム業界なんて新幹線並みに技術が進んでいて常に新しいものを技術が古くなる前に少しでも多く開発を利益をとなっている(ような描写が本文にある)のに制作者の現実で使う単語がアップデートされてないのがいかに虚構の世界にリソースをかけているかという対比を感じた。
    全体的な言葉選びが統一されて遂行されてよかった、違和感を感じない文体、構成、表装。
    -1の部分はカタカナが多くて読みにくいところかな。気持ちは-0.5、少し飲み込むのに時間がかかった箇所がある。

  • ゲームをラブレターにするかのようなボーイミーツガールな出だしから一気に心をわしづかみにされた。
    甘酢なジュブナイルものかと思いきや、展開は意外に重くなっていく。サムとセイディはソウルメイトだが、誤解やすれ違いも多く、結局それが種明かしや解消されないまま進んでいくのが、人生の話だなと感じた。(そしてわたしはマークスも大好きだったのでかなり落ち込んだ。)

    現実では無理でもゲームの中なら乗り越えられること、二人が進んできた道のりを愛の轍として見られるようになることー読者も最後までいっしょに経験させてもらった気がする。

    おそらくインテリでリベラルでサブカルおたくの筆者。他の著作も読みたいし、絶対に上手く映画化してほしい!

  • ゲーム✖️恋愛版のソーシャルネットワーク(映画)みたいな話だなと思いながら読み進めました。
    厳密には全然違うのかもしれないけど…

    仲間と何かを成すってのはやっぱりいい!

    「ソリューション」のようなコンセプトのゲームって現実にもあるのかな、このゲームのくだりが1番好き。

  • 好きな所
    これまでずっと、〝愛してる〟と口にすることに抵抗を感じてきた。大切な相手に愛情を示すのは傲慢な事に思えた。しかし今は、この世で何より簡単にできる事の一つだと思う。愛しているのに、愛していると伝えなくてどうする?誰かを愛したら、相手がうんざりするまで愛していると何度でも伝えるのだ。その言葉にもはや意味がなくなるまで。理由などいらない。とにかく何度だって伝えるのだ。

  • 冒頭でゲームとかプログラミングのジャンルとわかり、難しいと楽しめないので嫌だなと思っていたけど、一気読みだった。
    任天堂とかドンキーコングとか、実在の名前を挙げてくれるので、どのくらいスゴイものなのか、イメージがわきやすい。

    また、何より心理描写が素晴らしい。サムとセイディの心のゆらぎが(相手には話さないものの)、可能な限り言語化されようとしている気がする。
    訳者さんも好きだし、そのおかげもあるのかも。

    若い二人がゲーム制作に没頭し、成功していく前半と、失敗も経験し、意見が食い違っていく後半。
    前半で無敵の二人を見ていたぶん、後半がひどくもどかしく切ない。

    著者の既刊も読んでみよう。

  • 愛こそ全て。
    愛さえあれば足りる。
    その荷が溝(轍)と釣り合っているなら。
    荷は
    愛の重さ。
    訳者の後書きより。
    良い訳者だった。他の作品も読みたい。

    ライフアフターライフのように、ゲームで何度も死んだら生きる。輪廻転生

    人を絶望から守るのは、遊びを求めるその心なのかもしれない。

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