ついでにジェントルメン

著者 :
  • 文藝春秋
3.31
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本棚登録 : 2272
感想 : 204
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163915234

作品紹介・あらすじ

編集者にダメ出しをされ続ける新人作家、女性専用車両に乗り込んでしまったびっくりするほど老けた四十五歳男性、男たちの意地悪にさらされたないために美容整形をしようとする十九歳女性……などなど、なぜか微妙に社会と歯車の噛み合わない人々のもどかしさを、しなやかな筆致とユーモアで軽やかに飛び越えていく短編集です。

感想・レビュー・書評

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  • 菊池寛が出てくるということで興味を惹かれて読んでみた作品。長編ではなく短編集だった。
    菊池寛が出てくるのは2話。

    第一話「Come Come Kan !!」では新人賞を取ったきりパッとしない作家・原嶋覚子(さめこ)にアドバイスを送る。と同時に騒動も起こす。
    この菊池寛が意外な設定なのだが、私は楽しく読めた。かなり前に読んだ『文豪たちの悪口本』で散々罵られていた菊池寛だが、こういう構って感があったからなのかなとも思ったり。

    最終話「アパート一階はカフェー」は菊池寛の生きた時代が舞台。女性が自立して生きるというだけでこれほど大変な目に遭っていたとは。『純喫茶』の意味も分かった。
    二話の菊池寛に共通するのは明るいし楽しい。特に最終話の方は距離感もほど良くてこういう菊池寛なら楽しく付き合えそうなどと思ってしまう。さらには最終話では谷崎潤一郎の再婚話も出てくる。谷崎の最初の妻を巡る話は『文豪たちの悪口本』で触れられていたので興味深い。

    第二話以降は様々なテーマが続く。作家と創作物の話がベースなのかと思えばそうでもない。
    不倫小説で一躍有名になった作家・毛利が久しぶりに舞台となったホテルを訪れて、あまりの環境の違いに驚く第二話「渚ホテルで会いましょう」。
    女性専用車両に乗り込む青年がなぜかゲームの世界に入っていく第三話「勇者タケルと魔法の国のプリンセス」はごめんなさい、途中で挫折。
    高級寿司屋に乱入してきた乳児連れの女が周囲の困惑をよそに酒と鮨を堪能していく第四話「エルゴと不倫鮨」。
    夫の浮気で地元に帰れば何故か舅が追いかけてきて同居することになる第五話「立っている者は舅でも使え」。
    海外の文学小説の独自考察から自身の人生を切り開いていく第六話「あしじみおじさん」。

    印象深かったのは先に書いた菊池寛が登場した二話だが、「立っている者は~」も面白かった。他のレビュアーさんも書かれているが、もう少し先まで読みたかったり深堀りして欲しかった作品が多かった。
    第六話での、ハイジや小公女、家なき子など貧困者や弱者が富裕層に救われるという設定の多さはなるほどと思うし、主人公たちが変わらないのに受け入れられるというのも興味深い話だった。

    タイトルが『ついでに』というだけに、この作品に出てくる女性陣の強さに比べて男性陣は一歩引いていたりやり込められたりしている。だからといって男女の対立を描いた話でもない。苦しい状況にあって藻掻きながらも自分らしさを突き通し最後には笑って前を向く話でもあった。

    • しずくさん
      『ついでにジェントルメン』のタイトルが絶妙ですね。非公開で本棚にあげようっと!
      『ついでにジェントルメン』のタイトルが絶妙ですね。非公開で本棚にあげようっと!
      2022/08/31
  • 「世界の見え方がちょ〜っとだけ変わる7編」。
    なるほど。
    著者初の独立短編集だそうだ。

    旧態依然としたルールとか、とぼけたおじさんとか、
    全体として男性優位な価値観念をほんの少し打ち破っていく内容の物語たち。

    ライトに読めて、少しトゲが突き刺さる。
    男性はぼんやり生きちゃいけないですね。

    それにしても、菊池寛。
    なかなかおもしろいお人だな〜

  • 装丁が綺麗で思わず手が伸びた♪
    柚木麻子さん、これでまだ2冊目!
    随分前に「伊東くんA to E」を読んだけどなんだか合わずで、ちょっと疎遠になってた。

    そして今回、、
    全7話の短編集。
    わーなんかめっちゃ個性的なんですけど〜。
    どの主人公も他力本願で結構クセ強め。笑
    わりと突拍子もない話が多いので、これを面白いととるか、受け入れられないか、読む人によって好き嫌い分かれやすい本じゃないかなと思う。
    個人的に強く印象に残ったは「あしみじおじさん」と「エルゴと不倫鮨」。
    どちらの主人公も自分勝手で共感は出来ないんだけど面白かった。
    あとなんのこっちゃ分からなかったのが「勇者タケルと魔法の国のプリンセス」。←個人の理解力の問題です笑
    頭に入ってこない話もあったけど、ライトだし結構楽しめたかな。

    この作品は柚木さんの中では変化球っぽいのかな?次読むときは「あまからカルテット」とか王道っぽいのいってみようかな。

    • mihiroさん
      一休さ〜ん、こんばんは(*^^*)
      どうも赤いのに目が惹かれるみたいです。
      この表紙もだけど、綿矢さんの「嫌いなら呼ぶなよ」も装丁につられま...
      一休さ〜ん、こんばんは(*^^*)
      どうも赤いのに目が惹かれるみたいです。
      この表紙もだけど、綿矢さんの「嫌いなら呼ぶなよ」も装丁につられました!
      こういう単純な人間もいるから装丁って大事ですね〜!
      一休さんも仲間〜〜笑(σ´з`)σ
      2024/01/08
    • 1Q84O1さん
      はい!
      単純な人間ですw
      いやいや違う違う、私は装丁の魅力を目に刻み込もうと思って!(◎o◎)
      同じか…w
      はい!
      単純な人間ですw
      いやいや違う違う、私は装丁の魅力を目に刻み込もうと思って!(◎o◎)
      同じか…w
      2024/01/09
    • mihiroさん
      ≧(´▽`)≦アハハハ
      仲間仲間('A`)人('A`)ナカーマ
      ≧(´▽`)≦アハハハ
      仲間仲間('A`)人('A`)ナカーマ
      2024/01/09
  • 柚木麻子作品 3冊目。
    期待して読み始めた。
    7話の短編集で、ジェントルメン、というだけあってどの話にも様々な男性が登場する。

    1話目は、なかなか原稿を認めてもらえない女性が、何と文藝春秋社を舞台にし
    これまた何と、菊池寛との話・・・・・少し
    変わっているのだが・・・・・

    どの話も、もう少し続きが読みたい!
    やはり、短編集は“あらッ”という感じで終わってしまうことが残念。
    私は連作の方が好きかな?


    私に合わない!話があった。
    アニメ、ゲームものは申し訳ないが、
    遠慮したい。 (柚木さんごめんなさい^-^;)

    気に入った話も、もちろんあった。
    「立っている者は舅でも使え」と最終話の
    「アパート1階はカフェー」このアパート
    とは実在していた「大塚女子アパートメント」文京区大塚にあった。男子禁制で
    今では考えられない差別があったらしい。
    あ!忘れていた!この話は、どうやら
    昭和初期の設定だ。谷崎潤一郎が登場する。ここで再び菊池寛も登場。
    この話こそ、もう少し続きが知りたい!
    チョマ子ちゃんのことが・・・・・


    2022、6、22  読了



    • ポプラ並木さん
      アールグレイさん、最近よんだショートショートはダメだった。。。自分も長編がすきなんだなぁ、と思います。男子禁制アパート!面白そうだね。
      アールグレイさん、最近よんだショートショートはダメだった。。。自分も長編がすきなんだなぁ、と思います。男子禁制アパート!面白そうだね。
      2022/06/23
  • 短編7編。

    1話と7話には、作家菊池寛が現れる。
    意外すぎて、ちょっとコミカルでユーモアもたっぷりで楽しめた。
    どれも一見して普通のおじさんのようでいて、いやジェントルマン風なのか…とにかく男たちが関わる物語なのだ。
    ちょっとというかやや癖もありというか…ズレているというか、それを当の本人が気づいていないのが面白い、思わずニヤリとしてしまう。

    Come Come Kan‼︎
    渚ホテルで会いましょう
    勇者タケルと魔法の国のプリンセス
    エルゴの不倫鮨
    立ってる者は舅でも使え
    あしみじおじさん
    アパート一階はカフェー

    エルゴと不倫鮨の赤子を抱いた女の食べっぷりが圧巻だった。
    次々と注文する細かな指示も嫌味を感じなかった。
    この女、何者ぞ!


  • エルゴの話と舅の話が面白かった。

    後は菊池寛の話も。

    全体的に男性社会の中で色々と抱え込んでいる女性達がスカッと前を向いていく話。

    絵本みたいな可愛らしい表紙と面白いタイトルです。

  • 7つの短編集。
    どれも印象が強く、続きが読みたくなるくらいおもしろかった。
    特に菊池寛の話とエルゴの話がよかった。
    菊池寛は1話と7話に登場し、とてもユーモラスに描かれる。ぜひ生きてるときに会ってみたかった。
    エルゴは、赤子を抱いた女性の、食の豊富な知識と通な食べ方から只者ではない感が漂い、食べっぷりが気持ちよかった。
    男女差別とか、常識とか、まだまだ変化している過渡期だと思う。今の常識を少し疑ってみてもいいのかもしれない。

  • 短編集
    菊池寛
    かっこいい女性
    文藝春秋のサロン
    アイスコーヒーに添えられたガムシロップ
    カフェ


    柚木麻子さんが書く女性は、細くても一本のすじが通ってて、しなやかでカッコいい。
    「Come Come Kan!!」と「エルゴと不倫鮨」が良かった。
    作品中のお料理もどれも美味しそう。
    私も卵焼きとしらす丼食べたい。
    それから、コーヒー豆を炒って煮出したガムシロップも!
    図書館本

  • 梅雨空の日曜日にカラリと笑えた小洒落た今様の落語みたいな短編7篇の作品です♪
    菊池寛やら谷崎潤一郎やらも闊歩させてあるけど、とりわけの気に入りは、下心満々の男共が美女を連れてくるオシャレな会員制イタリアン創作鮨店に突然現れた卒乳したての乳飲み児連れの体格いい女性がカッコよく掻き回す「エルゴと不倫鮨」および、美容整形に来た待合室で出会った少女小説の世界名作全集で人生が思わぬ展開で拓けそうな若い女性の「あしみじおじさん」が美味しゅうございました!
    作者の知的な雑学や博識もあちこちで感じられて面白く読了しました。

  • 軽やかな文章で一気に楽しく読めました。
    登場人物が、困ったり悩んだりしながらも、その状況をポーンと大きく超えていったり、自分に都合の悪いことは見ないふりしていたら、思いもよらない展開になったり。とても楽しめました。
    どの話も面白かったけれど、特に「Come Come Kan!!」と「エルゴと不倫鮨」が良かったです。
    とりあえず、菊池寛を画像検索しました。確かに愛嬌がある?!あと、鮨とワイン!美味しそうだな~

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著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚木麻子の作品

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