名著講義

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163720203

感想・レビュー・書評

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  • 著者の藤原氏はお茶の水女子大の名誉教授。読んでいるときは、ずっと藤原先生の読書ゼミに参加している学生のような気分でした。
    内容は、内村鑑三・新渡戸稲造・福沢諭吉・宮本常一・山川菊栄など、現代の若者からは敬遠されがちな作家の本を取り上げ、それについて藤原先生と学生との意見交換が中心。「日本人」をとり理解するための名著はたくさんあっても、このような藤原先生の解説がないと深い理解は難しいかも。

  • とあるラジオ番組で著者が話されていたのをきっかけに読んでみる。お茶の水女子大での読書ゼミの様子をまとめたものなのですが、取り上げられる本は、今までの偏った読書生活の中では到底たどりつかないものばかり。明治前後の本が多いのは、変革期にあって外国からの視点も取り入れられていることと、敗戦後の歪められた教育を受けていない世代だからとのこと。(今の70歳以降の世代はみんな歪められているそうな)日本人としての美しさ、意識や誇りを再発見できるものが多いようです。グローバル化と市場原理主義の名の下に日本人としての良さが失われていくことは本末転倒で、真の国際人とは自国を知ることによって成り立つと主張する著者は、ざっくばらんなおじさんと言う感じで、親しみを感じると共に、喝を入れられるようで元気が沸いてきます。こんな講義を学生の時に受けられるとは、なんて羨ましい。家族愛、郷土愛なくして人類愛なし!でも本当に言いたかったのは、自分の頭で考えられるようにすること。そのためには、人の話を鵜呑みにするのではなく(自ら「特に大学の教授」と言ってます。笑)本を読み自分で考えることでしか培われない。う〜ん、耳が痛い。まず、取り上げられている本、読んでみよう。

  • 藤原センセイ節炸裂!週イチで1冊の課題図書を読んで、内容について藤原教授ゼミで話し合う様子を収録。『武士道』をはじめとする、明治期のものが多く、外国かぶれ以前、戦争以前の、“確固たる日本”をたっぷり味わわせてくれ、日本人であることの自信や誇りを持たせてくれる本が多い。それに藤原センセイの講義というか絶叫がつくのだから、もうよそ見をしてる暇なく、日本が大好きになっていく学生の様子がよくわかる(笑)それにしても週1冊。しかもただ読んでおしまいなわけじゃなく、センセイのツッコミにもこたえられるだけ、ちゃんと内容を咀嚼し、自分なりのモノにしなくては、とてもゼミには参加できない。恐ろしいゼミだ。でももしもチャンスがあったなら私も参加してみたい。たぶんトイレでも電車の中でも、休憩時間も、ご飯を食べてる間も、お風呂の時間もすべて費やしても追いつくのは辛いだろうけど。でもそれくらい自分を追い込んでみたい気もするのだ。

  • 藤原先生の読書ゼミ、とてもハードそうですが、大学生となったからには、これくらいの充実した講義を受けたいものです。
    このゼミを受けた学生が羨ましいです。

  • 「最終講義」読んで打ちのめされましたねぇ。そもそもの知的能力が違う。やっぱり人間は不平等だよ。その不平等な人間がそれを受け入れ、能力のある者は門閥、生まれを問わず力を発揮させ、そうでない者も己の出来うる限りのことをする。上に立つからと言ってと冨を蓄えるわけではなく、貧しくとも安心してのんきで美しいものを愛でる生活が出来る。そんな江戸、明治の生活にあこがれる若い女性達。素敵です。お茶大とはいえ女子大は人気が低迷しているそうですから、大学としても「産学連携」で良い宣伝になりましたね(笑)うちの草食男子は「うさぎ」の詩にかなりショックを受けております。元気なお嬢さん達にとても太刀打ちできそうにありません。男の子には母親の影響が大きいとおっしゃいますが藤原先生、どうしたもんでしょう?

  • (2010.01.27読了)(2010.01.20借入)
    藤原さんの本は、「若き数学者のアメリカ」を読んで以来大体は読んできましたので、読書ゼミのことはエッセイの中で何度か読みました。
    今回の本は、その読書ゼミの様子を録音し、活字にしたものです。
    お茶の水女子大学で、藤原さんが10数年にわたって実施してきた読書ゼミは、受講条件が以下の二つです。
    一、受講者は毎週一冊の文庫を読む根性があること
    二、受講者は毎週一冊の文庫を買う財力があること
    学生は毎週藤原さんが指示した一冊の文庫を読み、翌週それに関するレポートを提出し、授業中はディスカッションをする。
    ゼミの狙いは、「生まれて18,9年間、ありとあらゆる偏見でもみくちゃになった学生達に、主に明治期の偉人を通し、日本人としての生き方や考え方に触れさせたい」ということと「日本人の原点にいささかでも触れると同時に、「時代の常識」からいったん退き自分自身の頭で考えるという習慣をつけて欲しい」ということです。
    取り上げられている本は、以下の11冊です。(☆は、僕も読んだ)
    ☆新渡戸稲造「武士道」岩波文庫
    ☆内村鑑三「余は如何にして基督信徒となりし乎」岩波文庫
    福沢諭吉「学問のすゝめ」岩波文庫
    日本戦没学生記念会編「新版きけわだつみのこえ」岩波文庫
    ☆渡辺京二「逝きし世の面影」平凡社ライブラリー
    山川菊栄「武家の女性」岩波文庫
    ☆内村鑑三「代表的日本人」岩波文庫
    無着成恭編「山びこ学校」岩波文庫
    ☆宮本常一「忘れられた日本人」岩波文庫
    キャサリン・サンソム「東京に暮らす」岩波文庫
    福沢諭吉「福翁自伝」岩波文庫

    「古風堂々数学者」で基礎ゼミとして紹介していたときに含まれていた、鈴木大拙「日本的霊性」(岩波文庫)、モラエス「日本精神」(講談社学術文庫)が抜けて、「新版きけわだつみのこえ」、「山びこ学校」等が入っています。(明治期という枠を外したのでしょう)

    ●「武士道」
    「現代人の悩みというものの多くが自由から生まれているんですよ。何を選択してもいいといわれると、人間はどうしていいのか分からなくなって悩む。」
    「選択肢が多いときに、決断の基準として必要になってくるのが「軸」なんです。キリスト教には、その行為によって自分が神に救われるかどうかという明確な軸がある。」
    ●「余は如何にして基督信徒となりし乎」
    「アメリカの金銭崇拝は、永遠になくならないでしょう。そして今は、この金儲けを正当化する考え方がアメリカからどんどん発信されています。すなわちすべての規制を取り払い、神の手が導く市場に何もかも任せ、自由に競争しどんどん儲けようという新自由主義が世界でまかり通っています。規制緩和、構造改革、小さな政府、グローバリズムなど、すべて新自由主義が生んだものです。」
    ●「学問のすゝめ」
    「「学問」には、「すぐ使えるもの」と「いつか使えるかもしれないもの」の二つがあります。読み書きや四則の計算はすぐ使えますが、二次方程式の解の公式、オームの法則、古代史や中世史、古文や漢文などは多くの人にとって実生活で使うチャンスが一度もないかもしれません。しかし「すぐ使えるもの」しか勉強しないとしたら、将来の可能性が著しく限定されてしまいます。思考や情緒の幅が広がらず、従って視野も狭窄してしまいます。」
    「人間としての基礎もないのに、教育にゆとりを与えるという考え方そのものが、間違っています。小学校では、人間としての基礎である読み書き計算を強制的でも画一的でもよいから徹底的に叩き込まなくてはいけない。諭吉の言う実額主義も、これに当たります。」
    ●「新版きけわだつみのこえ」
    「この本を取り上げるにあたり、いつも多少の躊躇を感じてしまう。編者の一人、仏文学の渡辺一夫氏が冒頭で、戦争謳歌に近いような手紙は採録されなかったと証言しているからである。その上、手紙文の一部削除が編者により意図的に行われたというけしからぬ噂もあったからである。」
    ●「逝きし世の面影」
    日米修好通商条約を結んだタウンゼント・ハリスはこう言いました。
    「一見したところ、富者も貧者もない。これがおそらく人民の本当の幸福の姿というものだろう。私は時として、日本を開国して外国の影響を受けさせることが、果たしてこの人々の普遍的な幸福を増進する所以であるかどうか、疑わしくなる。私は質素と正直の黄金時代を、いずれの他の国におけるよりも多く日本において見出す。」
    ●「武家の女性」
    「懐剣はいざという時に自害するためというより、武士の娘としての気迫を持つためのものだったのです。」
    ●「東京に暮らす」
    「「うつ病になる人も少ない」という記述は、残念ながら今は当てはまりません。家族やコミュニティの絆を失った人々にとって、自由選択、自己責任、競争社会といったものは大変な重荷だからです。絆を断ちきると自由が得られます。家族を捨て個人主義に走ると自由が得られます。その反作用が不安、孤独そしてそこはかとない精神の疲労です。」

    ◆藤原 正彦の本(既読)
    「若き数学者のアメリカ」藤原正彦著、新潮社、1977.11.20
    「数学者の言葉では」藤原正彦著、新潮社、1981.05.20
    「父の旅 私の旅」藤原正彦著、新潮社、1987.07.05
    「遥かなるケンブリッジ」藤原正彦著、新潮社、1991.10.15
    「父の威厳」藤原正彦著、講談社、1994.06.27
    「心は孤独な数学者」藤原正彦著、新潮社、1997.10.30
    「古風堂々数学者」藤原正彦著、講談社、2000.06.15
    「天才の栄光と挫折」藤原正彦著、NHK人間講座、2001.08.01
    「世にも美しい数学入門」藤原正彦・小川洋子共著、ちくまプリマー新書、2005.04.10
    「国家の品格」藤原正彦著、新潮新書、2005.11.20
    「祖国とは国語」藤原正彦著、新潮社、2006.01.01
    「世にも美しい日本語入門」安野光雅・藤原正彦共著、ちくまプリマー新書、2006.01.10
    「名著講義」藤原正彦著、文藝春秋、2009.12.10
    (2010年1月31日・記)

  • 「若き数学者のアメリカ」で知られるお茶の水大学の数学者藤原先生の本.
    内容は,同大学の教養科目ー先生と生徒が本を読み,議論するーの内容を対談形式で書かれている.

    藤原先生と言えば,現代のマネタリズムからの脱却を主張しているが,生徒にもその心を啓蒙したいのか,課題図書は明治から昭和の生活・風俗・生き方を書かれている図書が多い.

    本を読んだ生徒の心の変化が読んだ後と前で,一転する(しているように見える)のが現代の学生なんだなぁ・・・と思った.

    明治の人は現代よりも物質的な豊かさは無いと思っていたが,本を読んでみると,現代よりも生き生きしているように思いました.

    とか.

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著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2020年 『本屋を守れ 読書とは国力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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