ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争 下

  • 文藝春秋
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163718200

作品紹介・あらすじ

野望と虚飾のかけひきの向こうで、兵士たちは死んでいく。戦場の現実を見ようとしないそれぞれの上司に苛立ちをつのらせる両軍の指揮官、リッジウェイと彭徳懐。右傾化の国内政治の嵐のなかでマッカーサーを切れないトルーマン政権。スターリンに疎まれる自主独立の中国共産党と毛沢東。巨人たちが激突する!スターリンが、金日成が、トルーマンが、マッカーサーが、毛沢東が、そして凍土に消えた名もなき兵士たちが、血の肉声をもって語るあの戦争-。

感想・レビュー・書評

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  • 20190601 下京図書館

  • ベトナム戦争を扱った「ベスト・アンド・ブライテスト」で有名な著者の朝鮮戦争についての著作。この著作のゲラ刷りに手を入れた後に交通事故で亡くなったという。最後の著作だ。雲山(운산)まで進出した米軍は、1950年11月に鴨緑江(압록강)を越えて攻撃してくる中国軍と衝突したとの記述で始まる。朝鮮戦争開始時点からの時系列ではなく、時期の前後があるので読んでいて戸惑うときもあるが、ワシントン、北京、モスクワ、東京などでの軍人、政治家達の立ち位置、考え、声も拾い、立体的に朝鮮戦争の流れを把握できるように記述している。下巻は、三十八度線を越えて北に進軍した国連軍が中国軍の参入で押し戻された時期から始まる。マッカーサーが誰の意見も聞かず、見たくない情報は幕僚が挙げず、皇帝のように振舞ったあげく、米軍は凍てつく山河で中国軍と死闘を交えた。多くの人のインタービューからその当時の戦闘場面を浮き上がらせている。朝鮮戦争での失敗に米国はベトナムでも、イラクでも、学んでいないのだろうか。

  • 訳が残念

  • 不思議な本です、朝鮮半島で戦われた戦争の筈ですがそこに住む人は全く影も形も有りません。
    朝鮮戦争でのトルーマンとマッカーサーの軋轢に付いては理解出来、戦後の日本人の思ってるマッカーサーとは違う彼の別の面が見る事が出来ます。
    でもそこで苦しむ一般の人達や亡くなった朝鮮の人達は全く影も形も見当たりません、その後の歴史が大きく変わった中国の参戦に付いては出て来ますが、戦いで死んだ人達も単なる数で中国兵何千人米国兵何百人と個別の戦いでの死者や負傷者は出てきますが、後は上級司令部のいい加減な作戦で勇敢に戦った米国兵が出てくるだけです。
    ベストセラーになった本の様ですが、この本を読むと米国のこの後のベトナムからイラクまで続く戦争の米国の係わり方が見えてくる気がします。
    そこに住む人達の為ではなく自分達の利益の為に、それは直接的なものだけではなく勝手に歴史的と解釈するものまで、情報を操作し自分達の都合に合わせて解釈する。
    朝鮮戦争から冷戦が終わってもまだ戦争と軍隊で繁栄を待ち望む不思議な国の有り様が見えてきます。
    米国に住む人達のかなりの部分と政権に巣くう人達にとっては朝鮮もベトナムもイラクも遥か遠い国でそのこに住む人達は全く関心も無く、そこから自分達がどれだけ利益を有る事が出来るか、自分達の国の若者の死傷者をどれだけ少なくするかだけが関心事なのでしょう。

  • すべての戦争は、なんらかの意味で、誤算の産物かも知れない。あの戦争から60年の歳月、遥かなり朝鮮半島。当時、中国は毛沢東、ソ連はスターリン、北朝鮮に金日成、米国はトルーマン、そして東京にはダグラスマッカーサーが居た戦い。世界大戦後、初めて本格的にアジア戦われた米国の戦争。 朝鮮→ベトナム→イラク→アフガン へと続くアメリカの戦いの一つの原点、朝鮮戦争であります。 ハルバースタムの遺作、読み応えあり。

  • 上巻に引き続き、一気に楽しませてもらった。中国兵目線の挿話が無く、あくまでアメリカ兵目線で話が進む本なので、次は逆の観点から朝鮮戦争を描いた本を探してみたい。
    個人的には巻末の後書きや解説が充実しているのが嬉しい。ハルバースタムの著作をまたたどってみたくなる。

  • 共産主義国家のアジアにおける台頭を抑えるというアメリカの大義名分で始まった戦争が、いつしかエウリピデスのいう「神々は滅ぼそうとするものを先ず狂わせる」、そのマッカーサーの狂気と彼に追従する政治家が朝鮮戦争を泥沼化していったのだ。 ソ連はアメリカの参戦はないとの誤算により、金日成に南への侵攻を促し、アメリカは中国は参戦しないという確信のもと鴨緑江まで進撃、毛沢東は兵士の政治的純粋さと革命精神がアメリカ軍の兵器の優位より重要と信じ、損害を膨らませた。ここには理性のかけらもない。唯々悲劇あるのみ。

  •  アメリカの著名なジャーナリスト、ハルバースタムが、忘れられた戦争である朝鮮戦争を徹底取材でまとめあげる。ハルバースタムはこの本の完成直後に交通事故で亡くなっていて、遺作となる。

     「巨人たちが激突する」のキャッチフレーズ通り、マッカーサー、トルーマン、毛沢東、スターリン、金日成などなど、これでもかというくらい歴史上の大物が出てくる。アメリカと中国という大国同士が直接ぶつかった最後の戦争である朝鮮戦争という舞台は、ハリウッド超大作の様なボリューム感を持っている。
     この本のいい所はその巨人達の政治闘争に終わらないところだ。多くの元兵士の証言を基にして、リアルな朝鮮戦争の激戦の様子も書かれている。
     朝鮮戦争はたくさんの誤算や慢心、虚栄心があったからこそ起こったものだ。そのしわ寄せは現場の兵士達の命によって埋め合わされてしまう。この本から組織やリーダーについて学ぶことは多い。
     作者は朝鮮戦争は上記の理由で起こったと考えているからか、このストーリーはマッカーサー解任を最後のヤマ場として終わりを迎える。しかし、作者や多くの元兵士達は朝鮮戦争に一定の意味があったと信じている。朝鮮戦争以降、直接的な戦争が起きなかったのは、確かに米軍が中国軍の進行を跳ね返したからかもしれない。もちろんこれは共産圏側にも言えることだ。

     戦後史を語る上で外せない、読み応え抜群の最高のノンフィクション。
     厚くて大変という人は、米中が直接衝突する下巻から読んでみるのもいいかもしれない。

  • トルーマンにマッカーサー、毛沢東、金日成、スターリン。上巻で主要な

    役者が出揃った。それにしても上巻は読みにくかったな。翻訳のせいも

    あるのだろうが。

    朝鮮戦争は実質、アメリカvs共産中国の戦いだった。しかし、両軍共に

    機能不全に陥って行く。

    アメリカ側の原因は朝鮮へ足を運ぶことのなかった最高司令官・

    マッカーサーだ。本書は「マッカーサー物語」と言っても過言ではない。

    数々の戦いで大いなる功績を上げた高齢の将軍も、その威光は仁川

    上陸作戦までだった。

    「クリスマスまでには帰国できる」。兵士たちはそう聞かされて朝鮮半島

    に赴いた。だが、そこで待ち受けていたのは中国共産軍の人海戦術と、

    朝鮮半島の過酷な寒さだった。

    誰もが成功に疑問を持った仁川上陸作戦を成功させたマッカーサー

    ではあったが、現場指揮権の分割と、中国参戦せずの予想が裏切

    られ、現場の兵士たちはより激しい戦闘にさらされ、ワシントンは

    政治的発言が増えて行く将軍に対して不信感を抱く。

    ワシントンの言うことにも、統合参謀本部の言うことにも耳を貸さず、

    自分を崇拝する者で周囲を固めた老将軍は、占領下の東京・第一

    生命ビルに独自の帝国を作り上げた。

    戦時の軍隊を機能不全に陥らせたのはマッカーサーだけではない。

    共産中国の毛沢東もマッカーサーに引けを取らない。しか、片や

    一将軍、片や共産中国の最高指導者。マッカーサーは最高司令官

    解任という失脚の運命にあったが、毛沢東は逆に現場の指揮官を

    自分に歯向かったとして、後に粛清する。

    マッカーサーに限らず、中国軍の猛烈な攻撃に晒された際のアメリカ軍

    には人種差別に根差したアジア人蔑視もあっただろう。「自分たちは

    アジアの野蛮人たちの救世主だ」。これは朝鮮戦争だけに限らない。

    後のインドシナでの泥沼に足を突っ込んだ時にも、アメリカにはそんな

    考えがあったのではないか。

    そして、第二次世界大戦後の日本占領の成功がアメリカを、ひいては

    マッカーサーを勘違いさせたのではないだろうか。

    中国も、朝鮮半島も、それまで世界の列強(勿論、日本も含む)に支配

    されて来た植民地であった。そんな土地で、新たな支配を確立させよう

    としても反発を食らうだけだったろう。

    その勘違いは、今もアメリカが絡んだ戦争で既視感のように繰り返され

    ているのではないかと思う。

    著者は本書のゲラに最後の手を入れた5日後に交通事故で亡くなって

    いる。本当に絶筆になってしまった作品だ。翻訳の読みにくさを差し引

    いても◎な良書なのだが、当時の韓国大統領の姿がまったく見えて

    来ないのが気になる。




    いくらボンクラとは言え、もうちょっと触れられてもよかったのではないか。

  • 「ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争」読了。この本を読むことによって、これまで私が抱いていた朝鮮戦争観やその戦争の指導者達へのイメージが音を立てて崩れていったというのが正直な感想です。
    今まで私が知っていたことといえば戦争の推移だけであり、関係者たちが何故その決断を下したのか、その決断をするに至るまでのプロセスや決定者の人間性といったものが徹底した当事者に対するインタビューにより得られた豊富なエピソードたちによって明らかにされていったときの驚きは想像を超えたものでした。
    この戦争は「まさに軍事司令官のもっとも基本的な教義を適用しなかった典型的な事例だった。その教義とは、汝の敵を知れ、ということ」という米軍パイロットの言葉が何故ここまでの苦戦を強いられたのかを端的に表しているように思えます。前線の現実を司令部がねじまげ、その現実をもとに作戦を策定したこと。種々の偏見から敵を侮り慎重に行動しなかったことなど、敵を各種のフィルター越しにしか見ずにいたこと、敵の真の姿を見ようとしなかったこと、自分たちの見たい現実しか見ようとしなかったことが最大の原因なのではないかと私は考えます

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