あたり(魚信)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163266404

感想・レビュー・書評

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  •  川釣りで繋がる人の輪を描いたハッピーファンタジー。6話からなる連作で、釣果対象となる魚が各話のタイトルになっている。

          * * * * *

     舞台はさる地方都市の河川・田富瀬川。

     各話の主人公は少しばかりツイてない市井の人たち。しかも、ふとしたことで釣りをやってみただけの初心者ばかりです。

     「奇跡を信じたければ釣りをせよ」という言い伝えには半信半疑ながら、その面白さに引き込まれ、どっぷりハマってしまう人たち。
     そして、知らず知らずのうちに釣りを通して人間関係が広がり、気持ちばかりか人生まで明るく開けて…という、紛れもない山本甲士節。

     ただ、作者のこの節回しがいい。魚信の見極めが自身の人生の引き上げ時を観ることに繋がる展開もおもしろい。

     さらによかったのが川魚料理です。シンプルな調理法ですが、どれも実にうまそうでした。特に1話目に出てきたおいかわ料理の魅力はどうでしょう。塩焼き、南蛮漬け、天ぷら、フライ。ストーリーも1話目が図抜けていました。

     最終話は完全なオカルトファンタジーでしたが、作者らしい茶目っ気で、いい締め括りだったと思います。

  • 魚釣りのお話し6編。みんなちょっとアウトサイダーな人が主人公。「奇跡を信じたければ釣りをすれば良い」という言葉通りにいろんな奇跡が起こる。規模は小さいにしても。

  • 「奇跡を信じたければ、釣りをすればいい」という言い伝えをもとに近くの小川や湖沼や池での淡水魚釣りを通じての人の関わりを描いた心暖まる短編。就職の失敗やリストラ、引きこもりの人が何気に訪れた場所で釣りをしている常連さんに出会う。釣りを教わりのめり込むうちに自分の生き方を見いだしていく。一心に竿先を見つめることにより、精神に何らかの影響を及ぼし迷いが解ける、その比喩が奇跡を信じるなのかと感じた。最後の河童の出現は不可解だ。平塚のじいちゃんは大丈夫だったのか?

  • [2018年1冊目]
    読みやすく、釣りが好きな人はより情景が思い浮かべられると思う。
    特に山場はないので、のんびり読める。

  • 都会の釣り、いわゆる普通の釣りをテーマにした小説はおそらく今までなかったのではないか。都会の乾きが釣りという遊びを通して少しつづ潤っていく、という感じ。

  • 読み始めたら、先が知りたくてどんどん読み進んだ。
    「奇跡を信じたければ、釣りをするがいい」という言葉って本当にあるのかなと思った。
    釣りは小さい頃に4.5回しかしたことが無いけど、釣りがしてみたいとおもった。
    この著者の他の作品も読んでみたい。

  • 「奇跡を信じるならば釣りをするがいい」という言い伝えが残る地方都市を舞台に、釣りをきっかけに出会う人たちの連作短編集

  • 連作短編だが、最初の一編を読んで、この人、こんなの書くんだ、と思った。いわゆる巻き込まれ型のドタバタが持ち味で、それが本当に味があって好きなのだが、本作はすべてしみじみ物だ。ほろりと涙を誘うような話ばかり。地味な話ばかりだが、妙に心に響く。未読だけれど、三丁目の夕日のノベライズもやっているので、実はこの世界も真骨頂なのかもしれない。

  • 作者の釣り好きが伝わってきますね。
    って小学生以来やってないけど、ついついやりたくなりますね。

  • 「奇跡を信じたければ釣りをするがいい」という諺があるという町で、釣りを通じて様々な人間模様が描かれる。おとぎ話のような短篇集。
    自分には釣りの趣味は全くないものの、楽しめた。
    各章の人物が他章にも絡んでくるのも面白い。が、それだけに最終章の主人公が咄嗟に使った偽名が他章の人物と同じ名前、というのがちょっと残念。混乱を招かないように充分に配慮して欲しかった。

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