戦争と人類 (ハヤカワ新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153400153

作品紹介・あらすじ

約1万年前のアフリカで起きた「人類最初の戦争」から核兵器の発明と使用、ドローンなどの最新技術が投入されたロシア・ウクライナ戦争まで。文明の進歩に伴い急速な変化を続けてきた戦争の歴史を一冊に凝縮し、その発生と激化の普遍的なメカニズムを解明する

感想・レビュー・書評

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  • 人類史を説明して、平和に至る道を模索する。正に私のライフワーク。早速手に取った。が、なんか違う‥‥。

    第1章冒頭から、「(人類は戦争を)受け継いだのだ。人類のもっとも遠い先祖も戦争をしたし、進化の隣人であるサルも戦争をする」と断定している。私の人類史の理解と大きく違う。戦争は文明を手に入れた時、初めて人類が生み出したものではないのか?

    著者は新しい学説として、これを紹介しているが、私には説得力なかった(根拠は長くなるので省略)。著者略歴は、英国軍事アナリストでジャーナリストだった。なんか納得。

    前提が違うので、最後の平和に至る道は眉唾なのだけど、軍事専門家だけあって、文明史における戦争史は参考になるところが多数あった。

    以下私的メモ。
    ・現在ドローン攻撃は、「テロを防ぐ」「暴動を鎮圧する」理由で、「周りの罪のない人々に大量の犠牲を出さないように」襲撃する時間と場所を決めて訓練が行われている。←もちろんミスはあることも著者は認めている。
    ・ロボットはLAWSドローン(致死性自律型兵器システム)として開発されつつある。一台500万ドルとして5年計画で支払えば、アフガニスタン農村部5マイルの地域をカバーする殺人ドローンを購入可能。これはアメリカ軍事予算のほんの一部に過ぎない。
    ・BC8500-8000頃の城塞都市(パレスチナ東部)が発見された。戦争が起きた証拠になるだろう。軍隊による戦いの「記録」は、BC3500頃のシュメール。狩猟採集民の10-20倍の大人数で、1人の指揮官の元で戦った。農耕民族だけが、数字、責任の概念、然るべき社会構造を持っていた。
    ・軍隊の集団行動による、大量殺戮の記録は、BC2500メソポタミアのハゲワシの碑にある。組織編成はファランクスの兵士たちであり、3000人が戦いで命を落とした。彼らは自主的に統制ある動きを行なった。しかもこの軍事力はコスパが良かった。
    ・その後、軍事力の革新(弓・馬と馬車、大規模な要塞、攻城兵器、騎馬隊等々)で、征服者の交代が行われた。
    ・近代史では世界大戦(その時代の全ての大国が参戦)は6回あった。30年戦争(1618〜48)、スペイン継承戦争(1702〜14)、7年戦争(1756〜63)、フランス革命とナポレオン戦争(1791〜1815)、第一次世界大戦(1914〜18)、第二次世界大戦(1939〜45)。最初は人生で一回半世紀ごとに起きた。ナポレオン以降は、国同士の大きな戦いが起きて、国の勢力図は変わった。世界大戦の度にカードはシャッフル(新国際秩序)される。1918〜1939が20年間しかなかったのは、総力戦で和平が難しかったからだろう。しかし、1945年秩序は89年の50年後でシャッフルされたのに、何故、第三次世界大戦は起きなかったのか?

    ・次の大戦は、核兵器が使われるからである。
    ・「核の冬理論」は誰も否定できない。2000〜3000の核爆発で、恐竜絶滅と同じような地球環境の激変が見られ、人類絶滅可能性も否定出来なくなる(戦争を起こしたならば、誰も勝者になれない)。ソ連崩壊あとは、研究は一切進んでいないが、危険性は現在も全く変わっていない。
    ・戦争に核兵器が使われなかったのは、偶然に過ぎない(例 キューバ危機)。←核抑止論は破綻している。

    ・都市ゲリラ戦略で、戦争に勝利する方法はない。PLOは国際テロで「宣伝」して、イスラエルと交渉した。ハマスとネタニヤフは、2国家共存による解決を妨害する共通の目的を持ち、うまく成功している(←21年の著者の認識。現在破綻しているのは承知の通り)。
    ・テロリズムは政府を直接転覆するには無力なままだが、より小さな政治的野望を実現する力は強くなっている(アルカイダ、イスラム国)。テロリストが核攻撃しても、それで世界は変わらない。
    ・危険な3つの逆戻りが進行中。
    地球温暖化(飢餓→難民と移民→武力による移民の取り締まり) 新たな大国(中国・インド・アメリカ体制→印米同盟がなれば危うい) 核の拡散(インド・パキスタン間の核兵器戦争の恐れ)←既に発行している核兵器禁止条約については一切言及ない。

    ・「ヒヒでさえも戦いを放棄した。人類もできるだろう」という、まるで科学的ではない理論のもとに、人類にも希望はある。と著者は結んでいる。違うだろ?もともとヒヒに戦争をする性質なんてなかったんです。結果的に、私と同じ結論になったけど、なんか納得いかない。

  • 人類史における戦争の歴史について書いている本である。
     
     個々の戦争の善悪といったことには触れてない。戦争の「進化」については、多くの章をさいて書かれている。また、最後の章には、人類が「戦争を止める」ことの可能性について触れている。
     そう、「それでも努力をやめる理由はない」。これは大事だ。

  • 発生のメカニズムを解けば、戦争をやめることはできるか?『戦争と人類』解説:世界史の見取り図としての戦争全史(池田嘉郎)|Hayakawa Books & Magazines(β)
    https://www.hayakawabooks.com/n/n6b94d57a451a

    The Shortest History of War | CBC Books
    https://www.cbc.ca/books/the-shortest-history-of-war-1.6561638

    Gwynne Dyer Author Home Page | Gwynne Dyer
    https://gwynnedyer.com/

    戦争と人類 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015602/

  • 人類も所詮動物であり、争いはする。
    しかし殺し合うところまで行ってしまうのは、他の動物と違うところだと思いながら読み進めた。

    改めて、人類歴史は戦争の歴史でもあることがわかった。
    ロシアのウクライナ侵略やイスラエルとパレスチナの紛争がクローズアップされているが、大国同士の世界大戦は、この75年発生していない。
    そう言う意味では、歴史から一定程度学んでいるのかもしれない。ただ、大戦とは言わないまでも、紛争は起こっているし、その質も変わってきている。もしかしたら、今までと異なる要因で、導火線に火がつくかもしれない。

    まえがき
    第ー章 戦争の起源
    第2章 実戦のありさま
    第3章 戦闘の進化(紀元前3500年―紀元前1500年)
    第4章 古典的戦争(紀元前1500年―紀元1400年)
    第5章 絶対君主と限定戦争(1400年―1790年)
    第6章 大規模な戦争(1790年―1900年)
    第7章 全面戦争
    第8章 核戰争小史(1945年―1999年)
    第9章 戦争の三つの枝―核兵器、通常兵器、テロリスト
    第10章 戦争の終わり
    あとがき

    それにしても、歴史的におびただしい数の人間が殺されていたこと、人間の命は相当軽いものだったことが理解できた。

    仏では、1562年から1598年のあいだに、10件の内乱が起こり、推定300万人が殺された。オランダでは、スペインの支配に抵抗する80年にわたる反乱が1568年に始まったが、1618年以降、こうした地方の争いは、すべてのヨーロッパ強国が巻き込まれた最初の戦争へと統合された。1648年に三十年戦争が終わる頃には、戦闘は現代より一世紀少し前まで維持された形式になり、800万の人々が死んだ。

    独は、三十年戦争のおもな戦場になり、この政策の代償を払った。
    1648年にウェストファリア条約によって殺戮が終わるまでに、独の人口は、2100万からわずか1300万へと3分の1以上減少した。ただ戦争の犠牲者の圧倒的多数は農民であり、権力者の誰も彼らのことを本気で気にかけることはなかった。

    ナポレオンの時代、1804年から1813年までに240万人が徴兵されたが、帝政末期に帰還できたのはその半分に満たなかった。

    独軍は1918年3月、アラスにおいて、攻撃初日に6608門の大砲から320万発を発射し、2週間のうちに広い領土を占領したが、7月までのあいだに100万もの犠牲者を出している。

    1914年から1918年までの戦争は、初めての全面戦争で、どちらかが完全降伏をしなければ終えることができないというのがヨーロッパ諸国の政府の理解だった。6000万の男性が徴兵され、そのうち800万人が死に、2000万人が負傷した。

    第二次世界大戦で7000万人が亡くなった。

    1945年8月6日、ティベッツ大佐の部隊が広島に核爆弾を投下した。たった一個の爆弾を積んだ、たった一機の飛行機によって、5分足らずで7万人が殺された。

    第二次世界大戦の勝者は戦争を恐れた。1945年のサンフランシスコ会議で国際連合憲章を採択し、戦争を非合法だとした。新しい国連憲章は、厳密な意味での自己防衛または安全保障理事会の命令によるものをのぞいて、他国への武力行使を禁じた。また、この命令は、加盟国が攻撃されるのを阻止するためにのみくだされることになった。

    2022年3月時点で拒否権の行使は、ロシア/ソビエト連邦120回、アメリカ82回、イギリス29回、フランス16回、中国16回である。

    次の何世代かをかけてわたしたちがやらなければならないのは、独立した国家から成る現在の世界を、真の国際共同体のようなものに変えていくことだ。そうした共同体を作るのに成功すれば、そこがどんなに論争が絶えず、不満が多く、不当行為に満ちていても、戦争という古びた慣例を実質的に排除することができるだろう。そうすれば、ようやく一息つける。

    戦争の歴史を振り返るということは、世界史を圧縮して描くことのようだ。著者のように、軍事史と世界史の両方をよく知る書き手だけが、その見取り図を示すことができる。
    本書は現在を理解し、将来を見据えるためにも力となってくれる。戦争という不安や混乱と不可分である現象を前にして、私たちが落ち着いた足取りを取り戻すための手がかりを与えてくれるのだろう。

  • 星4なのは、私が理解できなかった部分がたくさんあったからです。私の知識が増えたら星は変化します。
    今起きている戦争の原因も分からないのに、戦争を批判・悲嘆していていいのだろうか、と思っていた時期に刊行されました。
    結局ぼんやりとしたまま読み終えましたが、理解できた部分があるだけ有り難いです。

  • 人類がどのように争い、戦争をしてきたのかを先史時代から現代にいたるまで記載している。
    この100年で戦争の仕方が急激に変わってきている。今後どうなるかわからないが争いをやめることはなさそうだ。

  • ヒトが「戦争」を行い出したのはサルの頃からだが、狩猟社会から農耕に移行し、かつ遊牧民族が生まれた頃から酷くなったらしい。

    考古学的な証拠もあるのだろうが、全体に、風が吹いて桶屋が儲かった感じが漂う。
    戦争の歴史がどのように変わって来たのかという著述は面白かった。「核」が生まれて全てが変わった。
    その先は正直判らない。
    何つて、核保有国の多くが、決して理性的とは思えないところが何より怖い。

    戦争を止める唯一の?方策が、国の主権をより上の、ぶっちゃけ今で言うと国連に預けることだと言う結論らしいが、その常任理事国の、著者の言うところの唯一農村ゲリラが国を作ったRPC で、どれだけ恣意的に利用してるか見えてんのか。

    どうにも、日本とRPCについての分析が浅過ぎたり、先の大戦の戦争犯罪は戦勝国には適用されず隠蔽されたと言いながら、東京空襲とか、原爆投下自体が犯罪であるかどうかには全く触れてなかったりとか、まあ、その程度の本。

  • 人類の戦争の歴史を知ることができたのと、核戦争になったら助からないなと思える一冊だった。
    ただ私が勉強不足なので昔の歴史を良く知っていればもっと面白く読めるかも。
    私はネットで頑張って検索して読んだが。笑
    ただ核戦争は現在もこれからも絶対起きて欲しくないと思った。

  • 面白かった.世界史の類はどうも苦手意識を覚えてしまう自分でもすらすらと読めた.

    原始の狩猟採取時代から現代に至るまでの人間同士の争い(戦争)を巨視的に描いている.
    国家の樹立や技術革新など,歴史の進展とともに戦争の技術,戦術,戦略がいたちごっこのように進化し,現代まで脈々と続いていることがよく理解できた.

    ======================================

    ・戦争は人類特有の愚かな行為なのか?
    →No. 現代の文明を持たないヒトやその近縁種でも集団間の戦争は起きている
    →生物の生存競争方法の表出。生命は与えられた環境で最大限の繁殖を試み、結果環境の収容力を超える。そんな状況では天候の変化など少しの環境の変化が生命に欠乏をもたらす。欠乏を埋め生き残るべく、他の群から奪う選択肢に生存上の合理性が生まれる。遺伝的に攻撃的な素質を持つ部族が生き残り、淘汰の結果、闘争が遺伝子に刻まれる。

    ピュロスの勝利
    →割に合わないこと の喩え

    軍隊の指揮はなぜ絶対服従なのか
    →戦争は本質的に不確実。絶対服従はその戦いを取り巻く不確実さを減らす。

    戦争の極度のストレスは兵士の精神を蝕み破壊する。精神的な意味でのタイムリミットが各兵士にある。

    エース
    →WW1で生まれた用語。敵機を少なくとも5機撃墜したパイロット

    ドローン攻撃
    登場は2001年。
    ドローン操作者は自分の命は晒さないという倫理上の批判がある

    平等主義は相互監視や抑制行動が効く小規模集団では効くものの集団規模が大きくなると維持できない。上位下達のシステムが必要。さらには群衆をコントロールすることが必要
    →統治者の登場、専制政治と軍事化
    →大群衆が平等主義を取り戻すのは18世紀末の民衆革命(アメリカ,フランス)以降.
     印刷技術の登場×識字率の向上=ある問題を集団で議論し,意思決定する民主制の萌芽

    男に対する貧しい食生活と終わりのない労働、女に対する社会的身分の貶めはいわば抑圧の手段。

    スイス→傭兵団の輸出を産業としていた.

    ファランクス,時々騎兵や海上戦→1700年までには銃器を中心とした戦術にシフト.狙い撃ちではなく弾幕で圧倒するスタイル.

    フランス革命 1789年
    ナポレオンが皇帝へ.戦争の目的はヨーロッパ全土の支配へ. 1804年
    民衆革命はナショナリズムも掻き立てる.統治者が自身の立場を失わない程度に繰り広げる限定戦争から全面戦争へ.
    →塹壕で戦線を張り互いに持久戦→消耗線→大量資源が必要、国全体を巻き込む→攻撃の標的が国全体に。
    →塹壕による硬直は戦車が突破.全面戦争は以前変わらず.
    →電撃戦.スピード勝負の前線突破.(WW1後のドイツのポーランド侵攻)

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