失くした「言葉」を取り戻すまで 脳梗塞で左脳の1/4が壊れた私

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163916637

作品紹介・あらすじ

忽然と姿を消した人気コラムニストの約17年ぶりの新刊は、愛と笑いに溢れた120%ポジティブ闘病記!

2009年11月、頭に激痛が走り「くも膜下出血なので今すぐ開頭手術を」と診断されたのに、手術を拒否して病院から帰宅。1週間後に手術を決意し受けたところ、くも膜下出血とは別の箇所で脳梗塞を発症、左脳の1/4が壊死して、目覚めたときには、利き手だった右手に麻痺がでて「お母さん」「わかんない」の2語しか話せなくなっていた……。

「左脳を大きく損傷した私は、かなりのことがわからなくなっていました。自分が自分であることはわかる。でも自分の名前も、数字も、時計も、言葉も、常識もわからない。少し前まではふたりの子どもを育てながら、大量の原稿を書いていた私が、ほとんど赤ちゃんのような状態になっていました。」(本文より)

1987年に『週刊文春』で「おじさん改造講座」の連載をスタートさせて以来、高速タイピングで小気味よい文章を次々と生み出してきたコラムニストが「言葉」を失う。そんな悲劇的な状況でも「絶望してもしょうがない」と明るく受け止めて、家族や友人、医師、言語聴覚士、理学療法士らに支えられながら、日々を楽しみつつ前向きにリハビリを続け、再び長い文章が書けるようになるまで。
「いずれ本を書くときの資料になるはずだ」と、カセットテープに録音しておいた手術前後の家族との会話、当時の夫の日記、実際の脳のMRI画像、担当の医師や言語聴覚士、理学療法士に著者本人が取材して得た証言を織り込んで、失語症になった当事者自らがパソコンのキーボードを一文字一文字打って綴った渾身のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • いや~、闘病記(だよね?)の感想として実に不謹慎だとは思うが、これは面白かった!あの「おじさん改造講座」の清水ちなみさんが、くも膜下出血と脳梗塞によって左脳の機能の多くを失いながら、その脳の損傷からは考えられないほどに回復していく、その過程を綴ったもの。病状はかなり深刻で、今現在も様々な困難のある生活なのだが、とにかくこの本を貫いているのは、明るさとおおらかさだ。無理矢理なポジティブ思考ではない、この自然なスタンスはどこから来るのか。まったく感嘆しきりであった。

    週刊文春連載「おじさん改造講座」は、軽妙で目のつけどころが鋭く、愛読していた。OLたちにアンケートを送り、手書きで回答して送り返してもらい、まとめる、というアナログな作り方。「インターネット時代到来前の最後のきらめきだった」というご本人の言葉は、実にその通りだなあと思う。取るに足りない、でもちょっと面白かったりヘンだったりする日常のことを、誰かに語りたい共有したいという気持ちを、たくさんの(ごくフツーの)人が持っているということに気づかせてもらったと思う。今思えば、なんだけど。

    その清水さんが、よりにもよって「言葉」を失うとは。脳梗塞の後遺症はまったく人それぞれらしいが、清水さんの場合は、失語症と右の視野の欠損、右手の麻痺が主なものだったそうだ。失語症の症状について当事者が綴ったものって、他にもあるのだろうか。私は初めて読んだ。字が読めないとか、考えていることが言葉にならないとか、それだけでも大変だが、さらに、ものを見ても使い方がわからなかったり、上下左右が認識できなかったり、ちょっとどんな感じなのか想像が難しい症状があった(今でもある)という。

    普通は悲嘆に暮れるだろう。いや、清水さんだって嘆いたり泣いたりしたはずだ。子供さんだってまだ小学生と中学生だったんだし。それでも、自分の現状を受け止めて、あれこれ工夫しながらリハビリに励む姿は、ジメジメしていなくて本当にたくましい。そして非常に客観的だ。ここに大きな特徴があるのかもしれない。尋常ならざる状態になった自分を、興味津々で観察しているような感じ、と言ったらいいだろうか。湿っぽさのない軽々とした文章で、あっという間に読み終え、なんだか勇気づけられるような気さえしてきたのだった。

    二人のお子さんの姿がいじらしく、ちょっと泣けてくる。また、「旦那さん」がとても良い。ご自分のお母さんとはずっと葛藤があったらしい清水さん、自力で良い家族を作り上げたんだなと思った。

  • こういう本を読むと、もし自分がかかったら、もし家族が…って色々と考えてしまいます。でも、著者の清水さんも、周りの家族もすごく強いんですよね。脳梗塞に限らず、事故や震災、病気、明日は我が身なので、とにかく、日々を大切に。前向きに。当たり前にできていることを噛みしめて生活しようと思います。

  • 失語症となった著者の発症、リハビリ、そして本を出すまでの歩みが、明るく前向きに綴られているのが印象的です。支えるご主人と2人の子どもたちの、今振り返っての言葉も併記されていて、リハビリはご本人の意欲はもちろんですが、それを分かち合う周りにいる人の存在が大きいと感じました。

  • 舅が脳出血から手術ーリハビリー脳梗塞ー
    寝たきりー胃ロウとなったけど、笑え無かったなぁ~。


    スッゴいよ。
    本人、夫、中1のお兄ちゃん、小2の妹。

    妹さんが大学生になり、月日は経ったけど続くリハビリ生活からの本の出版。
    チーム清水の勝利だわ!


    でもでもね、脳梗塞の2年前から体は注意換気をしてくれていたのに、なんで無視したの?
    薬をなんで飲まなかったの?
    日常の忙しさに後回し?
    わかるけど。


    それを教訓に病院に行きました。
    右膝が痛くてシップしてたけど、レントゲンを撮って、膝に注射、ガッチリサポーター、
    「歩いてはダメです。」と。

    うーん。ありがとう本。







  • 脳梗塞で脳の4分の一を失い、失語症、右半身の麻痺などから、リハビリを経て、体験を雑誌連載し、書籍化までされた著書。
    料理や裁縫など、今のところ健常な自分よりはるかに難易度の高いことをされていて、尊敬する。
    また、日々の家事や趣味をひとつひとつ丁寧にこなすことが、もっとも効果的なリハビリでもあり予防でもあるのかなと思った。
    ポジティブであることも、光を感じた。

  • 916(闘病記)

  • 血圧200あるのに降圧剤は拒否、
    激しい頭痛は気功の先生から電話で「気」を送って貰ってしのぐ
    その五日後に行った病院ではくも膜下出血の診断
    でも手術はイヤ、と拒否して帰宅
    なんか凄い
    その後周囲の説得により手術、失語症に
    前に読んだ本(こう見えても失語症です)にも出てきたが、漢字より平仮名の方が思い出せない
    後頭部で髪を結ぶのはとても難しい
    歩けるのはありがたいこと
    握力を強くするには腕を動かさないといけない
    レッドコード使いリハビリ
    台詞のない漫画、クリちゃんに文字をつけてみる
    110、地図が分からなくなる人も
    144ページ、漢字とひらがなについて

  • 面白かった!脳ってすごい。人間ってすごい!
    脳梗塞や失語症ってとてつもない大変な状態、というイメージだったが、発症当時やそこから回復していく過程を客観的にしかも明るく描写する当事者の本ってなかなかないのでは。
    病気の経験があっても、必要な助けを得て社会生活を送るひとりの人間に変わりはなく、かわいそうお気の毒になどと偏見を持たずに、こんな人もいるよね、みんなそれぞれで当たり前だよね、という感覚をポジティブに再認識させられた感じ。
    そういう意味ではD&Iが注目される昨今にもってこいの内容とも言える。

  • 【人気コラムニスト、約17年ぶりの新刊】失語症になった著者が、テープに残されていた手術前後の家族との会話や関係者の証言を織り込んで自ら綴った渾身のノンフィクション。

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