熱源

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 4822
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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910413

感想・レビュー・書評

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  • この本が直木賞に選ばれたことはとても意味のある1冊だと思った。
    ただ自分がアイヌ人だという事実の元、自分達の習慣や風習を大切に守って平凡に生きると言う事がなぜ出来ないのか。
    文明が人を豊かにすると言うのは間違ってはいないと思う。だけど、その文明が発達していく中で、肌の色や人種の違いに優越を付けて、少数民族を下等種族と決めつけ一方的に文明の中に引き込み『みんな同じ』と言う風にするのはとんだ間違いだと思う。
    少数でもその人達が大切にしているものを尊重し合って共存していく…
    でもこれがなかなか出来ないから世の中争いが絶えない。
    自分もこの本を読むまではアイヌ民族は絶滅しそうな守るべき人達と言うとんだ思い上がりをしていた事を酷く反省…この本を読み、アイヌの事を知れたのは本当に意味のある事だった。

  •  アイヌのことが知りたくて読みましたが、直木賞作品とは知りませんでした。けっこう壮大なスケールです。  
     ロシア人、日本人、ポーランド人、リトアニア人といろんな人種が出てくるけれど、アイヌこそ誇り高き民族だと感じます。
     「どうして誰もこの島を放っておけないのだ。人が住んでいる。ただそれだけではどうしていけないのだ。どうしてこんな嵐が吹き荒れるのか」砲弾の飛び交う中で叫ぶアイヌの女性。今も世界のあちらこちらで起きている戦争の愚かさ、はかなさを思います。
     登場人物の容赦ない死別には悲しみが募ります。自分の妻子を捨てて祖国へと向かったブロニスワフには生きて再びサハリンに戻って欲しかった。

  • 近代化とか文明化とか、大きな時の流れとしては、豊かになり幸せになっていこうとする意志なのだから、決して否定されるものではないのだろうが、失われ変えられ踏み躙られていく側から見ると、何が豊かで何が幸せなのだろうと、苦しみ迷い傷つきながら進んでいくことになる。
    一通りではない、心がかき乱される、とても骨太な物語だった。

  • 次に北海道行った時はアイヌの資料館に行きたくなった

  • ブロニスワフ・ピオトル・ピウスツキさんというポーランド人人類学者がアイヌ人を明治の時代に丹念に流刑の身でありながら調べ、更に教育をしようと奔走していた史実を元に書かれたエンタメ小説ですが、樺太をもう知らない世代にはとても新鮮な気持ちで読み進められました。

  • 「熱源」の正体がわかった時、なぜか安心した。

  • やっと読めた。図書館で借りては途中で期限がくるというのを繰り返し、遂に購入してやっと読破。

    北の国好きとしてはたまらない北海道、サハリン、ロシア、ポーランドを取り巻く物語。これだけで読んでみようと思ったのだが、驚いたのが登場人物の殆どが実在の人物だった事。そして誰もが知る偉人や歴史的事実に関わっていたことに心底驚いた。

    自分が何者なのか、国とは、故郷とは。考えさせられる物語だった。

  • 今年読んだ日本文学で間違いなく一番良かった (分母小さめ・・・涙)
    実際に存在したアイヌや日本人などを登場人物とした激動の物語。アイデンティティとは、己の文化とは・・・。必ずもう一度読みたい。これは是非英訳されてほしい。

  • 自分たちの民族や文化が消える…、ヤヨマネクフが幼い頃からずっと感じていた焦燥に、はっと気づかされる。そして、南極点を目指すところからシシラトカと殴り合うシーンでは今までの思いの分、特に胸が熱くなった。
    世界史などの記述では短い文章で終わってしまうけど、そこに一つの民族が支配される、滅びていくまでに多くの葛藤があり、その後の彼らのアイデンティティはどうなるのか、その部分こそ、現在の歴史学で思いを寄せるべき一つだと思う。
    ブロニスワフ・ピウスツキも、弟が世界史では有名なので、その勉強の時に兄がアイヌの研究をしていたらしいとは知ったが、被支配のポーランドとアイヌという2つの故郷、そして支配するロシアとの間で数奇な運命だったのかな、とこの話を読んで感慨深かった。

  • 最近は読んだ本については、なるべく短くても感想を残すことを目標にしている。
    とは言え、どうも感想が書けない時がたまにある。
    理由は何パターンかあるのだが、その中の1つに、素晴らしい作品だと思うのに、物語の量や熱が膨大で、逆に上手く感想をまとめられない時、と言うことがある。
    この作品はまさにこのパターンで、作品を通して、タイトルにもなっている「熱」が伝わってくるのだ。それに圧倒されながら読み進め、ずっと、悲しみ・怒り・諦念、様々な感情を抱いていたのに、いざ、読み終えると、言葉にならないのだ。ただ、時代の変化と、それに振り回されながらも生き抜いた登場人物達に圧倒されている。

    それにしても、自分は知っているつもりで、アイヌの人達の歩んできた道を、あまり知らなかったのだと実感した。

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著者プロフィール

『熱源』で第162回直木賞受賞。

「2019年 『異人と同人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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