- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163917276
感想・レビュー・書評
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2019年も押し詰まった頃に中国で突然騒ぎは始まり年明けには我が国に立ち寄ったダイヤモンドプリンセス号で大騒ぎとなったコロナ禍の始まりの騒然とした報道が今だに鮮明に思い出せます。
誰しもが身近であれ見聞であれ多かれ少なかれの影響を受け続けて今に至るのですが、その渦中に小学生だった女の子二人が主人公の2030年頃らしき設定のお話しです。
しかしそこは瀬尾まいこ作品です♪
出だしは脈絡が掴み難い展開なのが、中盤以降にはきちんと見事にすべてが繋がって行きなるほど と腑に落ちるストーリーになっておりました。
決してアンチテーゼとして捉えるのではなくて、コロナ禍での子どもの経験体験をマイナスだけにすることなく前向きにもしくは成長の糧にすることもできるよね と可能性にフォーカスした爽やかでうるっともさせてくれる素敵な近未来作品に仕上げてありました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
子どもの気持ちも大人の気持ちも、しっかり伝わる。瀬尾まいこさんの文章は、押し付けがましくないけど、大事なことはおさえてて、寄り添ってくれる。今回もそんな気持ちに。
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読んで良かった。
実際にあの時間は何だったのか、まだ数年しか経っていない現在、そう考えることがある。
仕事でも時間差出勤で部屋に入るのは一人だけとなり、誰とも話をしない日が続いた時、誰かと話がしたい、人の声が聞きたいと思った。他の部屋の人に久々に会えた時の嬉しさ、お互いあまり近づいてはいけないと思いつつも、久々に話しをする楽しさで、気が付いたら数十分経過していたこともあった。
この時すでに働いていた私ですら考えるのだから、子供たちの奪われた時間はどれだけのものだったのだろう。
この本を読んで、それでもあの時間があったから今があると思える人がいっぱいいれば良いなと思った。
そして私も誰かと過ごす時間の大切さを忘れないようにしたいと思う。 -
待望の瀬尾まいこさんの新作。コロナ色が強い作品だと思って読み始めましたが、それに、いじめと引きこもりというテーマが重なり、元教師の瀬尾さんらしい作品でした。人と人の繋がりの素晴らしさを感じさせる、いつもの瀬尾さんの世界は相変わらず。
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やっぱりいいな、瀬尾まいこさんは。思いっきり瑞々しい気持ちにさせられました。
小学3年生の冴と心晴。2人の成長が瑞々しく描かれています。
新型コロナが蔓延して、冴は母親と2人で不登校の男の子に定期的にパンを届けるようになり、心晴は分散登校の時に机の中に入っていた手紙に気づく。
冴は中学生になり、母親が夜の仕事をしていることでイジメに遭うようになり、心晴は机の中の文通をしていた子との約束を果たせなかったことで不登校になる。
そんな2人がある就職試験会場で出会い、仲良くなっていくのだが。
【繋がり】。これまで色んな本を読み散らかしてきた私ですが、それでもこの物語には繋がりを感じずにはいられませんでした。きっと物語の中だけでなく、この世の中もたくさんの繋がりがあるんだろうなと感じさせられた一冊。前を向いて歩き出した冴と心晴に喝采を浴びせたい。 -
コロナの時に小学3年生だった子達の15年間の物語。
この世代のことをディスタンス世代というらしい。
色々な経験をしたり、人間関係を築いたりする時期に、様々な制限を受けてしまった子ども達。
その後、思春期になる頃にいじめや不登校などになるのだけど、作中でも書かれているようにコロナだけが理由という訳ではない。
きっかけの一つとして前半にコロナ禍の様子が描かれているけど、中盤~後半にかけての悩み苦しむ様子や立ち向かおうとする姿が印象に残った。
元教師の瀬尾さんだけに、中高生の心情描写はさすがだなと思った。
それぞれの世代で失ったもの、得たもの色々あるけれど、頑張っていこう!と前向きな気持ちになれた。
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心晴と冴。二人の視点が切り替わりながら物語が進んでいきます。
基本的には小学生から社会人へと成長していく流れですが、時々、「あれ?これはいつの時点の話?」という時系列不明のシーンが挿入されていることがあり、答え合わせをしながら読書をしている感覚でした。
伏線が至るところに散りばめられているので、楽しく読むことができます。
世界規模の感染症が流行したあの頃。
まだ小さな子どもだった二人にとっては、思いどおりにいかないことばかりで、明るい未来なんて想像できなかった。
そんな彼女たちが少しずつ大きくなり、自分自身の力で環境を変え、夢を持ち、未来を切り拓いていく。
二人とも、自分なりに進んでいこうする姿が非常に素敵でした。
何もできずに苦しくてたまらない時間があったとしても、確実に時は流れていくものです。
そして振り返ってみると、当時とは違った視点で受け入れられることもあるかもしれません。
人生において、寄り道したり、立ち止まったりする時間もきっと無駄にはならないんじゃないかなぁ。そんな優しい気持ちにさせてくれる小説です。 -
ハラハラしたり、ヤキモキしたり、とても切なくなったり、どうなっていくんだろうかとページをめくる手が止まらず一気に読んでしまいました。
奪われたものや、失ったもの。
距離や時間。
幸せとか愛という形のないものが確かに見える瞬間。
ラストに向かうにつれて読み終わるのが嫌だなと思うくらい、素敵なお話でした。
それぞれのエピソードに付けられているマークも可愛い。 -
コロナ禍以降に出版された小説には
コロナのこと、マスクのこと、消毒のこと、ソーシャルディスタンスのこと等々が
必ずと言っていいほど書かれていたような気がする。
例えば、主人公が出かけるとき「マスクをつける」という表現。
わざわざ書かなければならないのか?
と思ったりしたが
書かなければならない社会だったのだろう…
得体のしれないウイルスに誰もが過敏になっていたから。
と、どこかで納得している自分もいたりする。
ずーっと先になって
コロナ禍での生活が描かれた小説を読んだとき
私たちは何を思うのだろう…
そんなことが気になったりする。
〇〇世代と言われて思い浮かぶのは
団塊の世代
バブル世代、就職氷河期世代
団塊ジュニア世代、ミレニアル世代
ゆとり世代、Z世代。
そして、私たちの世代は「新人類」と呼ばれた。
私がどの世代も共通していると思っているのは
”自分たち”が決めたのではなく
社会が決めた呼び方だと言うこと。
私自身、「新人類」なんて思ったこともないが
何度「新人類やなぁ」と言われたことか…
コロナ禍を生きたのは限られた世代だけではない。
この時代を生きている全ての人が言うなれば「コロナ世代」だ。
(今後、何と呼ばれるかはわからないが)
コロナ禍に翻弄されたすべての世代に、それぞれの問題がある。
小学3年生の冴と心晴もまた
コロナ禍に翻弄され、様々な制約の中で少女時代を過ごした。
でも、彼女たちの礎を築いだのもまたコロナ禍だった。
この物語では
コロナ禍の時間よりも
その後の時間が長く描かれている。
どんな世代に生きたとしても
その時はとても大変で気付かないかもしれなけれど
長い人生の中では決して無駄な時間ではない。
そんなことに気付かせてくれる、希望に満ちた物語だった。