毛沢東 大躍進秘録

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (591ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163748603

作品紹介・あらすじ

当時若い学徒として、養父が餓死したにもかかわらず、「大躍進」の理想を信じた著者。89年の天安門事件を契機に、新華社記者の特権をいかし、中国17省の公文書館の内部文書や当時の幹部らへの取材を重ねて、浮かび上がってきたものは、毛沢東の独裁とそれに追随する官僚機構の、悲惨なる失敗であった。各省ごとの被害の差はどこから生じたのか。失政に抵抗する勢力はなぜ、潰されたのか。飢餓の最中にも、海外への食糧輸出が続いていたのはなぜか。毛沢東は悲劇をいつ知ったのか。周恩来、〓(とう)小平、劉少奇、彭徳懐、林彪ら建国以来の幹部たちは、どう動き、何を発言したのか。現実を重視する「実務派」と左派政策をテコに独裁体制を築こうとする毛沢東との間で振り子のようにゆれた共産中国の現代史。その「権力闘争」のなかで今日まで続く中国の国の形が形成されていったことを鮮やかに描き出す第一級の歴史書。

感想・レビュー・書評

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  • 恐ろしい。それこそ、1984の真理省よりも恐ろしい体制をこの世に実現した毛沢東。人民に反乱を起こさせることなく、3600万人を餓死させるなんてそうそうできない。毛皇帝の権威と自己批判によるマインドコントロールがカギなのか。
    結局のところ、トップの人間性の問題に帰着する。お天道さまに照らして自らの行いは正しいか、を問う発想が毛皇帝にないのだろう。こういう暴君を上に祭り上げてしまうところは国民性としか言いようがないのかも。農奴が多かったロシアも同じ類。
    習皇帝がこれから何をするのか、隣国として注視せねばなるまい。(そう、皇帝として理解するのが正しいと思う)

  • 全部をちゃんと読んだわけではありません。
    でも、強大な専制体制が実現することなどできない理想を掲げてしまうと場合には愚かな間違いを恐ろしいほどに増幅させ、それを修正することもままならない。そのためにはおびただしい犠牲が払わなければならなかったことが痛いほど伝わる。

  • 約600ページの大作。時間かかりました。
    大躍進ほど愚策はあるまい。読めば読むほどひどい。餓死が3600万って・・・
    さらに文革につながっていく。本当に悲劇だ。

  •  中国の大躍進の失敗によって膨大な餓死者がでたとの情報は、だいぶわかってきてはいたが、本書の詳細かつ具体的な内容には衝撃を受けた。
     本書は、元新華社通信の記者であり、かつ具体的な調査を踏まえた内容にはそれなりの説得力はあるが、ちょっと気になる点もあった。
     それは序章「永遠の墓碑」の「読者は本書で、1958年から1962年の間に3600万人が餓死したことを知ることになる。飢餓は出生率を引き下げるから、生まれなかった人口はおおよそ4000万人となり、餓死者にこの人口を加えれば7600万人という数字になる」との記載である。この記載を読んで、ふと、この生まれなかった子どもの数も被害者に加えるかの様な著者の考え方は、信頼できるのだろうかと思ってしまった。なにしろ「白髪三千丈」の国である。
     本書は、「大躍進政策」にかかわる政治の流れから、党中央や地方政府の動向、「モデル地区」での具体的経過、著名な政治指導者の動向等々、膨大な情報と主張を記載している。
     ここまで膨大なデータには、一定の真実はあるとは思うが、また別の視点もあるのではないのかとの読後感も持った。
     この時期の歴史は、現在の中国共産党もあまり触れられたくないと思っているのに違いないから、あまり発表されてはいないと思う。
     ただ、我が国においても「従軍慰安婦問題」についての経緯を見れば、あまり触れられたくない過去についての資料が少ないことは、どの国も同じに思える。
     そのような触れられたくない国家の過去が、だれしもが認識できる段階になった時が、国家が成熟したと言えるのだろうと思うが、中国も我が国もまだその段階には至ってていないのだろう。
     本書で扱っている「大躍進」政策は、まだまだ研究される余地があると思えた。

  • 目 次

    序 章 永遠の墓碑
     1.なぜ養父は餓死したか
     2.党を信じきっていた私
     3.「大躍進」は人類史上最悪の惨劇
     4.極権制度が諸悪の根源

    第1章 モデル地区で何が起こったのか
     1.「魚米の里」での大飢饉―信陽事件
     2.まかり通る嘘とごまかし
     3.続発する粛清とリンチ
     4.常態化する飢餓地獄
     5.撲殺は正しい行為
     6.中央に届かない情報
     7.毛沢東の「一本の指」
     8.いったい何百万人が餓死したか

    第2章 周恩来は、なぜ毛沢東を止められなかったか
     1.共産世界の指導者という野望
     2.周恩来、“冒進”に反対す
     3.毛沢東、“反冒進”を批判する
     4.周恩来は右派から50メートル
     5.成都会議―用意されていた総路線
     6.劉少奇は追随、鄧小平は是認

    第3章 偉大なる実験、公共食堂
     1.集団化で農村を支配する
     2.「人民公社は良い」
     3.資本主義の温床・家庭を消滅させよ
     4.すべての食事は公共食堂で
     5.公共食堂に固執する毛沢東
     6.農民の胃袋を支配した独裁政治

    第4章 五つの風が吹き荒れる
     1.共産風は歴史のお笑い種
     2.統計を捏造する“誇張風”
     3.毛沢東の思いつきで悲劇が拡大
     4.“五つの風”はなぜ起こったのか

    第5章 来年の種籾まで拠出する
     1.強制買い付けで飢える農村
     2.国家中枢に食料を集中せよ
     3.食糧過剰を心配する毛沢東
     4.農民の飢えを信じない党
     5.農村を搾って都市を守る

    第6章 彭德懐を罠にかける―廬山会議
     1.蛇を巣から誘い出す 
     2.彭德懐の“意見書”
     3.配布された手紙
     4.劉少奇、林彪は保身に走った
     5.用心深く立ち回った周恩来
     6.“彭德懐反党集団”をでっち上げる
     7.全土に広がる反右傾の烽火

    第7章 毛沢東よりさらに左を行く―四川省
     1.毛沢東の地方視察
     2.毛のさらに左を行く李井泉
     3.最長だった四川省の飢餓
     4.「疫病」であって「飢餓」ではない
     5.農民は骨と皮、幹部は肥え太る
     6.命を救う動き―包産到戸
     7.反右傾が飢餓を悪化させた

    第8章 所有という解毒剤―安徽省
     1.万物枯れる共産風
     2.日常茶飯の人肉食
     3.清廉な英雄への猛反撃
     4.釜を取り上げる
     5.責任田―はっきりしない毛の態度

    第9章 幻の反革命集団―甘粛省
     1.反革命集団の大本営
     2.壮大なでたらめ―利水工事
     3.逃げられない民
     4.餓死率が中国最悪の省
     5.「不良分子」が資本主義を復活させる

    第10章 毛沢東の忠誠度と餓死者の数は比例する
     1.孤児の大量発生―雲南省
     2.略奪の横行―山東省
     3.万人坑―貴州省
     4.香港への逃散―広東省
     5.偽りのパレード―広西チワン族自治区
     6.豊穣の地の飢饉―江蘇省
     7.量産される犯罪者―青海省
     8.毛への中世が飢餓を生む

    第11章 危機に毛沢東はどう対応したか
     1.毛沢東が修正を始める 
     2.一時しのぎの責任田
     3.都市人口を削減し農村へ
     4.食糧があっても大量の餓死
     5.食料を海外に輸出していた
     6.責任を天災とソ連に転嫁
     7.絶対的な権力は必ず腐敗する
     8.毛沢東の王侯生活

    第12章 「会議政治」―毛沢東独自の権力奪取法
     1.中国最後の皇帝・毛沢東
     2.毛ひとりが生活と資源を統制する
     3.武力で守られる極権政治
     4.「会議政治」で権力を奪う
     5.制度を修正できない致命傷

    第13章 劉少奇の台頭と失脚―文化大革命まで
     1.翳りさす毛沢東の権勢
     2.その名は餓死者とともに刻まれる
     3.鄧小平を警戒せよ
     4.毛沢東、必死の巻き返し
     5.高まる劉少奇の声望
     6.「劉少奇を小指一本で打倒する」
     7.文化大革命にいたる道


    『毛沢東 大躍進秘録・関連年譜』

    解説 日本語版の成立まで          伊藤 正


     
     
      

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