そして、バトンは渡された

著者 :
  • 文藝春秋
4.25
  • (2651)
  • (2135)
  • (804)
  • (139)
  • (41)
本棚登録 : 19338
感想 : 2249
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907956

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 評判通りのあたたかい、物語でした。
    兎に角、愛ある人たちに囲まれているので困った事件に巻き込まれず、真っ当な大人に育つ彼女を見つめる家族、たち。
    最後だけお父さん目線で、なるほど目頭が熱くなってしまいました。

  • 何というか、爽やかな気分で(でも涙は止まらず)、読み終わりました。
    気になっていた本ですが、でも、親が何度も代わるってすごく重たい感じもするし、なかなか読み出すきっかけが掴めませんでした。美容院に持ってくなら文庫、とたまたま持っていってよかった。
    読んでみて、自分自身もツラい話なんじゃないかと先入観を持っていたように思うし、主人公の周りにも、親が何度も代わった子、という先入観で接しているのがわかる。でも、見えていないものはあるのだ。

    親目線で読んでしまうので、いろんな愛情の在り方があるんだな、でも子どもを思う気持ちはみんな一緒だな、と思う。子どもにはその時は伝わっていないこともあるけど、でも、子どもが大人になり、親になって初めて自分が与えられた愛情に気付くこともある。

    血の繋がりがないからこそ、一生懸命になる、のかもしれないし、血の繋がりがあるからこそ、お互いに甘えてしまうのかもしれない。


    現実の世の中にはこんなにいい人ばかりではないかもしれないけど、でも、世の中捨てたもんじゃないな、と思える作品でした。

  • 第1章の出だし「困った。全然不幸ではないのだ。」というフレーズだけですべてが語られている。血のつながらない父親・森宮さんと優子ちゃんの物語。二人の微妙な距離感が読んでいて温かくなる。微妙といっても「つかず離れず」という微妙ではない。森宮さんの「べったり」だけど「どこかズレている」という距離感。とてもいい。必死に良い父親になろうとしているけど「ズレている」、でもしっかり気持ちが伝わる。この気持ちがわかる優子ちゃんも素直でしっかりもの。実の親では逆に出せない距離感を上手く描いている。やっぱりこの物語、いい!!家族が変わっていくという劇的なことを背景にして何気ない日常を描いている。その中での、父娘の会話が温かい。とても「ズレ」ているのだけれども、面白さよりも温かさが伝わってくる。児童虐待などの殺伐とした世の中で、こういう作品を読めたのは僥倖。

  • 本屋大賞なので。

    家族や血の繋がりとはなんだろう?
    血が繋がっていない親のもとで成長していく女の子、優子。父親は3回、母親は2回変わりつつも、どこの家庭でも幸せを感じながら過ごしていく。

    物語はシンプル、大きな展開なく平坦に進む。
    逆にそれが現実的で、読み終わったときに不思議な感覚をもたらす。
    私はこの本の中で大きく誰かに感情移入することはなく、物事を伝えられるまま受け止め、気付けば読み終わってしまった。あまりこういった本を読むことが少ない(出会うことも少ない?)ので、上手く感想がまとめられない…。

    読んでいるときに、ずっと頭の中にあったのは「どうして優子はどこの親のもとでもこんなに愛されているんだろう?」という疑問。
    人間的に魅力があるのか、顔がとても可愛いとか、凄く良い子だとか。私は理由を本の中でずっと探していて、結局最後まで見つからなかった。
    愛嬌があるとか長所の描写はあったが、それが理由なわけではなかったと思う。

    見つからないまま物語は終わり、気付いたことは「理由がなければ愛されないのか」という問いかけに変わったこと。それに関しては考えを一時停止している(笑)

    本当に上手くまとまらないが、あえてこのまま感想として記しておこうと思う。読了後にこうした状態になること、久しぶり。考察でもないし。
    もっとこうした本を読んで見識を広げたい…。

    感想追記。
    ブクログ内の感想を読んで回り、他の人との自分の感じ方の差に驚いた!
    同じ本でもこんなに感想が違うんだな…。びっくり。ほっこりとか幸せという印象は正直持っていなかったので衝撃…。でもこれが読書の醍醐味ですね。ブクログありがとう。

  • 親が何度か変わっても、どの親からも愛情を受けて育った主人公。血のつながりだけが家族を証明するのではなく、ひととひととの関係が「家族」たらしめるのだと思わされた。

    作品に出てくる挿入歌の『めぐり逢い』が門出の雰囲気にぴったり!!

  • ずっと読みたかった本だったので、期待が高まっていたのだが、期待以上に面白い1冊だった。
    [面白い]と表現するのも違うかもしれないが、次々とページがめくられて、中だるみすることなく読み終えることができた。

    世間一般とは家庭環境が違う女性が主人公となっている。
    "家庭環境が違う"というのは、保護者となる親が小さい頃からころころと変わってきているからだ。
    それだけを聞くと、不遇だと思うかもしれないが、決してそうではないように思う。
    関わり方や想い方はそれぞれ違うが、心から子どもと向き合っている。
    そこには、しっかりとした愛情が感じ取れていた。
    もちろん特殊ではあるけれども。

    小さい娘を持つ私が読むと、これは愛情をどう伝えるか・どう伝わっていくのか、という一冊に思える。

    私はあなたを大切に思っています。
    という想いは言葉だけでは伝わらないし、そこには行動や態度が必ず伴っていくものだと思う。
    私も自分なりに、子どもに向き合っていきたいと強く感じた。

  • とても美しくて暖かいお話。家族ファンタジー、そんな印象でした。早瀬くん、素敵。

  • ユーミンの「やさしさに包まれたなら」が頭の中で
    リフレインした、愛情たっぷりの物語です。
    優子の、高校3年生の1年間の生活と恋、結婚に至る道のりの中に、
    織り交ぜられるのは、幼少からの複雑な環境。
    結婚、離婚、引っ越しの繰り返し。苗字も4回変わった。
    家族の形態は7回変わったという、稀有な環境での成長と生活。
    優子を培ったのは、出会いと彼らとの生活、そして別れ。
    でも、それだけではない・・・三人の父と継母の梨花さん。
    心を育み、たくさんの愛情を注いでくれたのは、彼ら。
    家族という名のもとに一緒に暮らしてくれた、彼らとの絆の深さ。
    特に、血がつながらなくても、自分のバトンを上手に受け渡せる
    位置と役割を考えて、優子の父を選んでいる梨花さんの愛の深さ。
    また、3歳で亡くした母の愛もあるし、
    祖父母、アパートの大家さん、向井先生からも、
    多くの真心を受け取っています。
    そして自分自身の結婚を前にして知った、真実。
    優子を、かけがえのない存在だと言える彼らからの
    温かい祝福に包まれるような、結婚式の情景に感涙しました。
    それから、彼らの食事やおやつをいただく描写が良かったです。
    実に美味しそうなんだなぁ~。特に森宮さんの料理。
    想像するだけでお腹空いちゃいますよ。

  • 泣かないかと思ってたけど最後は泣いちゃった。
    温かな読了感でよかった。

    とにかく森宮さんがいいキャラしてて可愛かったし、早瀬くんも良いキャラだった。その他の登場人物も魅力的な人が多い。 

    事前に知っていたあらすじの感じだと、親が替わっていくけど幸せな話、と、いうイメージだったけど、もちろん始終ハッピーな感じというわけでもなく、読み進めていくと、優子なりの苦労や葛藤や、そして達観があってこそ、「困った。全然不幸ではないのだ。」という冒頭の言葉に繋がっているとわかる。

    優子は大人の都合に振り回されて家族の形を変えていき、親が替わり生活が変わる度、別れがある度に痛みや悲しみもある。それでも、この物語が暖かいのは、優子の親になった人たちが、それぞれ優子をとても大切に想って愛情深く優子に接するからだ。
    子どもを育てるにあたって、血のつながりよりも何よりも大切なことを、改めて思い知らされた気持ちだった。

    そして、何より優子の「過去よりも今を大切に生きる」というモットーのようなものが、親が替わっても、家族が、環境が変わっても、優子があのように芯の通った女性へと成長した肝だったように思う。

    最初の梨花さんとの給料日前に食べるものに困る生活も、その次の窮屈ともいえる生活も、優子の人の好意を真っ直ぐに受け取る素直さがなければ、ひねくれたり、やさぐれたりするキッカケになり得たはずだ。
    それでも、優子が「全然不幸ではない」と断言できるのは「今を生きること」と「愛情を素直に受け取ること」を真摯に優子自身がやってきたからだと思った。


    あとは、森宮さんに話した梨花さんの言葉が印象的だ。
    「自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日がやってくる」「明日が二つ」「未来が2倍以上」子どもを育てるにあたってなんて素晴らしい視点だろう、と思った。確かにそうなのだ。子どもを持つということは。しんどすぎてたまに忘れそうになるけれど。


    ずっと優子の一人称だった物語が、最後に森宮さん視点になるのが、とてもよかったし、そこがやっぱり泣けるポイントだった気がする。

  • 幼くして母を亡くし、やがて父は綺麗で華やかで自由なお姉さんと再婚をした。その後も大人の都合で、お母さんが2人とお父さんが3人…そんな森宮優子の物語。
    壮絶な…となりそうな背景にも関わらず、どの親からも愛情を注がれ育った優子。
    新しく親となる人との出会い、度重なる引っ越し、友情、進学、恋…悩んで迷って泣いて、それでも笑顔で生きて来れたのは、愛してくれる大人たちがいたから。
    梨花さんは大胆に、泉ヶ原さんは深いところで、森宮さんは真っ直ぐに!
    水戸さんにも会えて良かった…。終章は泣く。
    昔ほど離婚や再婚が珍しくなくなった今、大人に振り回される子どもは間違いなく少なくない。
    そんな簡単じゃない、そんな都合良くない。知ってるけど、みんなが優子ちゃんのように幸せでありますようにと願わずにはいられない。
    優しく強い希望の物語。一気読み。
    今年の5冊目
    2021.03.02

全2249件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

瀬尾まいこの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×