- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166604876
感想・レビュー・書評
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本書を一言で言えば、「天才モーツァルトが、どの様にしてつくられたかをテーマとした簡潔な評伝(おすすめのCDガイド付き)」となるだろうか。
本書のタイトルの「モーツァルト 天才の秘密」という点については、この一冊で理解できる様になるだろう。従って、モーツァルトの天才が「才能なのか?努力なのか?はたまたその他の要因があったのか?」というようなことが知りたいという方には、非常にお勧めできる本である。
本書は新書なので、これが初めてのモーツァルト本という人も多いことだろう。そうした方々の中で、少しでもモーツァルトに興味を持ったのであれば、モーツァルトの関連本をもう数冊読むことをお勧めしたい。というのは、本書はモーツァルトの生涯については、あまり詳しくは書かれていないからだ。
一応、モーツァルトの誕生から死まで一通り書かれてはいるが、本書のテーマは「天才」にあったため、新書という限られた紙幅では、割愛せざるを得なかったところも多かったのだろう。
例えば、1785年2月、ウィーンにやってきた父、レオポルトが、成功した息子の姿を見て喜び、満足したことは書かれていない。
レオポルトがナンネル(モーツァルトの姉)宛てに送った手紙で、「お前の弟は家具類もすべて整った綺麗な家に住んでいる。私たちはあの子の予約演奏会の初日を見に入ったが、そこには身分の高い人々がたくさん集まっていた。・・・演奏会は比べようもない素晴らしさで、オーケストラも見事だった。・・・ハイドン氏は私にこう言われた『私は神に誓って正直に申し上げますが、あなたのご子息は、私が名実ともに知る最も偉大な作曲家です。ご子息は趣味が良く、その上、作曲に関する知識を誰よりも豊富にお持ちです』・・・」。
このような手紙を見れば、本書で描かれていたモーツァルト父子の晩年の関係とはまた違った印象を抱くのではないだろうか。
モーツァルトの生涯を詳しく知りたければ、「作曲家◎人と作品シリーズ」の「モーツァルト」(西川 尚生/著)や、「カラー版作曲家の生涯シリーズ」の「モーツァルト」(田辺 秀樹/著)などが手に取りやすくお勧めできる。
また、晩年の貧乏なモーツァルトをかわいそうだと思った方は、「モーツァルト」 (礒山 雅/著) を読めば、そのイメージが覆るだろう。
「モーツァルトの音楽と珠玉のCD」と題した名盤ガイドは、モノラル盤の古いCDも多く、入門者にはあまりおすすめできないラインナップになっている。中野氏は戦前の生まれなので、往年の名盤好みであることをお伝えしておく。本書で中野氏とインスピレーションが合った方や、もっと別のCDも聴きたいという方は宇野功芳氏、福島章恭氏との共著である「新版 クラシックCDの名盤」がお勧めである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小澤征爾についで読む。
音楽を奏でるひとと、つくるひと・・・
その違いは? あるんじゃないかな??
天才の秘密・・・
音楽をまったく知らない人間には、
むずかしかったわ。 -
モーツァルトの伝記。
天才の名を恣にするヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。
彼に才能が宿ったことには間違いない。
しかし、才能だけではあれほどの曲はかけない。
その才能を開花させたのは父レオポルトの時宜にあった教育にあったと述べる。
まさにその通りで、絶対音感を持ったヴォルフガングを旅に連れて行き「空間脳」を発達させた。
また、聴衆の前で演奏することは100回の練習に勝る。
そして、子供が大きく成長するまでに音に対する修練を積みえたこと。
最後に旅先で時代を代表する作曲家や演奏家に教授してもらえたこと。
これらがモーツァルトを天才に押し上げた要因だと筆者は喝破する。
本著にはお勧めのCD紹介コーナーまであるので、珠玉の録音を調べるにはちょうど良い本。 -
ただの伝記ではなく、現代事情をふまえた本なので、深くなりやすくて、何度も読み直しています。
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世にモーツァルト賛歌は数多いが、本書はモーツァルトという人間像を数多い情報を活用して浮き上がらせ、モーツアルトの人生と音楽と結びつける。モーツァルトが旅から得た師・技術・文化、ステージアーティストとして育った新鮮な感性、内田光子の言葉等は読んでいて深く共感できる。それにしても父レオポルトが大学で哲学と法学を学び、モーツァルトの家系にほとんど音楽家がいないことは以外だった。CDの紹介も親切。筆者のモーツァルトへの想いも強く伝わってくる。ぜひ読んでほしい。
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モーツァルトの生涯をわかりやすく知ることができて、有意義な本でした。ただ、お勧めCDではもっと新しい録音のものも紹介して欲しかったです。
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生み出すものが新しすぎたために苦しんだ天才、モーツァルトを見事に書いた本。
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どこがどう秘密だったのかよく分からない。
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映画『アマデウス』に影響されて、随分とモーツァルトのイメージが偏ったものになっていたけれど、この本でモーツァルトの本当の姿に接近できたような気がした。
目的がないまま手にとった一冊だけれど、この本ほど「天才」とは何かが明確になる本はないと思う。
もうちょい私がクラシックに明るければ、★5つつけられるくらい楽しめたかもしれない。