地下の鳩

著者 :
  • 文藝春秋
3.13
  • (16)
  • (86)
  • (167)
  • (60)
  • (7)
本棚登録 : 936
感想 : 145
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163810607

作品紹介・あらすじ

大阪、ミナミの繁華街-。夜の街に棲息する人々の、懸命で不恰好な生き様に、胸を熱くする力作誕生。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大阪・ミナミ、夜の街。イキり癖のある客引きの男 吉田、雌雄眼の痩せたチーママ みさを、沖縄出身のゴツいオカマ ミミィ。自身も飲み屋でアルバイトしていた西加奈子さんらしく、実在しそうなキャラクター描写。

    平和の象徴とされ、狩られる心配もなく人に慣れ、俯瞰するように赤い瞳を瞬かせる鳩。なんとなく昔から苦手なこの鳥。

    憧れないタイプの恋愛小説だったが、ミミィ視点の「タイムカプセル」分で星ひとつオマケ。

  • 地下の鳩よりもタイムカプセルの方が良かった。何とも感想が難しい。

  • 西加奈子さんが初の夜の世界を描いた作品ということで、どんなものかワクワクしながら読み始めた。
    これまで、西さんはどんな人も肯定的に捉えられる方だと思っていたが、本作を読んで誰よりも良い面を見つけられる分誰よりも悪い部分にも気づいてしまうのではないだろうかと思った。
    西さんの作品を読んでいて、始めて人を悪く捉える描写が占めている作品だったけれど、でもどの言葉も自分にも刺さるような指摘で、考えさせられた。
    物語も面白く、暗く苦しいような感覚を感じながらも共感し、最終的には出てくる人物を好きとも言えないが嫌いにはなれないような、不思議な読了感。登場人物の誰かを猛烈に憎いと思ったりしないで終われるのは、やはり西さんの力か。
    出てくる言葉出てくる言葉が、メモに残したいように心を揺さぶられた。でも多すぎて拾いきれない。
    なんだろう、ギュッとした。素敵な作品だった。

  • 大阪の場末に生きる人々。若い頃のちゃちな栄光だけを頼りに年老いてゆく吉田のプライドも、深く思考できないみさをの不安定な心も、閉鎖的な島で育ち苛め抜かれたミミィの失えない記憶も、私たちの中にも少なからずあるはず。例えぬくぬくと平穏に暮らしていても、彼らを理解できない人間にはなりたくないと思いました。多くを失った彼らには今後も辛い生活が待っているだろうけど、見つけた小さな希望を大切に生きて欲しい。場末の仄かな人情と、突き抜けた後ろ暗い明るさが、逆に悲しい物語でした。

  • 大阪・ミナミの夜の街がベースの二編。本編は、"華やかな世界"にドップリと嵌まる男女の恋愛模様。子供と母性と不器用さをあわせ持つ吉田とみさをは路上の鳩の様…。もう一編のミミイは空中から地上の人間観察に長けた鳩を振る舞っていたのだが、いきなり地に降り立った様な結末…。"小さいときの傷"…読む側にも思い起こさせる一語一句が次々に刺さってくる。

  • なんなんだ、なんなんだ、この生活感のディープさは。
    この著者の略歴は目にしたこともあるので年齢も知っているし、第一、作家の勝負は作品のみと信じ、常日頃経歴など気にかけないで読むことにしているのだけれど。
    それなのに、この人は一体何歳なんだ、どういう暮しをしてきたんだ…と思ってしまう。
    なんで、こんなおやじの会話や、夜の店の世界や、どこかはじかれた者たちの感覚がここまで描けるのか。

    中上健次を連想する。「軽蔑」や「鳩どもの家」を思い出してしまう。
    虚勢を張って、猥雑で、カッコ付けで、でも優しくて。弱さを抱えながら。向上心とか前向きとかそういう言葉には無関係で、小さなつながりにすがる、なんとか生きながらえる。

    吉田とみさをの「地下の鳩」1本ではなく、ミミィの「タイムカプセル」を併せて1冊にしたことは成功だ。完結している感じがする。

    ミミィかっこいい!と思うシーンあり。

  • 後半の「タイムカプセル」の方が良い。

  • 西加奈子さんの作品はすべて読んでますが、また違った西加奈子さんに触れられた。以下、ネタバレ含みます。

    大阪で夜の仕事をする男女の物語。昔はモテた、暴力的だったとイキリのある吉田。左右の目の大きさが違い素朴っぽさをだしたそれっぽくないみさを。そして巨漢だが心は女のゲイバーで働くリリィ。
    前編地下の鳩では吉田とみさをの目線で物語が進む。だらだらと交際と呼べるかわからないものを続けるふたり。みさをには一銭も出させたくない吉田が、もう金がないと涙したところはぐっときた。リリィの暴力事件に巻き込まれ目を怪我した吉田。ゲップをしたみさををみたくない。恥かかせたみさをが嫌いだ、みさをを嫌いになりたくない、いや、もう嫌いだと葛藤している吉田は可愛い。そしてあんなによく食べていたみさをが吐き続ける。それでもよく食べよく吐く。だがふっくらしていた、という記述をみてみさを妊娠したのかなと思ったんだけどどうだろう。どうおもう?
    最後、『でも吉田は、みさをのことが、まだ好きだった』がいい。そこで終わらせるのもいいよ。
    そして後編はリリィの目線で物語は進んでく。虐められていた過去。自分の立ち位置、相手がなにを求めてるかを読み取るうまさが切ない。タテノを刺したときのリリィが切ない。あの怒りが、怖さが、切ない。怖いくらいに。

  • ミミイさん応援します(*_*)

    ミミイさんのお店に飲みに行ってみたーい

  • 闇を抱えて生きる、夜の街。
    それぞれの想いがとても重くて、
    それぞれの過去がとても哀しい。
    それでも、生きるんですよね。
    強がって、いきがって、嘘ついて、生きていく。
    その姿に、じんわりと胸が痛くなりました。

全145件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

西加奈子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×