清貧と復興 土光敏夫100の言葉

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163744506

作品紹介・あらすじ

戦後復興に全力を尽くし、高度経済成長を駆け抜け、晩年は国家再建に命を燃やした。私生活では贅沢を嫌い、社長時代も生活費は月3万円。今こそ「メザシの土光さん」の話を聞こう。

感想・レビュー・書評

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  • メザシの土光さん。名前しか知らないかったけれどすごい人だ。ビジネス小説の先駆け(合ってるのか?)城山三郎は彼をこう評した。「一瞬一瞬にすべてを賭ける、という生き方の迫力。それが八十年も積り積ると、極上の特別天然記念物でも見る思いがする」。
    著者は報道ステーションニュースデスク所属。報道ステーションで浅野総一郎をまとめた「九転十起」を紹介していたが、そちらでなく土光さんについての著を手に取ってしまった。

    ・2ヶ月で復旧したIHI福島・相馬工場(半年から1年はかかると言われた)。
    久野(総務部長)は「従業員を安心させないと、復興が進まない。家が流された従業員全員に社宅を用意した」と語った。

    ・ボクらの生活は毎日が行き詰まりだ。行き詰まらん方がおかしい。前に進んでいれば必ず行き詰まる。「壁を毎日破れ」といったら「私には壁がありません」という人がいた。「そうか、ないか。君は座っているじゃあないか。立って歩いてみろよ。四畳半だろうと六畳だろうと、立ってあるけば、壁にすぐにぶつかる」といったんだ。

    ・私たちは、ごくわずかだが、“火種のような人”がいることを知っている。自ら、カッカッと人発し燃えている人だ。その人のそばにいると、火花がふりかかり、熱気が伝わってくるような感じを受ける。
    実は、職場や仕事をグイグイ引っ張っているのは、そんな人だ。そうして、まわりの人たちに、火をつけ燃えあがらせているのも、そんな人だ。しかし、誰にも皆、火種はある。必ずある。他の人から、もらい火するようではなさけない。自分の火種には自分で火をつけて燃えあがらせよう。

    ・「新しい朝」という時間は、非常に大きな意味を持っている。過去の歴史上の人物―エジソンもナポレオンも、信長や家康も、どんなに偉かった人でも今日の日の出を見ることはできない。
    …「日に新たに、日々に新たなり」一つだけ座右の銘をあげろといわれれば、躊躇なくこのことばをあげたい。中国・商(殷)時代の湯王が言い出した言葉で、「今日なら今日という日は、天地開闢以来はじめて訪れた日である。それも貧乏人にも王様にも、みな平等にやってくる。そんな大事な一日だから、もっとも有意義にすごさなければならない。そのためには、今日の行いは昨日より新しくよくなり、明日の行いは今日よりもさらに新しくよくなるように修養に心がけるべきである」という意味。湯王は、これを顔を洗う盤に彫り付け、毎朝、自戒したという。

    ・そうした世相に登美は危機感を持ち、「国の滅びるは悪によらずしてその愚による」と言っていた。

    ・玄関前には登美の信念である「正しきものは強くあれ」という石碑が立っている。

    ・幹部の持つ情報は、とかく単色になりがちだ。本来の情報は天然色なのだが、上に昇って来る間にアク抜きされてしまう。そんな薄まり弱まった情報に基づいて、間違った判断をしていたら大変だ。単色情報を天然色情報にもどすには、自らの足で現場を歩き、自らの目で現場を見ることだ。

    ・幹部が偉い人であるゆえんは、一にかかって、上に立つほどより大きく思い責任を負う人であるからだ。幹部は権限もあるが、これは振り回さないほうがよい。できるだけ委譲するほうがよい。そうすると残るのは、責任ばかりだ。…だから経営者や幹部は、ほんとうはつらい人なのである。割に合わない商売なのだ。

    ・その取引は、二、三十万円のものだった。これぐらいの値段のものを、わざわざ社長が売り込みにくるとは思わなかったらしい。彼は恐縮して、「次回からも是非、東芝の製品を購入しますが、それには条件がある。社長自らは絶対に来ないこと」というのであった。…このような私の行動を「土光突撃体制」などと、世間では読んだようだが、私は“社長セールス”は石川島時代からやっていたことだ。しかも、突然、秘書から、「きょうは何々会社の社長に会って、何々のセールスをやって下さい、スケジュールは組んであります」と言われ、のこのこ出かけるわけである。このような事態は、部下からのチャレンジなのだから、私は黙ってレスポンスするのである。

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    土光さんの思想

  • つまり、この時代に最も求められる人ということか。

    この時代に限ったことではないが。

    「無私の人」「メザシの土光さん」と呼ばれた傑物。

    その面構えはなんとも言えず、格好いい。

    決して孫さんや柳井さんが(ホリエモンや三木谷氏は置いといて)ダメなんということはないのだが、やはり比べてしまうと何枚か落ちる感じ。

    数多ある土光敏夫関連の書物から、その語録を100に厳選して抜き出し、時代背景などを交えてまとめた良書。

    未曾有の不況と東日本大震災及び原発禍の今、原発を引っ張ってきた立役者として、泉下でさぞかしお怒りのことと思われる。

    信頼出来る人に指示を出し、常に「全責任は俺がとる」と言ってきた人だ。

    土光敏夫、一本通った太い筋がブレないということにおいては、最強。

    良く「頑固」という言葉を形容詞として使う。

    これは「頑迷固陋」の略だと考えているのだが、どうだろうか。
    で、あれば、良く逆説的な褒め言葉として使われるのはおかしい。

    だが、「頑迷固陋」から「迷」と「陋」を外した意味であると考えられるのであれば、それはそれで良いとも思う。

    ここではポジティブな意味としよう。

    鉄人の様な”頑固”さだ。

    決して頑迷固陋ではない。それどころか、その全くの反対側にいた人。

    進取の気性に富み常に率先垂範、労使交渉ではガンガンにやりあうがあくまでも労働者の味方。

    そして、超フェミニストでもある。(ここがいい。おそらく、尊敬する母を見ていたからだろう。)

    やはり、頑固というのは当てはまらないかもしれない。ポリシー自体は曲げないが、新しいことはどんどん取り入れ、方法論的にも常に新機軸なものを推進する。

    良く、「政財界」という言い方をするが、財界に身を置きながら、政治家嫌いを公言しまくった。

    田中角栄を「コンピュータ付ブルドーザー」と呼んでいたが、それはむしろこちらに当てはまるのではないだろうか。

    この本に記載されているような発表されていることを全て鵜呑みにはしないまでも、大きく外れることはないだろう。

    この人の人生を歩めるかというと、絶対にムリだし、歩みたいとも・・・思わない。と、敢えて言っておこう。

    仕事が趣味というか、仕事が全ての91年の生涯だったらしい。

    尊敬に値する方であることは論を俟たないが、価値観を共有することはできない。

    美食を楽しみたいわけではない。しかし、土光さんの「老後をブラジルに渡って夫婦でのんびりと畑仕事でもしたい」という最後のあまりにもささやかすぎる夢すら叶えることはできなかった。

    これはあまりにも悲しい。

    終章にまとめられた「土光敏夫のDNA」は感動的であり、先述のの大不況と天災(人災)に打ち勝っていかなければいけない現在に一筋の光明をみる思いである。

  • いまだに、土光イズムが工場に
    根付いているのが希望と感じました。

    実行力と実践力が伴うからこそ
    その方の言葉に重みが増すのだと思います。

    自分の周りにそのような方がいるのか?
    探してみようと思いました。

    一つ一つの言葉に重みがあるので、
    また、読み返したくなる内容です。

  • ・すごい経営者であり、人間的にも立派な人である。
    ・質素な生活、食事、宴会にはいかない、無駄な経費は使わない。
    ・人間関係を維持するのに夜の接待は不要。
    ・努力、実行力、あきらめない、説得力、等々
    ・人間的な弱みを見せない、隙をみせない。
    ・従業員を解雇しない。
    ・東芝に社長として赴任した初日に労組事務所に挨拶、お酒を持参。
    ・労組との信頼関係を重視。
    ・亡くなってから誇張された部分もあるだろうが、今の時代にこのような人はいないだろう。

  • すごく刺激される一冊。やはり、こういう人物がいたことと、その意識と行動を受け継ぐ気概が必要と考えさせらます。

  • オーディオブックにて視聴

    石川島(後に石川島播磨)重工業、東芝のトップとして辣腕を振るい、経団連会長、臨時行政調査会会長など日本経済及び日本政府の財政の立て直しに東奔西走したメザシの土光さんの名言集。

    ひと言で言えば、無私無欲の人であり、最低限生活が出来るお金だけを手元に残しては、残りを全て母親が設立し、自身が引き継いだ橘学苑に全て寄付していたという。常に現場で働く人を最も尊重するという姿勢を取り続け、社長時代も現場からは「親父親父」と慕われたという。その上、政治との癒着を嫌い、経団連会長時代も政治家からは常に距離を置いていた。

    正直、土光敏夫という人物が、経団連会長でありながら、実に質素な生活を送っていたということぐらいしか知らなかったのだけど・・もう、知れば知るほど土光敏夫のファンになっていった。

    人はこれ程までに崇高な人になれるのだろうか、と途方にくれたくなるほどに崇高な生き方をしている。そこで語られる言葉は、正論中の正論で、時に「正論だけでは物事は通らない」と人が正論を通すことを諦めるような場面でも、土光さんは正論を馬鹿正直に語る。

    僕は到底土光さんの様には生きられないだろうけど、それでも少しでもそちらに近づけたらいいなと思う。

    人として成熟するということはどういうことか、1本筋の通った人生とはどういう物か。ただの机上の空論ではない、土光さんの生き様という確かな証拠が、雄弁にこれらを説明してくれる。

    今後とも、土光さんに関連する本はなるべく目を通して生きたいし、この本(オーディオブック)も折に触れて読み返したい。

  • この本が良いとか悪いとかでなく(きっと良いのだろうが)、
    土光敏夫という人が立派な方だ。

    今度家のあった辺りに行ってみよう。

    [more]
    (目次)
    序章 「清貧と改革」の“聖地”取り壊し
    第1章 底辺からの出発
    第2章 復興と企業再生への執念
    第3章 原発と日本の技術力
    第4章 田中角栄との「決闘」
    第5章 清貧と臨調
    第6章 わが師、石坂泰三の教え
    第7章 城山三郎と語る
    終章 「土光敏夫」のDNA

  • 誠実、正直、勤勉。石川島、東芝の社長、経団連会長、そして臨調会長として辣腕を振るった土光敏夫。財界の大物であったにも関わらず、生活は極めて質素であったことは彼の代名詞ともなっている。彼が残した言葉に、著者がエピソードを交えたり現代との対比などをしたながら解説するスタイルで本書は構成されている。

    書中後半の田中角栄を一喝し、中曽根官房長官に依願されて臨調会長就任に至るまでのあたりが個人的には一番面白かった。しかし、土光が行政改革を目的とした臨調において問題視していたのは、補助金漬けの農業や高齢者の医療費問題などであり、81年に土光氏が就任以降33年も経った今でも同じ問題を抱えている日本の現状に絶望感すら覚える。

    著者は、巻末に現代の土光として日本電産の永森氏、コマツの坂根氏などを挙げている。土光とおなじく、誠実、正直、勤勉でかつ倹約質素な彼らは、現代の日本には数少ないリーダーかもしれない。一方で、カルロスゴーンは日産自動車でトヨタの利益を始めて上回り、年俸は10億を超えたことが最近話題になっている。 日本人には土光タイプの方が一般受けがしやすい野かもしれないが、問題の本質は結果を出すリーダーが必要だということである。高収入のプロフェッショナルを排除し、誠実、正直、勤勉、質素だけのリーダーのみを受け入れるという風土は社会主義と隣り合わせである。正義感や使命感を動機にするタイプの人材もいれば、社会的な尊厳を動機にするタイプ、達成感、高額報酬など色々なタイプが存在する。時代や場面に応じて求められるリーダー像も多様であるが故に、土光のような経営者や政治家が少ないから日本はダメなのだという理論は飛躍し過ぎだと思う。

  • 土光さん関連の書籍、これで5冊読破!う〜ん、やっぱり素晴らしい経営者だ。こんな方になりたい!

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著者プロフィール

1964年、富山県高岡市生まれ。ジャーナリスト。90年、時事通信社入社。NY特派員などを経て、2001年、テレビ朝日入社。経済部、「報道ステーション」デスクを経て、現在は「グッド! モーニング」ニュースデスク。テレビ局に勤務しながら、2011年から本格的に著作活動を開始。著書に『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』『景気を仕掛けた男「丸井」創業者・青井忠治』『日本への遺言地域再生の神様《豊重哲郎》が起こした奇跡』(いずれも幻冬舎)などがある。

「2019年 『現場発! ニッポン再興』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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