- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163201405
作品紹介・あらすじ
自分が生と死の境目に立っていようとも、人は恋をする。人を愛することで初めて生じる恐怖、"聖なる残酷"を描いた傑作短篇集。
感想・レビュー・書評
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多分昔読んだことあるんだけど、カーテンのように揺れる母さんの息子がその後どうなったんだっけ?と思って再読。若い頃読んだ時よりおもしろくないと思った。すごく読みにくいし、気持ち悪い。
山田詠美さんの放課後のキーノートは大好きで何度も何度も読んでた記憶だけど、今読んだらどうかな?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
MENUが一番、好きだった。どうしてMENUというタイトルなのかは最後まで分からなかったけど。
「ほら、良く大人が、一番好きで大切に思う人とセックスしなさいって言うじゃん。でも、それに従おうとすると、聖子は、自分とセックスしなきゃいけなくなっちゃうじゃない?この問題、どうやったら解決できんの?先生」
「そうだなぁ。自分が一番好きだと確認するために男と寝てみれば?それって、自分としてることになるんじゃない?」
「ふうん。面白いアイデアだね」
聖子とトキのこのやりとりが好き。
そして、もう一つ。
「贈り物」
「トキ兄は誰かのセックスがくれた聖子への贈り物」
「馬鹿」
これも素敵。
私にとって麻子よりも聖子の方が魅力的に見えるのは、自分も聖子と同じように現実味のない恋の方が好きだからかな。。
トキが最後にリンチに合ったのには、驚いた。因果応報?でも、麻子にとっては一生、必要とされる存在を得たから、悪いことではないのに。
多分、せい兄のトキに対する見えない小さな裏切りがトキを傷つけてしまい、麻子との秘密の共有が永遠に欲しかった弟を失って、さらに、こんな結末になったのか。
それまでずっと内面はともかく、表面上は穏やかに進んでいた物語が最後、こんなバイオレンスな結末を迎え、良い意味で裏切られた。けれども、トキの内面はかなり危うい感じだったから、この結末も不自然ではないと感じられる。
後書きに生と死、そして愛について考えていて、この本ができたと書いてあったのを読んだ時、この本のテーマってそれだったんだ!と少なからず驚いた。生と死を前にすれば、自分の小さな恋の悩みなんて自然の壮大なスケールの前ではちっぽけなものなんだな、と思うけれど、多分、生と死と愛は何か関係があるのだろう。それは何となく分かる。
こんなふうに感じさせてくれる物の考え方や対比、作者の考え方に触れられるのは読書の良いところだと思う。
死ぬことは怖い。愛も怖い。でも、その二つは作者にとっては全く正反対の怖さ。彼女にとって、死ねば必ず悲しむ人がいる、ということが恐怖なのに対し、愛はある特定の人間を自分自身よりも愛してるのではないかと思う時、その対象を失うことが恐怖。つまり、死は他人が泣くのを思いやっているのに対し、愛は自分が泣くのを心配しているのだ。
死は生を引き立て、生は死を引き立てる。私はこれらのことに恐怖を抱いている。
私はまだそんなに人生経験が豊富なわけではないけれど、そう語る彼女の気持ちが心から滲みて分かるくらい、豊かな人生を送りたいと思った。
自分を一番好き、と言わなければいけない、と聖子に教えたトキは愛を恐れたのか。そうすると、現実味のない世界でしか生きられないのかもしれない。トキはそんな世界にいってしまったのかなあ。だとすると悲しい。ちょっと前の私と同じだし、私は未だにその世界に片足を突っ込んでいるから。
でも誰だって、自分が一番大事というのは共感できると思うから、読み手にこれだけ刺さる、普遍的な話でもあるのだな、と思った。
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長男がある日、カーテンレールを引っ張ってとってしまった。後で、母親自殺のくだりを思い出し訳の分からない納得をしてしまった。息子は、読んでないか、読んでいるかはわからない。DIYでレールをつけた。
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1959年生まれ山田詠美さんの本はたま~に読みます。今回、2001.6発行の「姫君」を読みました。41~2歳の時の作品です。MENU、検温、フェイスタ、姫君、シャンプーの5話が収録されています。「MENU」と「姫君」は自由奔放に生きる男(時紀)と女(姫子)が描かれています。どちらも突然の死で幕を下ろします。ぶっきらぼうでいて、なぜか憎めない、そんな人間像が浮かんできます。久々に小説らしい作品を読んだ気がしました。
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山田詠美の小説の中でもっとも好きな作品です。表現がきれいでウィットに富んでいて何度も繰り返し読んでいます。表題作のほかにMENU,検温といった短編もあり、それらも印象的でした。