弱法師

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 231
感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163226408

作品紹介・あらすじ

かなわぬ恋こそ、美しい。能をモチーフに現代の不可能な愛のかたちを描く、著者初の中篇小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 読んで良かった。大事な人を思う深い深い、これ以上ないくらい深い気持ち

  • 三冊目の中山可穂さん。
    切なかった。特に、卒塔婆小町。
    辿り着くところは、破滅とも思える狂わしい想い。
    悲しいはずなのに、この終わり方に不満はない。
    中山さんの、美しい文章が、そう思わせてくれた。
    読みながら、ずっと頭のなかで勝手にキャスティングしていた。
    深町・・高良賢吾さん、百合子・・中谷美紀さん
    高丘・・斎藤工さん
    読み終えた時には、映画を一本観たような
    満足感が、余韻とともに残りました。

  • 現時点では不治の病に犯されて鷹之のもとへやってきたのは
    8歳の繊細な少年朔也と美しい母親である映子だった。
    朔也も映子も愛してしまった鷹之は離婚して病院をやめ、
    小さな診療所を開いてつきっきりで朔也を診ることにした。
    しかしアルコールに頼るようになっていた映子は事故で死に
    専属の栄養士として珠代さんを雇うが朔也はどうも気に入らないらしく・・・
    「弱法師」
    新人賞をとった後なかなか次回作が書けない高丘は
    墓場で元敏腕編集者だったという女ホームレスと出会う。
    彼女が担当していたのは永遠の青春小説の書き手と呼ばれる深町遼。
    他の出版社と契約していたはずの遼は彼女に陶酔し
    彼女のためだけに100本の小説を書き、それが終わったら
    自分のものになってほしいと乞う。
    婚約解消した彼女の自殺、遊びだったホステスとの無理心中などを乗り越え
    ついに約束まであと1本を残すところとなった。
    「卒塔婆小町」
    外国を飛び回ってめったに帰ってこない薫子おばさんが帰ってきた。
    病弱な母と和菓子屋を継いだ父も好きだけれども
    わたしには薫子ちゃんにしか言えないことがたくさんあった。
    しかし17歳という年のせいもあり素直に薫子ちゃんと接することができないうちに
    弱っていた母がついに死んでしまった。
    病院に着いたわたしと父は遺体がなくなってしまったことを知らされる。
    「浮舟」
    装丁:大久保明子 扉絵:久保田珠美
    能面:寺井一祐作「弱法師」 協力:京都「田中彌」

    中篇が3作収録されているのですが、どれも凄い。
    難病の美しい少年の鬱屈した考えと怪しげな魅力、
    そして彼を愛し彼の母を愛する医者を描いた「弱法師」。
    編集者に恋をした青年作家が彼女のためだけに小説を書き続け
    恋心には応えられないがその作品を愛するが故に彼を拒めない
    作家と編集者の業が浮き彫りとなった「卒塔婆小町」
    綺麗で気風のよい薫子おばさんと
    線の細い母、母を愛する父の悲しい三角関係を綴る「浮舟」

    どの作品も鬼気迫る勢いがあって、
    「卒塔婆小町」の主人公は男性だけれども
    中山さんもこれくらいの気概で書いているのだろうと想像できます。
    情熱よりももっとしぶとい何かがどっと押し寄せてきて
    自分の貧弱な考えなんてあっという間にさらわれてしまった。

  • 号泣したw

  • 【かなわぬ恋こそ、美しい。能をモチーフに現代の不可能な愛のかたちを描く、著者初の中篇小説集。】


    3編とも、切なくて苦しい報われない愛の物語。
    中山さんの作品は同性間の恋愛物が多いけど、どれもこれも命がけで読んでいて苦しくなる。
    今回もそんな物語だけど、「卒塔婆小町」は人間としての愛の姿のように思えた。
    百合子がどんな想いでその場所でホームレスをしていたのか・・・。
    どれほどの強い想いで繋がっていたか・・・。
    中山さんの作品を読むと愛って、性別なんて関係ないものなんだと言われてる気になる。

  • 相変わらずの濃い小説を書く。短編3つで構成されています。
    薄氷を「わかってて踏む」ような恋愛物ばかりで、読んでいるこちらが苦しくなる。
    読み進めれば進めるほど、薄く白くより透明になるような。それでいてベタベタして血のような匂いのする書き方をする。情念を描くのが得意だなぁと。
    卒塔婆小町が一番好きでした。

  • やはり、この人はすごいと思う。これが現時点での最新作。
    それまでは、荒々しく、苦しく、刹那の最中、ぶつかり合いを描いてきていたので、そこからすると、淡白に感じるかもしれない。
    実際、最初感じていた。
    しかし、読み返すと、潜んでいるものは、決してぬるくないことがわかる。

  • 涙を流し、悲鳴をあげ、血を吐き、その身をほろぼしても、・・叶わなくても、焦がれる想い。(卒塔婆小町)  3編とも、激しく切ない想いが胸をうちます。 装丁が好みじゃないのが残念。

  • 能の曲名に惹かれて読み始めたら、独特な世界観のラブストーリーで驚いた。
    濃厚で変わった形だけど、爽やか。
    素敵な中編3編、出会えてよかった!

  • 業が深すぎて背負うには重すぎて、身を捨てても浮かぶ瀬がこの世にないので地獄のほとりで憩うことしかできないような恋愛の3編だった。表紙の弱法師さんの能面こわい。

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学卒。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で朝日新人文学賞、2001年『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞。著書多数。

「2022年 『感情教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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