- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163297903
作品紹介・あらすじ
少し早い、俺たちだけの聖夜。そのオルガンは、特別な音で鳴った。18歳の少年が奏でる、感動の音楽青春小説。
感想・レビュー・書評
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牧師の父と、元ピアニストの母の元に生まれた
高校2年生の主人公、鳴海一哉。
優しく穏やかで完璧な父。
不安定に揺らぎ、恋人と家を出た母。
心が血だらけになっても人を赦し、自分を責める父を
不憫に思い、息子の代わりに嫁に怒り、恨む祖母の
祈りそのもののような重く深い愛に胸が詰まった。
愛と赦しは1つのようでいて、相見えることのない
世界のもののようで。愛は尊く、愛は罪深い。
重く低く垂れこめた不協和音のような毎日は
音によってまた解放されていく。
どんどんと感動的に展開していくメシアンの曲のように、
厳かに始まり、揺らぎ、魅力的で包括的な愛に包まれ、
分かち合う幸福と喜びでトッカータは締めくくられる。
みんなで見上げた迷わぬよう光るベツレヘムの星。
すべての音が音符として聞こえる一哉の世界が
どんな音で成り立ち、スケッチするように
音を拾い書き取った五線譜はどんな風景なんだろう。
風で鳴る生きた楽器"パイプオルガン"の
祈りのような音の残響が美しく心に響く聖夜でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
クリスマスの時期に読むのがおすすめである。
少し前の高校生のお話。
佐藤多佳子さんだが、他の作品に比べて何かスタイリッシュな感じがする。
マーガレットコミックスで連載されそうな感じ。-
ロニコさん♪こんにちは!
いつも、いいね!ありがとうございます。
この作品は、私も佐藤多佳子さんの作品を何作か読んでいますが、特に思い出...ロニコさん♪こんにちは!
いつも、いいね!ありがとうございます。
この作品は、私も佐藤多佳子さんの作品を何作か読んでいますが、特に思い出深い作品です。タイトルが『聖夜』だから、クリスマスにぴったりですね(*^^*)
では、またこれからもどうぞよろしくお願いします(__)2019/12/26
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オルガンと基督教と学校生活と家族が織り成す物語。ワタシの親友の娘婿がドイツでパイプオルガニストをしているらしいけど、この小説を読みながら少しだけ何となく音楽については解ったような気になれました 笑。さて、オルガンを通して知り合った両親が離別し 心に蟠りを持つ高校生男子が語り手の物語。どこか殻を持つ彼だけどオルガンを 音を オルガン部活を通して殻が軟化して行く過程が嫌味なく語られ爽やかな読後感を残してくれた。
作者あとがきも良かったです♪ -
先日読了した「第二音楽室」とセットになっている「聖夜」。
思春期にかかる女子の短編が綴られた「第二音楽室」と反して、
「聖夜」はオルガンと関わりのある男子が主人公となった長編作品。
個人的には「聖夜」の方が好きだと思ったのですが、
改めて両作品を思い返したとき、
これはきっと単に短編・長編の違いということだけだと思います。
読んだ印象は2冊異なりましたが、
心がくすぐったくなるような、甘酸っぱい要素がどちらにも含まれています。
本作品の主人公になっているのは、
キリスト教を信仰している学校のオルガン部に在席する18歳の男子。
牧師を父親に、オルガン奏者を母親に持つ彼にとって、
鍵盤と聖書は、生まれたときから隣り合っている環境。
鍵盤の前に座るとき、噛み付きたい気持ちと素直に楽しみたい気持ちと…
という、少年から青年、大人へと変化していく過渡期が描かれています。
自分自身のことを分からなかったり。
ふとした時、冷めた考え方をしてみたり。
とあるきっかけで、自分にとって物凄い出会いであったり。
「あ、いいなぁ。」「あ、好きだなぁ」って突然思ったり。
他人との距離、身内との距離を頭じゃなくて身体で感じるような、
そういう多感な時期なんだな。。思春期って。
(思春期、と一言でまとめるのもなんだか嫌なのですが。。)
佐藤さんの本を読むたびに思うのですが、
この方は、本当に取材をしてから書く作家さんなんだなぁ、、と。
(あとがきにもご自身でおっしゃっていました。)
「しゃべれども、しゃべれども」然り。
「一瞬の風になれ」然り。
今回も、聖書やオルガンに関しての知識や情報が本当に沢山載っていました。
私にとって、聖書は馴染みのうすいものであり、
オルガンも、電子オルガン、リードオルガン、パイプオルガン…など、
種類も音の出る性質も異なるようですし、
さらに音楽家の知識(かろうじで、ピアノ作曲者は分かる)も色々出てきて。。。(笑)
でも、引用されていた音楽、色々聴いてみたいとも思いました。
その辺りが丁寧に書かれている上、
読み手が読んでいて音の響きや音楽をイメージできるって、単純にすごいな、と。笑
私は10年近くピアノを習っていましたが、
当初はピアノを、音を、音楽を楽しんでいたのかな。
…練習に対してあまり真面目ではなかった気がします。。(>_<)
そして、辞めてしまった今では、もう1曲も弾けなくなってしまいました。
色々な気持ちが音になって流れ出るような作品です。 -
神様はいるのか、信じる者は救われるのか。
神父の父、オルガニストの母、
純正のキリスト教徒な息子ができあがる・・・かと思いきや、
母は、別の男性と外国へ。
主人公にとって、音楽は=母なんだ。
信じたい、だけど信じたくない、
好きでしかたないけど、それを肯定することは、
母の行為を認めることになってしまう。
こんなの、子どもの頭じゃ無理。
どんなに冷めた子だって。
そして、それをいとも簡単に認めているように見える父を
受け入れることができないのも、当然。
そして、父はまた=信仰なのだ。
だから、主人公は信仰に対して懐疑的。
父は神ではないのに。
母も神ではない。
音楽でもない。
ただの人間なんだ。
自分と同じ、悩んで間違えて苦悩する、人間なんだ。
親や、子どもや、先生、尊敬するあの人たちも、
ただの人間だと思えるようになったら、
きっとオトナなんだろう。 -
「第二音楽室」とシリーズ作品。こちらは牧師の父とオルガンを弾く母を持つ男子高校生が主人公で、わりと心理描写が楽?というか読みやすかった。やはり音楽やらない者からすると、演奏や音楽の描写が、音に関われるといいなと思った。装丁がかわいい。
中学生の推薦図書と知り少々驚き。 -
高2の男の子が主人公の、神様と学校と音楽のお話。
こう言うとファンタジーみたいな聞こえになりますが、
そういうことではないです(笑)
牧師とか和尚さんとかの子供に生まれると、
色々な葛藤があるのだなぁと
そういうことでもないんだけれど(笑)
完璧な人のそばにいるというのは
自分が完璧でないことが残酷なほどよく分かって
とてもつらいのよね。
そういうこt(ry
楽器としては「オルガン」が主に扱われていて、
キリスト教の私立学校で「オルガン部」が活動している、というやつで
無宗教で学校も私立とかじゃない私には新鮮でした。
みんなの弾くオルガンの音が聞こえるようなお話。
母との今後が気になります。 -
ぱっと目について借りた本。
絵がすごくかわいい!
刺繍にしたらすごくいいだろうな。
コピーとっとこうかな。
これ課題図書だったんだね。
それらしく、
毒気のない作品だったけど、
佐藤多佳子の語り口で描かれる葛藤は、やっぱり、いいね。 -
音楽と宗教が絡んで、さらに母との思い出まで。
音楽家って、内に秘めた思いで表現するのだなぁと改めて思った。