蒋介石 (文春新書 40)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166600403

感想・レビュー・書評

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  •  中国の歴史的人物である「蒋介石」の評伝はほとんどないという。そういえば有名な割にはその生涯を詳しくは知らない。
     本書の著者は「ノンフィクション作家」となっているが、現在日本における第1級の「歴史家」と思う。その著作だけあって、本書はさすがに「蒋介石」の生涯がよくわかる詳細なものだ。
     「蒋介石」は若い時から中国の著名な指導者であり、激動の中国情勢の変転の後に内戦に敗北し「台湾」へ撤退し89歳で死去するまでの長い生涯を現役で過ごしただけに、本書は新書としては内容満載である。
     本書を読んで当時の「日本」が、この混乱する「中国」の将来を左右する重要な存在であったことがよくわかった。
     そもそも「日本」が「中国」に進出しなかったら、あるいはアメリカの要求に屈して「中国」から撤退していたら、「中国」において共産党政権の成立はなかったのではないのか。
     また、「蒋介石」の日本敗戦時の「恨みに報いるに恨みをもってせず」の言は、共産党との内戦がその背景にあったとしても、政治指導者としては凄いとしか言い様がない。
     日本敗戦後の中国の内戦についても、詳細を追いかけた本はほとんどないように思えるから、実に興味深く読めた。
     本書は、「蒋介石」と激動期の「中国」を知ることができる良書であるが、混乱する激動期の中国情勢の中で、なじみのない多くの中国指導者が多数登場するだけに、一冊ですべてがスッキリとわかるわけではない。
     本書を読んで、「中国」を理解するためには、まだまだ多くを知らなければならないと思った。

  • 視野の狭いとらえ方じゃないかな?結局蒋介石に対する評価って、台湾でも定まってないんだよね。

  • ●:引用

    ●あとがき
     日本での蒋介石像は、反共の指導者という一点にとどまりきわめて狭い視野で捉えられていたように思う。とくに1960年代、70年代は、その一点のみで、蒋介石像を正確に理解する努力に欠けていた。(中略)しかし、1930年代の日本と中国の検証を続けるには、この一点のみでは理解できない面がある。日中戦争は客観的にいって、日本の政治、軍事の誤謬の結果であり、これを単純に正当化することはできない。ただこのときに、国民党と共産党の間に日本に対する見解の違いがあった。国民党は日本がとにかく誤りを認めるような外交攻勢を行うが、共産党はこれを契機として革命への手がかりとすることに必死になった。私は、日本の軍事指導者が犯した誤謬をもっとも的確に見抜き、世界的視点で意見を述べていたのは国民党の側だと思う。蒋介石という中国の指導者を日本との関係で見るとき、この視点を忘れてはいけないだろう。当時、日本では「中国は社会があって国家がない」と侮る空気があったが、そのことをもっとも自覚していたのは実は中国のこの期の指導者でもあった。それゆえに彼らは自らの思想(孫文の三民主義思想)をもとに戦い続けたのである。蒋介石はその中心に位置した人物だったのである。

     蒋介石が4回も結婚していたとは初聞にして驚いた。特に4人目の宋美齢とは、中華民国総統にふさわしい妻として、家系的身分の低かった3人目の妻と、宋家によって離婚させられていたとは。 

     陳立夫、陳果夫兄弟はCC団としては知っていたが、蒋介石の側近で、恩師(義兄弟)陳宋達?の甥であることを初めて知った。

  • 4166600400  284p 1999・4・20 1刷

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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