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- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166602209
作品紹介・あらすじ
梁塵秘抄と中世の絵巻に共通して登場する風景を見つけ出し、比較しながら、中世の人びとの生活と心情をたどる。また今様の謡い手と聴き手、謡われた場にも注目し、背景の社会構造を考察する。舟に乗る遊女の後生への祈り、山奥で修行をする聖の神秘的な姿、裕福な受領や武士の館のにぎわいから、信仰を集めた寺社の霊験記、洛中の庶民の祭りなどが繰り広げられる。いざ、中世への旅へ-。
感想・レビュー・書評
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『梁塵秘抄』に収められた今様の歌と、中世の絵巻にえがかれた人びとのすがたや風景を読み解くことで、中世の人びとの暮らしを解明している本です。
「はじめに」で著者は、中世の人びとの暮らしを知るために、ひろく貴賤上下の人びとが熱中した今様を知ることは欠かせないとしながらも、従来の歴史学の研究が政治史や思想史、経済史を中心とするものであり、歌の研究は遅れてきたと語っています。しかし、絵巻にえがかれた絵画についての研究が歴史学においても推し進められるようになり、著者自身も『絵巻で読む中世』(2005年、ちくま学芸文庫)という本を刊行して、中世の絵巻を手がかりに人びとの暮らしの実態にせまる試みをおこなっています。本書ではそうした試みがもう一歩推し進められており、絵巻とともに『梁塵秘抄』の歌が考察の対象にとりあげられています。
本書では、今様の内容から絵巻の一場面へ、あるいは絵巻の一場面から今様の内容へと著者の連想にしたがって議論が展開していくので、ややとりとめのない議論がつらなっているような印象もあるのですが、聖と遊女についての考察などは興味深く読むことができました。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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