ゴー・ホーム・クイックリー

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 46
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909325

作品紹介・あらすじ

終戦直後の昭和二十一年の初め、最高司令官総司令部(GHQ)の方針に従い、国会内の委員会で政府試案をまとめたが、GHQは拒否。そればかりか、GHQ憲法改正案を押し付けてきた。この案を翻訳し、日本の法律らしく形を整え、新憲法の下敷きにせよ、というのだ。 わずか二週間で翻訳にあたることになったのは、内閣法制局の佐藤達夫。吉田茂外相と話す機会を得た佐藤は、GHQ案の問題点をまくしたてる。それを聞いた吉田は、佐藤に言った。「GHQは何の略だか知っているか? ゴー・ホーム・クイックリーだ。『さっさと帰れ』だよ。総司令部側が満足する憲法案を早々に作っちまおうじゃないか。国の体制を整えるのは、彼らがアメリカに去って、独立を回復してからだ」 終戦直後、日本は自治権を失った。 この小説は、昭和天皇の戦争責任をたてに、GHQから、憲法改正案を押し付けられようとも、未来の日本国民のため、日本という国家の矜持のため、懸命に戦った官僚と政治家たちの熱い物語である。 かつて司馬遼太郎は、『坂の上の雲』で、明治という時代の明暗と、近代国家誕生にかけた人々の姿を小説にした。 自らの保身しか考えない官僚と、未来へのビジョンを提示しない政治家がはびこる現代だからこそ、著者は、「国のために戦った」男たちの姿を描いた。

感想・レビュー・書評

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  •  歴史の表舞台に立っているとは言い難いけれど、気概を持った人の姿が心を打つ。
     ただし、上滑りの戦後日本の根源を見せつけられることは避けられない。
     それにしても、美濃部博士の戦後のスタンス等、知らない歴史の細部をいくつも。
     共産党のスタンスは、「民主と愛国」で知ってはいたけれども。

  • 戦後の憲法改正に身を捧げた人々の物語。
    結論ありきながら、進駐軍の圧力に何とか抗おうと垣間見えるプライドがアツい。
    9条2項の冒頭の一言を入れたのは、その後の展開からしてファインプレーに近いんだろう。
    でも、さすがに集団的自衛権を認める解釈にはならないんだろうなと個人的には思う。

  • 現行の日本国憲法が成立した経緯が描かれています。当時の内閣法制局官僚・佐藤達夫の視点を中心にしつつも、当時の国内外の情勢も交えて中立的に語られています。
    最初の草案を作成する際のGHQとのやりとりに緊迫感があります。当時の日本人が並々ならぬ想いで憲法の改正にあたっていたんだということが分かり感動しました。現在の改憲の問題について考える材料の一つになるものだと思います。

  • 20190308-30憲法創設までの苦衷と希望が伺える。花より土が大事だと最期のまとめで希望が持てます。漢字と旧仮名遣いで途中断念しそうになったけれど、読み切って良かった!

  • 【終戦直後、日本のために戦った官僚たちの物語】最高司令官総司令部(GHQ)が、憲法改正案を押し付けてきた。この時、日本の未来のために抗った官僚と政治家たちの戦いを描く。

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著者プロフィール

中路啓太
1968年東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を単位取得の上、退学。2006年、「火ノ児の剣」で第1回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞、作家デビュー。2作目『裏切り涼山』で高い評価を受ける。綿密な取材と独自の解釈、そして骨太な作風から、正統派歴史時代小説の新しい担い手として注目を集めている。他の著書に『うつけの采配』『己惚れの記』『恥も外聞もなく売名す』など。

「2022年 『南洋のエレアル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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