- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166403301
作品紹介・あらすじ
石井好子といえばお料理エッセイ。沢村貞子といえば献立日記。本書は、日本人女性に愛され続ける料理随筆をものした二人の、ドラマチックな前半生の記録を主な内容としています。シャンソン歌手石井好子は大臣の娘にうまれ、東京音楽学校(現・東京藝術大学)でクラシックを学んだ本格派ですが、戦後、単身アメリカへ歌手修業に飛び出します。サンフランシスコでポピュラー音楽の発声法やダンスのレッスンを受け、一流の舞台を貪欲に観にゆきます。しかし、それでは飽き足らず、運命の土地・パリへ。そこでキャバレーの主役の座を射止め、「シャンソン歌手」石井好子が誕生するのです。浅草にうまれた沢村貞子は、芝居一家で育ちますが、浮いた環境に反発して教師を目指し、日本女子大に進学します。しかし教師の世界の偽善に嫌気がさし、一転、劇場女優へ。左翼活動に関わることになり、治安維持法違反で二度も逮捕され、計一年以上、獄中生活を忍びます。大胆に、真っ直ぐに生きた二人の人生の記録をお読み下さい。
感想・レビュー・書評
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確かに波瀾万丈。それゆえに、読んでいて面白い。
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『私の台所』を読んでから沢村貞子さんが好きになりました。今回はお料理上手のちゃきちゃきおていちゃんの知らなかった面を見ることが出来ました。情に厚くまっすぐな性格はわかっていたけれど、信念を曲げずにいたことで逮捕されていたこと、駆け落ち同然で愛した人と添い遂げたこと。(この方がつかれた一度っきりの嘘には驚愕しましたが・・・)ちょっと気難しそうなお相手さんのように思えましたが、おていちゃんの尽くす愛情は溢れんばかりで本当に脱帽です。
石井好子さんもかっこいい女性です。この時代、女性ひとりで外国へ渡り、キャバレーで歌を歌うなんて。夢を叶えるための行動力がハンパなくて。女性たちがエネルギッシュな時代だったのでしょうか。ときには、ちょっぴりイジワルな視点で物事や人々を眺めたりもしてますが、そこが他人に自分を良く見せたいとかの上辺だけの文章じゃないんだなぁと、石井好子さんのこと信頼できました。
波瀾万丈に生きてきた人たちの随筆って本当に面白いです。 -
詩歌や小説にも負けないほど随筆好きな私が、十二分に堪能させてもらったこの12巻のラインアップです。
このうちの8割位しか読んだことがありませんが、まさに精選された読み応えのある選集だと思いました。
第1巻 幸田文 (川上弘美選)
第2巻 森茉莉/吉屋信子 (小池真理子選)
第3巻 倉橋由美子 (小池真理子選)
第4巻 有吉佐和子/岡本かの子(川上弘美選)
第5巻 武田百合子 (川上弘美選)
第6巻 宇野千代/大庭みな子(小池真理子選)
第7巻 白洲正子 (小池真理子選)
第8巻 石井桃子/高峰秀子(川上弘美選)
第9巻 須賀敦子 (川上弘美選)
第10巻 中里恒子/野上弥生子(小池真理子選)
第11巻 向田邦子 (小池真理子選)
第12巻 石井好子/沢村貞子(川上弘美選)
たまたまですが、この18人はほとんど読んでいて、なかに未読のものがありました。
選出はあくまでふたりの女性の小説家のアンテナにひっかかったというか、好みというものであるということだと思います。
私などは、なぜ森崎和江や宮本百合子が、鈴木いづみや北沢洋子が、河野信子や伊藤野枝が、草間彌生や平塚らいてうが、石牟礼道子やナンシー関が、吉永みち子や加藤登紀子が、米原万里や中山千夏が、落合恵子や澤地久枝が、戸川昌子や瀬戸内寂聴が、佐多稲子や藤原ていが・・・などと不満のひとつでも言ってみたくなったりします。
ただ残念ながらこのせっかくの豪華な企画の一番の致命的な瑕疵は、おそらく女性の手によって選ばれたアンソロジーだという一点につきるという気がします。
私なら一も二もなく男性に委ねた、それこそものすごーい衝撃的な記念碑的な選集にすると思います。