- Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163905082
作品紹介・あらすじ
安藤裕美は、人材派遣会社を経て20代で会社「コードエージェント」を立ち上げ、腕のよいプログラマーを企業に斡旋している。だが、取引先で、自分の会社が送り込んだプログラマーが企業データを暗号化して失踪し、”身代金”7000万円を要求してくるという大事件が起きる。「電子おくすり手帳」5万人分のデータを人質に取られているため、警察に通報して事件が公になれば会社は社会的信用を失う。極秘の捜査を依頼され、安藤は出資者の東城院加奈子から、補佐役として奇妙な青年を紹介される。鹿敷堂(かしきどう)桂馬。いかにもやる気のなさそうなこのプログラマーに、安藤は苛立ちを覚えるが……。「ぼくはプログラマーなので、コードで答えさせてもらいます」「プログラマーという人種はですね。他人とともに、自分も信じない人間なんですよ」いかにもやる気なさげなプログラマー探偵、鹿敷堂登場!相棒の安藤裕美をイラつかせながらも、やるときゃやる!
感想・レビュー・書評
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サイバー犯罪と戦うプログラマー探偵、鹿敷堂桂馬の活躍を描くサスペンスミステリー。
シリーズ第1作は、プロローグおよびエピローグを含む7章からなる。
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大学新卒で人材派遣会社に就職した安藤裕子だったが、古臭い保守的な社風に耐えきれず、自ら起業することを決意。運よく出資者にも恵まれ事業を立ち上げた。
業務内容はプログラマーに特化した人材紹介業で、事務所は六本木のアパートの一室。社員は裕子を含め4人でのスタートだった。
少数精鋭のベストメンバーで臨んだこともあって業績は順調に伸び、2年数ヶ月で社員は増え2度の事務所移転を経験。現在はオフィスビルに事務所を構えるまでに成長した。
営業も担当する裕子は連日、精力的に取引先の開拓に勤しんでいた。そんなある日のこと、……。(第1章「プロローグ」)
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本編の主要人物は3人います。
1人めは主人公の安藤裕子です。
裕子は学生時代のあだ名が「呂布」ということで、いかなる展開になるのかドキドキして読み始めました。
呂布は三国志最強と言われる猛将で、部下の忠告を聞こうとせず、主君を裏切っては新しい主君に仕えるという所業を繰り返した末、曹操に捕らえられ非業の死を遂げてしまうという人物だからです。
しかし裕子は信義に厚い人間であり、部下のアドバイスにも素直に耳を傾ける誠実さも持っています。優れた上司と言っていいでしょう。
だからこそ、右腕である三木原百合をはじめ、プログラマーの冴木裕次郎やデザイナーの渡部麻里という一騎当千の部下からの信頼を得たのだし、東城院というやり手の投資家に見込まれもしたのです。
設定としては主人公に相応しいとは思いますが、実は読んでいて、裕子にはあまり魅力を感じませんでした。理由は後述します。
2人めは鹿敷堂桂馬です。
表情に乏しく物腰には覇気が感じられない。鹿敷堂はそんな冷めきってやる気のない人物に見えます。しかし、その思考や行動は優れたプログラマーらしく効率的に計算して書かれたコードに則っており無駄がありません。実にクールなのです。
それでいて心の中には熱い血が流れており、救うべきと判断した人物には最善となる手を打ってくるような温情派でもあります。
鹿敷堂桂馬はまさしく新しいタイプのヒーローで、実に魅力的な人物でした。
そして3人めが、敵キャラとなる八島優一です。
八島も優れたプログラマーであり、計算を尽くして書いたコードに従い計画を進めていきます。
鹿敷堂の相手にとって、八島は不足のない人物として描かれていました。
本作がおもしろかったのは、鹿敷堂 対 八島というプログラマー同士の激突が中心であり、頭脳戦を描いてくれていたからだと思います。
そして、その狂言回しの役割を務めるのが裕子なのです。だから裕子は魅力抑えめで描かれたのではないかと推測します。ともあれ、主人公を黒子に回すなど思いきった発想で、柳井政和という作家の斬新さを見た思いがしました。
最後に、IT化社会の恐ろしさをひしひしと感じさせられたことに触れておきます。
まず情報が価値を持つため、犯罪者たちはあらゆる手段で情報入手を企むようになります。ハッカー集団による不正アクセスやランサムウェアなどの外部からの攻撃だけでなく、有能な社員としてスパイを潜入させる内部犯行も増えるに違いないでしょう。
そうして犯罪者側が手中にしたデータに自分の個人情報が入っていることを、我々は気づきもしないということが恐ろしい。
また、優秀なプログラマーが知らず知らずのうちに、犯罪者に利用されたり犯罪に巻き込まれたりすることも、これからますます多くなりそうで、そのこともゾッとするほど恐ろしく感じます。
重厚さは感じられないものの、リアルの恐ろしさを描けていた点で、よい作品だったと思います。
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柳井政和さんは初読みの作家さんです。
nagasakafujio さんのレビューと評価を見て読んでみたくなって手に取りました。
とてもおもしろかった。読んで本当によかったです。2作目もぜひ読もうと思っています。
nagasakafujioさん、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
柳井さんの作品に 興味があり
是非読んで見たく 手に取りました。
プログラムのことが 全然わからない私でも
最後まで スムーズに 読めました。
絶対 ハッピイエンドに 終わると思っていながら
ハラハラドキドキ。
柳井さん すごいです。
次回作 あるようなので
早速 読んで見ます。 -
もっと専門性に寄った会話を期待していただけに残念。ただ、名護のキャラは好み。
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非常に面白かった!
大変読みやすくテンポよく進む物語。
適度な謎と伏線。「よくこんなこと思いつくなぁ」と驚きながら読みました。
キャラクターの背負う背景の丁寧な描写、人物相互の相違点と共通点の織りなす面白さも、素晴らしい。
最後のエピローグは、軽快に笑いながら読みました。
サブキャラクターも、いい味出していますね。
おすすめの小説です! -
いかにも気の強い女主人公の安藤と、過去に誤りを犯し、ある人に助けられた恩で、グレーな業務を引き受けながら、プログラムの世界にいる鹿敷堂の話。
実際に著者がプログラマーであることで、単なる探偵ものでなく、プログラミング言語のストーリー仕立てになっており、非常にスリリングで先の読めない話だった。 -
海猫沢めろん先生が推奨していたので読みました。理想に燃える、強くて明るいヒロインが、困難を乗り越えて進んでいく様子が読んでいて小気味良かった。筋書きが面白くてあっという間に読み終えてしまいました。
それにしても、腕は良いけどコミュ障、っていうguysには、萌える!!めっちゃ愛でたい!
私もエンジニアの転職支援サイトのコンサルとかやってみたい。 -
プログラムが何度も出てくるわけではないため
一般の方でも十分読めると思います。
プログラマーの思考を理解してみたい人にもおすすめです。 -
最後の展開は少し無理があり「えー そうなの」って感じだった
でも次も出れば必ず読みます。面白かった11 -
『マンガでわかるJavaScript』や『マンガでプログラミング用語解説』でおなじみの柳井政和さんの小説。
なぜか鹿敷堂はメガネをかけているイメージで読んでいたけど、表紙をよくよく見てみたらメガネかけてなかった。
転落した天才プログラマの話。ミスリードだろうけど、八島は最初、鹿敷堂のことだと思った。まあ、暗号化事件の真犯人が別にいると分かったうえで、しかも主人公がその犯人の検討がついたのに小説上で語られていないところになったら、そっちなんだろなと思ったけど。
それと、時々、比喩がシンプルだけど面白いなと思った。「高そうな服を、ユニクロのように着こなしていた」とか。「高そうな服」をその対義語とでもいっていい「ユニクロ」であてはめていることに驚いた。使いようによっては、逆の意味で捉えられそうだけど。
3桁の正の整数のそれぞれの桁をたして、二桁以上になった時はさらにそれぞれの桁をたしていった結果の一桁の数を求めるアルゴリズム(ただし、足し算と引き算は使ってはいけない)は、ちょっとだけ考えただけじゃ分からなかった。けど、5分あったらどうだろう。確かにわかったかも。100から順番にやっていて法則を見つければいいだけだし。