- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166606306
作品紹介・あらすじ
いかにして、我われは、世界一の「風呂好き」民族となったのか。温湯浴は支流。温泉浴も傍流。風呂の本流は蒸し風呂にあり!あくなき追跡。くつがえる通説。入浴の知られざる文化史。
感想・レビュー・書評
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日本のお風呂の原点は、石風呂(つまり、蒸気浴・熱浴)という説にたち、各地の石風呂の痕跡をフィールド調査した報告が主体のルポルタージュ+研究レポートのような趣の本。風呂の文化的な側面より、風呂という仕掛けの歴史を追いかけている。
フィールドワークにあたっては「風呂」という字を含む地名(風呂ヶ谷とが、風呂ヶ窪とか、西日本に結構多いらしい)を丹念に当たっている。古来、風呂とはサウナ形を示しており、お湯につかるのは結構最近のようで、江戸の世になって「湯屋」が登場する。しかも温泉の歴史は古く、風呂と温泉は別物と捉えられていたというのが、不思議で混乱する。言われてみれば「風呂」という言葉には、「水」も「サンズイ」も含まれていないのが示唆的だ。「風炉」「室(むろ)」あたりが言葉の由来という説が有力のようで、いずれも水や湯が主体ではなく、熱風や密室という「サウナ感」を覚える言葉だ。 -
そのものずばり、お風呂に関する研究まとめ。
今でこそ各家庭にお風呂があって、毎日入浴するのが当たり前みたいになっているけれど、そんなのはごくごく最近のこと。そのまえは銭湯に通うのが一般的だったし、さらに遡ればお風呂というのはお湯につかることじゃなかった。風呂とはサウナのような発汗浴をさし、お湯につかることは「湯」といい、両者は厳密に区別されていた。
では、いつから風呂と湯の混同が始まったのかとか、風呂はどういう形や方法をとったものだったのかというのを、風呂の遺構の調査、現地での聞き取り、文献や絵巻物の記載事項を重ねて考察されています。
ただ、入浴はあまりにも身近なことがらだったため、あえて記録する必要がなく、忘れ去られるのも早い。そのため調査の結果ほとんどは「わからない」か、「こうではないか」という推察に終わるのですが、それでも充分面白いものでした。
お風呂に関する知識よりも、研究というのがどういう手順で行われているのかがよくわかって、それが興味深かったですね。現在常識とされているような歴史の事実も、こういう地道な調査の積み重ねでわかったことであり、またそれが誤りである可能性も充分にあるんだということを、改めて認識できたので。