- Amazon.co.jp ・本 (669ページ)
- / ISBN・EAN: 9784153350564
作品紹介・あらすじ
地球とコロニーである火星のあいだで戦争が起き、終結した。友好のため、火星の少年少女は使節として地球に送られるが、かれらは地球と火星のどちらにもアイデンティティを見いだせず……。「折りたたみ北京」でヒューゴー賞を受賞した著者の美しきSFドラマ
感想・レビュー・書評
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流浪蒼穹 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
https://www.hayakawa-online.co.jp/smartphone/detail.html?id=000000015067 -
「宝をめぐって闘うことは、宝そのものより重要だ」
地球へ向かう輸送艦、老いた艦長から老いた火星総督への伝言、物語はここから始まる。
舞台である「火星と地球」は、火星独立時の事情から、「統制管理と経済支配」という社会構造の相違から、再び戦火を交える直前にあった。その様子は、まるで現代の「社会主義と資本主義」を比喩しているよう。
人の幸せとは何か
自由と保護は相反するのか
そしてこの大きなテーマは、主人公達の葛藤という内面でのテーマとも通じている。
「自由とはなにか」主人公ロレインたちの迷い……。
自由、それは束縛からの離脱、独立。離脱したのちにあるものは、自らが作る新たな束縛?
レイニー医師の言葉
「世界は扇動と盲従の上に築かれている。その原動力は欲望だ」
「幸福とは頭をはっきりさせておくこと。自由とは頭をはっきりさせておけること」
第三章、刻々と迫る変化のなかで繰り広げられる群像劇、そして結末。
SFでありながら、カミュやサン=テグジュペリからの引用を多用した哲学書のようなこの物語。
『流浪蒼穹』この二つの熟語の題名は、「流浪、その果てに蒼穹」と、私は感じた。