問いのない答え

著者 :
  • 文藝春秋
3.19
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本棚登録 : 587
感想 : 90
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163828305

作品紹介・あらすじ

なにをしていましたか?先週の日曜日に、学生時代に、震災の日に――様々な問いと答えを「遊び」にして、あらゆる場所で緩やかに交流する人々の切実な生を描く、著者四年振りの長篇群像劇。震災発生の三日後、小説家のネムオはtwitter上で、「それはなんでしょう」という言葉遊びを始めた。一部だけ明らかにされた質問文に、出題の全容がわからぬまま無理やり回答する遊びだ。設定した時刻になり出題者が問題の全文を明らかにしたとき、参加者は寄せられた回答をさかのぼり、解釈や鑑賞を書き連ね、画面上に“にぎやかななにか”が立ち上がるのだ。最近ヘアスタイリストと離婚したばかりの「カオル子」、ボールベアリング工場勤務の「少佐」、震災を機に派遣社員をやめた「七海」、東京郊外の高校に転校してきたばかりの美少女「蕗山フキ子」……気晴らしの必要な人だけ参加してくださいという呼びかけに集まったのは、数十人の常連だった。グラビアアイドルに取材する者、雑貨チェーン店の店長として釧路に赴任する者、秋葉原無差別殺傷事件の犯人に思いをやる者、亡き父の蔵書から押し花を発見する者、言葉遊びに興じながら、彼らはさまざまな一年を過ごす。そして二〇一二年四月、twitter上の言葉遊びで知り合ったある男女の結婚を祝うため、たくさんの常連たちが一堂に会することになり――。

感想・レビュー・書評

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  • Twitterの短いポストから、誰かの思考や生活を探る、もうそうする人すらもいなくなった。ギスギスして、い辛い空間だけが残った。

  • さーっと読めない。
    登場人物が多くて、思い出すのに時間がかかった。

  • 2021/2/24
    分解してみたい。

  • かなり序盤で飽きた。

  • 面白かったです。読書会でおすすめしていただいた本です。
    問いかける言葉だけをTwitterに呟き、その問いのきっかけや理由を伏せたまま答えを出す、という遊びは面白そうです。
    それを軸に、登場人物たちの震災や秋葉原の殺傷事件についても描かれていました。
    登場人物も情報も多いのですが、たくさんのエピソードが表れては流れていくのがTwitterの世界みたいだと思いました。ユーザーあるあるも。
    Mステのt.A.T.u.事件懐かしい…ミッシェルの曲名まで覚えていなかったのですが、これによると、ミッドナイト・クラクション・ベイビーだったのか…。
    「世界がそのようにしかみえないからといって、世界がそのようであるとは限らない。」はっとします。知見を広げねば…とか、つい思ってしまいますが、自分のことだけでなく、人の立場に立ってみるとかそうやって考えてみることから始めてみようも思います。

  • 文学

  •  カラオケは二人きりだとせわしない。すぐに順番が回ってくるし、四人五人と増えていくのは、メンバーによっては楽しいが、そのときのメンバーに応じて選曲を気遣わないといけなくなってくるし、聴きたくない曲も聴かなければいけない。一人だと好きな歌を歌えるし、難しい曲に失敗してもいい(「ボヘミアン・ラプソディ」を一人ですべて歌っても構わないのだ)。歌わずに熟考している間、無音になっても気まずくない。(p.104)

     スピーカーから柔らかそうなチャイムが鳴った。皆がそれぞれの座席を立ち上がり、ノビをしたり荷物をおろしたりする中、鯖はなおも悠然と思いにふけった。さっき隙間から観た画面の中の男もー昔の映画の悪役だろうー胴体に電飾の粒々を埋め込んで自分を飾っていた。かたや現代の我々は、もっと微細な粒々の集合で表される。カメラで撮られれば姿が、つぶやけば言葉が。そのことを虚無的に感じるわけではないが、ちらっとみた電飾のデブが急に愛しく思えてきた。ドットにされる前に俺が光ってやる!と無闇に逆らって見せているみたいで。(p.249)

  • これは私と相性イマイチな方の長嶋作品。二度借りてトライしたけど、のめり込めず読み進められなかった

  • 点と点のように、人々はネットのなかでつながっている。

    小説家のムネオがツイッターではじめた言葉遊び。
    離婚したカオル子、ムネオと同じマンションに住んでいる七海
    高校生のフキ子と震災を経験した同級生の一二三。

    庭師のクニコ、岡山に左遷された人気者の少佐、
    サキが思うアキバ無差別殺傷事件の加藤のこと。
    食パンを一気に4枚食べる光太、フリー編集者のスズキ。

    緑色のモヤモヤしたアイコンが実はカエルだったウシニラさん。

    相変わらず細かくて、相関図がほしい。
    七海の「お、サンキュ」って人って少佐なの???ではないの???
    そこが謎。

    当たり前じゃないのにいつの間にか見落としてしまう物事が
    散りばめられている感じ)^o^(

  • ・ぐったりと倒れている男の姿は殺人鬼のようでも被害者のようでもなかった。吐いて楽になるものもなにも持ってない、問いのない答えを遊びでなく本当に発してしまった者の顛末、成れの果て。

    ・木を登るまで、木を登ったときの景色は分からない。おにぎりを食べる前に、おにぎりの中身は知っている。自分の手でにぎったからだ。庭は手のひらより大きい。自分で自分の庭をこうして造った人も、自分の庭からの景色を全部知っているだろうか。

    ・世界がそのようにしかみえないからといって、世界がそのようであるとは限らない。世界は最初から蛙であり、風船を手放す子供であったし、しかも向こうは少しもスズキをだまそうとさえしていなかったのだ。
     同じものなのに、見え方は大きく違うというのが、不安なのか安心なのか分からない、なんだか変な気分だ。なにか大事なことの象徴のようにも感じられたのだが、すぐに何々となぞらえることもできない。

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著者プロフィール

小説家、俳人。「猛スピードで母は」で芥川賞(文春文庫)、『夕子ちゃんの近道』(講談社文庫)で大江健三郎賞、『三の隣は五号室』(中央公論新社)で谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『ルーティーンズ』(講談社)。句集に『新装版・ 春のお辞儀』(書肆侃侃房)。その他の著作に『俳句は入門できる』(朝日新書)、『フキンシンちゃん』(エデンコミックス)など。
自選一句「素麺や磔のウルトラセブン」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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