- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163911960
作品紹介・あらすじ
【不世出の天才・初代市川團十郎、空前の一代記】なぜ江戸の民衆は團十郎に熱狂したのか。團十郎が命をかけた〈荒事〉とは何か。そして、なぜ舞台上で命を落としたのか。元禄時代から現在まで常に歌舞伎界に君臨し続けた大名跡・市川團十郎、そのはじまりの物語。●あらすじ寛文7年(1667)、浪人の娘・恵以はひとりの少年と出会う。子どもながらに柄の悪い侠客たちに囲まれ、芝居に出れば大暴れして舞台を滅茶苦茶にする破天荒さに呆れながらも、恵以は自然と人の注目を集める彼の素質に気づく。少年の名は海老蔵。長じて市川團十郎を名乗り、〈荒事〉の追求の果てに江戸の民衆から信仰にも近い人気を集め、劇作家としても今なお愛される名演目や斬新な演出を次々と生み出した不世出の天才。彼が命をかけた〈荒事〉とは何だったのか、そして、なぜ舞台上で命を落とすこととなったのか。謎多き初代市川團十郎の波乱万丈の生涯を、元禄の狂乱と江戸歌舞伎の胎動とともに描く空前の一代記がここに誕生!
感想・レビュー・書評
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修行僧の土中入定(生き埋め)という衝撃的な場面の冒頭。その場で出会った少年と少女・・後の市川團十郎と、その妻・恵以の生涯を描いた作品です。
海老蔵少年が、役者・市川團十郎となり“江戸随市川”と呼ばれるほどのカリスマ的人気を得る過程や、「荒事の開山」と呼ばれる所以、成田山新勝寺との深い縁なども綴られていて、さすが歌舞伎に造詣が深い松井さんならではですね。
時代的には、五代将軍から六代将軍の間という、江戸史上でもトップクラスの色々ありすぎた時代で、“生類憐みの令”“赤穂浪士討ち入り事件”“元禄大地震と宝永富士山噴火”“江島生島事件”等々・・・。
このような大変な時代だからこそ、天災やお上からの粛清にも負けず、芝居というものに江戸市民が熱狂し、その伝統が脈々と受け継がれて今日まで続いているのだなぁと感嘆の想いでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
市川團十郎がすごすぎて、あまり苦労のない人生の話だった気がする。文化の勉強にはなりました。
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なるほど、市川團十郎はこうして誕生したのか!
成田山との深い関わり、荒事がお家芸と言われる経緯。
全てが今の成田屋に通ずる。
産まれたてのホヤホヤの赤子のような
まだ、海のものとも山のものともつかない頃の
團十郎がここに居たような。
とても興味深かった。満足! -
歌舞伎好きにはもちろん歌舞伎を知らない人でも楽しめると思う。
團十郎はどことなく今の海老蔵さんのイメージかなと思いながら読みました。
市川團十郎がどのようにして誕生したのか、伝統芸能がどうやって後世に引き継がれていくのか。
幼少時代から青年期、そして息子たちの世代に引き継がれていくまでが團十郎の妻の立場を中心に描かれていて、最後まで読み終わったときには壮大な物語を読み終わったという、疲れにも似たなんとも言えない満足感があった。
ただ、3人称で書かれているが、團十郎目線で書かれているところと妻目線で書かれているところが場面ごとに変わるので、少々読みにくかった。
特に中盤はコロコロ変わるので、今誰目線なんだっけ?とたまに遡ってよくよく読み直さねばならなかった。
私は飛ばし読みというか流して読むことがあるので、そういう読み方をする人は注意した方がいいかも。
坂田藤十郎と團十郎の対面シーンは決して派手な場面ではなくむしろ静謐さが漂っているにも関わらず、じわじわと迫る迫力のようなものが感じられてすごく印象的だった。
あとは、團十郎の妻が最後に幼少期を懐かしんで時代の移り変わりを感じる場面も、この大きな物語の締めくくりとして読み手にとっても感慨深いものがあった。
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初出 2019〜20年「オール讀物」
歌舞伎の脚本も書いていた作者ならではの、奥行きの深い初代市川團十郎の一代記。
8歳の時に後に妻となる恵以と出会ったのが、修行僧が生き埋めになって入寂するのを取り巻く見物人の中で、二人ともこの場面が深く心に残っていた。
子役として踏んだ初舞台で大暴れして舞台道具を壊して評判になり、大名屋敷に呼ばれ刀を渡されて「荒事」を見せるように言われると、障子を切り倒すして感心されるという武勇伝を残す。以来「荒事の開山」への道を歩むが、体を赤く塗って神仏の化身、顕現を、人間を超えるものを演じたこと、父母が成田山に祈願して授かったという縁で信心したことから「成田屋」の屋号で呼ばれる。
団十郎は自分で脚本も書き、「江戸随市川」といわれるまでに芸を高めていくが、妻の目を通して、舞台で憤怒のエネルギーを放つ團十郎を「人間の謎」に迫ろうとして表現しようとしていたと捉えているのは心にとまった。
息子で團十郎の名を継ぐ久蔵が、父をまねて褒められていたのが、父が殺されてから父に迫ろうと悩み、父とは別の表現を生み出して大当たりを取っていく。恵以がそれをを心配しながら見守り、自分の人生の意味を考えるラストを読んで深いいい物語だと思った。 -
書評を読んで惹きつけられ、このジャンルを初めて読みました。ミステリーばかり読んでいるので、古文に思えるほど。登場人物の名前がとにかく難しく、日本人かよ!と自分に言いたくなりました。歌舞伎は江戸期最先端のエンタメだったんですね。自分もその場で見ているようで、ワクワクしました。荒事をするようになったことや海老蔵ビギニングが手に取るようにわかりました。なぜ成田屋なのかも。当時と同じ舞台が見られるなんて、まさに奇跡ですね。上方役者と対峙した時の会話、なるほどなあと思いました。当時の生活が目の前に蘇り、パワフルな時代だったんだなあ、と実感。現代人の方が大人しくて鬱屈してるのでは。そして、ジェンダーの点でも解放的なようで、豊かな時代だったのだと思えます。とても楽しめました。
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初代市川團十郎、予備知識なく読み始めた。
ぐいぐいと引き込まれ(時に読みながら、ぐっと力も入ってしまったり…)
後半はもう止められず読了しまった。
長い歳月を経たような深い感動が胸いっぱいにしみわたる。
江戸の時代の歌舞伎のバックステージ、それを支える妻の、家族の物語。
ただ、時代背景が地震、津波、富士山の噴火、生類憐みの令の時代、と
生きることが大変な時代。
ストーリー展開とともに、人として(特に今こんな不安の世の中に生きる中で)どんな心持ちで生きるか、そして、ことを成したいと願うならば何を大切にすべきか、そんな多くのことを気付かされた気がする。 -
【五月襲名披露。〈市川團十郎〉はこの男から始まった】〈荒事〉の開祖にして最後は舞台上で刺殺されたカリスマ。謎多き初代團十郎の生涯を元禄の狂乱と江戸歌舞伎の胎動とともに描き切る。