- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166604951
感想・レビュー・書評
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著者:水谷千秋(1962-、滋賀県、日本史)
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新書文庫
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天皇家よりも権勢を誇り、天皇のように振る舞った逆賊とされる蘇我氏の実像に迫ります。巷間言われる渡来人説は否定されていました。卓越した能力と先見性を備えた蘇我氏は、先進の技術・知識を持つ渡来人を使いこなし、国のかたちを整える諸施策を打ち出します。豪族としての権力基盤が弱かったため、乙巳の変で滅ぼされますが、この方向性は引き継がれます。屯倉のイメージがより具体的になりました。
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古代日本における最大の逆臣とも名高い蘇我氏。
その威は天皇家を凌ぐほど強大でありながら、一夜のクーデター(乙巳の変)にてあっけなく宗家が滅んだ大豪族。
古代史好きにとって、この一族を巡る謎と魅力は尽きない。
大和朝廷の政治史において重要な存在であったろうことは想像に難くないが、現代に至るまで、蘇我氏自体を中心に据えた本格的な研究が少ないというのは驚きだ。
日本書紀では、大化の改新の正当性を強調せんがために、彼らはことさら逆賊扱いされてきた。
本書は、政治家としての蘇我氏の功績に光を当て、偏向なき評価を与える必要性を訴える。
丹念に文献を検証し、冷静に諸説を検討し、中立の立場を守りながら、地道に考察を重ね、平易に解説しようと努める姿勢は、とても好感を持てる。
蘇我四代の祖・稲目は大臣として、大和政権の直轄領である屯倉の運営において、戸籍の作成や徴税といった実務にあたり、先進技術を持つ渡来人達を使いこなす行政能力に長けていた。
当初基盤の弱かった天皇家は、『官僚』として優れていた稲目や馬子に支えられ、姻戚関係を結び、不可分の存在として勢力を安定させていく。
蘇我一族は海外に対する視野も広く、仏教を通して日本をアジア文明圏に位置づけようとした先見性など、代々優れた才能を持っていた。
蘇我氏が構想し、準備しつつあった律令政治への移行を、言わば横取りしたのが大化の改新であるという説には瞠目したものだ。
奈良の明日香村を旅すると、そこかしこに蘇我氏の遺した気配や匂いを感じることが多く、甘樫丘に佇めば、真実、いにしえの日本を築いたのはかの一族だったのではないかと思い至り、不当なレッテルで貶められてきた彼らの名誉が回復される日を願う。
同じ気風を感じる本書の、網羅的で丁寧な論述は、質の高さと読み易さを両立させており、蘇我氏についての学究的な入門書としても最適な書である。 -
大化の改新では悪者のような印象で記憶していた、蘇我氏のことを深掘りしている。
何故、日本史の表舞台に登場したのか?どんな人物だったのか?などということも、良く分かっていない。
良く知られている冠位十二階は厩戸皇子が中心だったと勉強したけど、著者は蘇我氏が主体と展開しています。
蘇我氏は官僚の貌がメインだったが、徐々に豪族の貌が強くなり、天皇の外戚としての側面も強化されてきた。
まるで、藤原氏のようです。まさか、自分の子孫が、討伐した蘇我氏のような振る舞いをするとは思わなかっただろうな、中臣鎌足!
難しい単語はありますが、比較的、容易に読み進めることが出来ます。 -
まだまだ基盤が確立できていなかった天皇家側が蘇我氏を頼っていたという新たな解釈。■大王を中心とした体制がいつできあがり、何故ほかの豪族たちがそれに素直に従ったのか?がよくわからないけど、最初はきっと脆弱であったはずで、実態は傀儡であろうとも天皇家を中心とした政治基盤を強固にしたのは間違いなく蘇我氏の功績であるんじゃないだろうか。ただ、それが目に余るようになったところで乙巳の変が起きた。それも歴史の必然か。■その後の蘇我一族はどうなったんだろう。そのあたりもカバーしてほしかったなぁ。
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ふだんの自分と全く関係ない本を読んでみようと思って図書館で借りた。もともと歴史はけっこう好きだが、古代の謎は興味深い。資料が少なく、いろいろな想像が許されるのがいいのかな。歴史的には悪役のイメージがある蘇我氏を冷静に見る本。またこの時代の本も読みたくなった。
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やっぱり古代史の神武東征から蘇我氏や壬申の乱に関わる
話しはおもしろいね。
大学でこの辺の専門でいきる人生を歩んでいたら
むちゃくちゃ発掘とかしてたろうな〜。 -
蘇我氏というのもよく分からないので、この本を読んでみた。読んだところで「分かった感」はないだろうなと予測していたが、実際、ない。分かったことは「大化の改新」話にあるような蘇我氏悪者説というのが、かなり無意識レベルに我々に定着しているが、それはかなり怪しいこと。また、蘇我氏は大きな存在であったことは間違いないしても、何か例外的な存在であったわけでもないらしいということ。