赦しへの四つの道 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153350625
#SF

作品紹介・あらすじ

長年の奴隷解放戦争に疲弊した惑星ウェレルで、宇宙連合エクーメンの使節ソリーが祭りの日に攫われこの地の真実を垣間見る「赦しの日」をはじめ、圧倒的想像力で人種、性、身分制度に新たな問いかけをする《ハイニッシュ》世界の四つの物語。ローカス賞受賞作

感想・レビュー・書評

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  •  本書は「闇の左手」や「所有せざる人々」等と同じく〈ハイニッシュ・ユニバース〉シリーズに属し、四つの短編からなる。それぞれの短篇はゆるやかに関連をもって描かれている。

     〈ハイニッシュ・ユニバース〉に世界は以下の通り。
     惑星ハインに住む古代ハイン人は高度な文明を持ち、居住可能な多くの惑星に人間型生命種をまいて植民を行なっており、地球も植民地の一つとされている。ハイン人の文明は一度は衰退し、植民惑星の記憶も失われたが、その後、再興したハイン人たちは失われた植民惑星の探索を始め、地球を含むかつての植民惑星を発見していく。それぞれの住人は長い年月の中で独自の文化を発達させていた。そうした惑星の一つで発展した物理理論に基づいて開発された即時通信システム「アンシブル」や星間航法によって宇宙連合が結成されるが、やがて星間での戦争が勃発する。 何世紀にもわたる戦いで連合は崩壊するが、文明を再興した宇宙連合エクーメンは再び、様々な惑星に使節を送って同盟を結ぶことを試みる。(闇の左手より)

     本書の舞台は、同一星系に属する惑星ウェレルとその植民星イェイオーウェイ。ここでは奴隷制に基づく階層社会が形成されている。作者はこれを例によって、文化人類学的かつ社会学的に人種や性、身分制度を描き出してる。
     
     ただし、物語の背景に関しては文中で説明されているわけではない。本書の巻末にある「ウェレルおよびイェイオーウェイに関する覚え書き」を最初に読むことをお奨めする。といってもそれなりに難解なので、万人にお奨めできるわけではない。ル・グインのファンなら大丈夫だろう。
     
     こうした架空の世界を描いているのだが、実際は前述の作品等でも「ジェンダー」、「東西対立」、「ベトナム戦争」などの人類の社会をを基にしている。宇宙連合エクーメンなどは、まさに国連そのものだろう。

  • Ursula K. Le Guin — Four Ways to Forgiveness
    https://www.ursulakleguin.com/four-ways-to-forgiveness

    追悼、アーシュラ・K・ル=グウィン──困難な世界から「未来」を見通していた作家 | WIRED.jp(2018.01.25)
    https://wired.jp/2018/01/25/remembering-ursula-le-guin/

    赦しへの四つの道 アーシュラ・K・ル・グィン(著・文・その他) - 早川書房 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784153350625

  • 人種や性に基づく差別に苦しむ人の個人史的な短編が4つ。ハイニッシュ・ユニバースでの出来事として語られてはいるけれど、地球で起きていることと変わりない。その先に、SF的な跳躍後の良い世界が感じられなくて、読むのが苦しかった。

    そして自分の好みからすると、主人公たちが真面目に過ぎ、健康な性欲を持ち過ぎていた。それぞれの話の主人公がそれなりに良きパートナーと結ばれて「めでたしめでたし」な終わり方になっていたのは、想定された読者にとってご褒美だったのかもしれない。でも、そういうピカピカの相手を選び選ばれれば人生が完結するとは信じられない。物語の舞台と登場人物の真実らしさの度合いが、奇妙にアンバランスな短篇集だったように思う。

  • 分断の物語。性別、持つものと持たざるもの、その入れ子構造、オールドメディアとネット。ネットについては1990年代の知見ということで、先見性というべきか偏見というべきか。

    『帰還』というブービートラップが大爆発して再起不能に近い傷を負ってもなお読み続けているのは、ゲド戦記三部作+『風の十二方位』や『夜の言葉』、『闇の左手』に受けた好ましい衝撃よ再びと望んでいるからに違いない。しかし、出会えない。
    『西のはての年代記』でもそうだったが、物語というより設定語りという印象が強い。本書においては各編後半には物語になるとしても、導入の説明語りがどうにもあわない。
    本書に収められている四篇のうち三篇を読み終えたあとの『ある女の解放』に感じられた読みやすさは、それ以前の説明で十分に世界に慣れたためだろうと思われる。

    SF的な観点で言えば、1990年代の創作に後知恵でつっこむのも野暮だが、ハードウェアを無批判に受け入れているのに対し、ネットやそこにある情報を含むソフトウェアとは反発しあっているように見えること。
    このゆえか、惑星間植民を成し遂げた文明がもつであろう諸テクノロジーがアンバランスに見える。

  • ル・グインはすごい。エッセイを読んだ時にも思ったけれど。

    「ハイニッシュ・ユニバース」というシリーズがあって、これは『闇の左手』や『所有せざる人々』を含む宇宙年代記なのだそうだ。本書の4篇もその世界の惑星での物語。

    『闇の左手』は、昔図書館にあってタイトルだけ見知っていた…読めばよかった。いや今からでも読めばいいのか。
    解説に「あの格調高い小尾芙佐氏の訳文をふたたび目にして感涙にむせんだのは、私だけではないだろう」とある。そうなのか!

  • SFの内容は理解困難
    ル・グィンの作品は
    どのように解釈すればいいのか
    読むのが苦しく
    辛かった
    人種 身分制度 性別 労働

    第一編の裏切りだけが
    少しわかったかな
    いろいろあったけど
    これからを二人で穏やかに生きる
    それをイメージできた

  • ルグインなんて、お久しぶり。闇の左手って、読んだのいつだったのか…。読んでいるうちに、自分が、雪氷の国に居る気になり、寒気が走ったのを覚えている。

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル=グウィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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