中国人とアメリカ人 自己主張のビジネス術 (文春新書 1025)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610259

作品紹介・あらすじ

世界で一番わがままな彼らに学ぶ商売の極意人が良すぎて謙遜しすぎる日本人がグローバル社会で生き残っていくには? 米中でトップをつとめた元商社マンによる成功の秘訣。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    日本の良さを残しつつ、米中から学ぶべきポイントをまとめた本。
    日本人からするとやや耳が痛い話も多いが、2カ国の人種の良さ(クセも凄いが)を感じるには良い1冊だった。
    両国民の個々のスペックの高さは勿論だが、それを支えるのはやはり国民性によるものも大きいのだろう。
    見習うかどうかは別として、100%一生懸命にならずに余裕を持ち、冷静かつ冷酷に、職務をこなしていくあたりは見習わなくてはいけない。
    完全にマネをする必要はないが、自分自身冷静さを欠いて感情的になってしまうところが多いので、打算的さも伸ばしていく必要はありますなぁ。


    以下、作中で最も心に響いた箇所を抜粋。

    強い「個」であれ。WEではなくIだ。
    まず立派な人間であること。
    また、合理的思考と前向きな姿勢を持て。
    受け身では駄目だ。
    言葉を吐いて戦え。もっと主張しろ。
    不必要に謙虚である必要はない。


    【内容まとめ】
    1.強い「個」であれ。「we」ではなく「I」

    2.米中に共通しているリーダーの第一要件は、頭がいい事。日本は、頭がいいことではなく人格。

    3.中国人は、何事にも自分の全てをぶつけず、100%燃えることはしない。20%は常に冷静な自分を保つ。
     熱くなりつつ、傍観者である目線を崩さない。冷静でいられるのは、自分を客観視できるからだ。
     舞台の上で演技をする自分と、それを観客席から眺めている自分。

    4.米中に通じる、2つの「あ」と3つの「ま」
    ・頭が良く実力のある人
    ・相手を理解しようとし、異文化への理解に努める人
    ・人格円満で識見のある円い人
    ・がまん強い人
    ・まじめな人

    5.優越感を感じたり、劣等感を感ずることは間違っている。
     威張ったり、横柄な態度は以ての外だし、逆に卑屈になったり過剰にへりくだった態度も頂けない。


    【引用】
    今やビジネスマンもグローバルなマインドを持たなければ世界で受け入れて貰えないし、世界で勝てない。
    自国のマインドを持ちつつ、他国を知り、異文化への理解を深め、国際感覚を磨く事がグローバル時代に生きるうえで求められる。


    p22
    カナダ人のアイデンティティは、アメリカ人ではないということ。
    アメリカと違ってカナダには、静かに正義を見極め、世界のために貢献するという気風がある。


    p24
    咄嗟に自分の実利と損得がどうなのかをチェックする。
    この点、中国人の方がアメリカ人よりも冷徹である。
    中国人は何事にも100%エキサイトすることはない。
    現実主義者であるから、彼方にある理想ではなく、目先の目的と利害に力点を置く。

    両国に共通している点は、まずもっともらしい建前やスローガンを出してくる点だ。
    反対に、日本人は概して理想主義者で、すぐ一生懸命になってしまう。
    感情を優先し、現実に柔軟に対応できないし、実利計算を全く忘れてしまう場合も多い。


    p28
    アメリカの優れたリーダーとは、頭がよく創造的で、説得力のあることが第一要件である。
    中国では、頭がよく記憶力と即断力に優れている事が第一要件だ。
    米中に共通している第一要件は、頭がいい事だ。
    日本では、頭がいいことではなく、人格ではないだろうか?


    p36
    欧米人も中国人も、右手で握手しながら左手はいつでも相手を殴る体勢をとることができる。
    アクセルとブレーキ両方を巧みに使えるのである。


    p46
    滞米第一のレッスンは、アメリカではハッキリと自己主張しないと無視され、尊敬もされないということだった。
    自己主張をするためには、アメリカ人のように自分の意見をしっかりと持っていけなければならないし、反論は即座にしなければならない。
    間違ったことを言われて黙っていると誤解されるし、間をおいて反論しても聞いてくれない。

    しかし、アメリカ人同士でも、相手のプライドを傷つけないよう、礼をなくさないよう、気をつけた言い方をしている。


    p51
    アメリカではポジティブで前向きな考え方と表現を徹底的に教え込まれる。
    ポジティブな考え方は交渉を前向きにし、明るくする。
    相手も前向きになり、物事は前に進む。
    まずYESにならないかと考えた上でNOの部分を検討する方がいい。

    このポジティブなものの考え方は、アメリカ人の最も大きな特徴である。
    肯定型で臨み、具体的に、論理的に、出来れば数字を入れて説得すると、うまくいく。


    p55
    ・ Let's get the job done(仕事をやり終えてしまおう。)
    すぐ友達になるが、役に立たなくなると無視する。
    誰でもすぐ友達になれるが、深い人間関係は作りたがらない。
    古い友人といつまでも付き合ったり依存し合ったりしない。
    ただ、キリスト教的な教えに基づく行為だからか、古い友人が困った時には思い出したように連絡をしてくる。

    アメリカ人は恩を着せたりしないし、べたべたした人間関係は作らない。
    アメリカ人は余計なおせっかいはしないが、非常事態になると助けてくれる。


    p58
    ・嘘は言わないが、本当のことも言わない
    アメリカ人は、自分の利益にならないことは口に出さない。
    嘘はほとんど言わないが、日本人のように本当のことを不必要に全部喋ってしまうことは絶対にしない。


    p68
    中国相手だけでなく、難しい交渉において早々に手の内を全部さらけ出してしまう愚を避けるべきだ。


    p72
    ・中国人は不信がベースで老獪
    誰も面倒を見てくれないならば、自分を強くし、自分で生き抜いて行かなければならない。
    瞬時たりともぼやっとできない。
    したがって頭脳が鍛え上げられる。

    中国人は一般的に頭が良く、複雑な知恵を持ち、冷静だ。
    現実を忘れず、日本人のように100%感情に走ってしまうことはない。
    そんなことをしても飯が食えないからだ。

    中国人は、何事にも自分の全てをぶつけず、100%燃えることはしない。
    20%は常に冷静な自分を保つ。
    熱くなりつつ、傍観者である目線を崩さない。
    冷静でいられるのは、自分を客観視できるからだ。
    舞台の上で演技をする自分と、それを観客席から眺めている自分。


    p77
    ・中国人の行動基準
    銭と報と面子。
    現世利益的で、他利ではなく自利。
    ただ、恩は絶対に忘れない。

    深い人間関係をつくるには、まずGive(与える)することである。
    Giveすれば、必ずTake(もらう)させてくれる。


    p170
    ・中国では人間関係が1番
    突き詰めて結論的に言ってしまうと、中国での本当の話し合いや約束は、お互いに信頼できる永い友人関係であることが前提。
    そのような関係がなかったら、スムースに物事は行かない。
    信頼関係ができればかしこまって「交渉」するのではなく、カジュアルな雰囲気で話し合う関係になる。
    人間関係が出来ていないと、表の建前の交渉は出来ても、本当の「話」は出来ないと思った方がいい。

    p173
    ・「算了、都是老朋友(いいよもうその話は、友達だから)」
    華人との間でも、友人関係を超え仲間になれば、誠実に最善の努力をしたかどうかだけが問題となる。
    結果の如何を問わず、誠実に努力をすればこれを多とし、許してくれる事がある。
    友人関係が経済原則を超える事がままある。


    p174
    2つの「あ」と3つの「ま」
    ・頭が良く実力のある人
    ・相手を理解しようとし、異文化への理解に努める人
    ・人格円満で識見のある円い人
    ・がまん強い人
    ・まじめな人


    中国でビジネスや交渉で成功するために心掛けるポイント
    ・人間関係が最重要。幅広い魅力ある人間たれ。友人でなければ一緒に仕事するな。
    ・謙虚であれ。高慢は禁物。差別意識は以ての外。
    ・はっきり自己主張せよ。なるべく書き物にしておけ。
    ・忍耐が必要。中国人は長期的思考。時間はタダと考えよ。
    ・力(頭脳、人格、技術、ブランド、市場、資金)には一目置く。
    ・曖昧さを残すことも策。
    ・面子を失わせないように。勝っても勝たせてもらったと思え。


    p206
    国際人としての心構えの第一は、日本人だということを一旦忘れて、文化が違っても世界の人は等しく同じような人間であると考えて相対することである。
    言葉は第一の要件ではない。
    肌の色が違おうが背が高かろうが、1人の人間として愛情と尊敬心をもって接し、その人のため或いはその国のためになるなら労を厭わないという心構えで臨むことだ。
    そうすれば受け入れてくれるし、好かれ、尊敬もされ、ひいては良い仕事につながる。

    優越感を感じたり、劣等感を感ずることは間違っている。
    威張ったり、教えてやるといった横柄な態度は以ての外だし、逆に卑屈になったり過剰にへりくだった態度も頂けない。

    日本人は日本人だけの世界に入ってしまいがちだ。
    謙虚に外国を知ろうとしなければならない。


    ・「一生懸命」は良くない
    日本人の欠点だが、物事を感情的に捉えている。
    現実的な損得計算がない。
    一生懸命とは命がけで事に当たる事であり、一生にそう何度もあることではない。
    英国人を見習いたいものだ。米国人よりも冷静に現状を捉え、現実的に策を考える。

    また日本人は性急で潔癖だ。
    度がすぎると人の話を聞かなくなる。
    現実に基づいて冷静に広い視野から分析して判断した上での言動ができなくなる。
    現実に基づいた大人の対応が出来なくなる。

    これに対して中国人は、物事に熱してもせいぜい80%までだし、決して性急にならず、しぶとく現実の損得計算をした上で言動に移る。

    アメリカ人の行動原理も合理主義だ。
    よく情報を集め、色々な選択肢を検討し、討論もし、一旦まとまればその路線を尊重する。
    彼らは自ら納得した上でなければ行動しない。
    人には上手く説明しようとし、動作をスマートに見せる努力も忘れない。

    両国民とも日本人のように100%一生懸命になることはほとんどないし、頑なでもない。
    両国民とも基本は自利中心である。


    p210
    強い「個」であれ。WEではなくIだ。
    まず立派な人間であること。

    また、合理的思考と前向きな姿勢を持て。
    受け身では駄目だ。

    言葉を吐いて戦え。もっと主張しろ。
    不必要に謙虚である必要はない。


    p212
    ・日本の良さは忘れるな
    日本人の利他精神、みんなを思う和の精神、誠実、正直、信頼、神経の細かさは美点である。
    このことは忘れてはならない。

    ただ、感情的・情緒的な面や、受身となってしつこさもないところ、他人任せになってしまうところ、お人好しで終わるところは気をつけなければならない。


    p214
    ・強い「個」であれ。「we」ではなく「I」
    強い個が育たないと、国際化社会には十分にチカラが発揮できない。
    会社も人の集まりだ。生き生きと、挑戦と創造に挑む「個」が多いほど成長する。

    運動場理論。
    ビジネスでも、基本は自主自立にある。
    日本人のいいところは残しつつ、強い「個」を育てる必要がある。

  • 大人しくて真面目だけれど自己主張が出来ない日本人が、自己主張をしっかりとする中国人とアメリカ人に向き合う具体的な方法がいっぱい。著者の遠藤滋先生は実際にお仕事で自己主張をしっかりとする中国人とアメリカ人と対峙されてきただけあって、とても納得感のある内容。「議論に慣れていない日本人はいざ議論になると感情的になりやすい」という説明があって、確かにと思いました。私も自分の意見が批判されたり反対されたりすると、感情的に反論してしまう癖があるから。

  • 著者によれば、日本人は、よく言えば誠実で潔癖で利他的、悪く言えばばか正直で融通が利かず、内向的。中国人・米国人は、よく言えば自立心が強く交渉上手、悪く言えば利己的で腹黒い。
    著者は、日本人に両者のいいとこ取りをせよ、と言っている。
    日本人と中国人・アメリカ人の比較論、特に面子に拘る中国人気質は、大変参考になりました。

  • 日本の国際的プレゼンス――というか、世界に対するモチベーションの低下は、将来の世界にどのような結果をもたらすのだろう。
    かつてと比べた日本の現状は、国内で我々が感じているよりも、はるかに大きくちがっている。
    「やり方」「伝統」「柔と和」にこだわる日本という国にとっての、それこそがめざす方向性と立ち位置だ、というならば、それも受け入れるべきなのかもしれない。

    少なくとも、アジアをけん引する指導者としての役割にたつことができるか、エリートや才覚者が今後も多く輩出されるか、米国・中国内で一定の勢力を保てるか・・・という問いの全てには、疑問符で答えなければならない。

    日本は「あること(Being)」を重視するが、米中をはじめ国際社会の大舞台では「なること(Becoming)」が重視される、ということばになるほど、と唸った。
    内輪の仲間意識は強いがよそ者嫌い、謙虚で低姿勢なくせにプライド高く変化をこばみありのままの自分を認めてほしい、だなんて、人によっちゃぶっとばされるところだ。←

  • ・日本人の小ささが記憶に残る。

  • 著者は大手総合商社として長くアメリカと中華圏に駐在。その経験を描いた書籍。中国人像とアメリカ人像というよりかは、外から見た日本人像がどうなのかをフォーカスを当てている。
    創造性、他の文化への許容力、もっと攻撃的になる必要性など、日本人が不足している点として挙げられているのに目新しさはあまりない。気になった箇所の備忘録。
    「危機管理で重要なことは、敏捷な初期動作が必要で、事実についての情報を開示し、、直ちに主張すべきは主張し、効果のある広報を展開することに尽きる」
    「経営とは、命令するのではなく、質問を繰り返すことだ。命令すると反発する。所詮経営は人にやる気を起こさせること。実力に応じて適材適所に配置し、自分が頼りにされていると思うと張り切って働いてくれる」

  •  書名は「中国人とアメリカ人」であるが,内容は日本人論かな。
    ■中国人とアメリカ人はよく似ている
    ■説得力を持たせる五つの要件
    ・よく練られたプレゼンテーション
    ・相手のためであること
    ・相手の目線にあった書き方
    ・肯定的なアイデアと言い方
    ・うまくいくという成功意識
    ■アメリカ空軍方式の問題解決
    ①何が問題なのかを明確にする
    ②情報,データを集める
    ③解決案をいくつか挙げる
    ④その中から最善の解決案を選ぶ
    ⑤その案を実行する
    ■最善の案を選択する基準
    ①適合性
    ②実行可能性
    ③受入れの可否
    ■アメリカ人は,嘘は殆ど言わないが,日本人のように本当のことを不必要に全部喋るようなことは絶対にしない
    ■イギリス人のアメリカ人観
    ・原理主義を重んじ,かたくなに信じ込む
    ・オープンに見えるが自己のことを話さず建前で押してくる
    ・誰が何と言おうとも自己の信念を貫き,未来に挑戦し,独立独歩で行く
    ・自己中心的で他人はどうでもよいという人が増えた
    ・交渉ではポーカーフェイスの対決スタイル
    ■アメリカ人の日本人に対する四つのイメージ
    ・計り知れない
    ・矛盾した
    ・熱心で一生懸命
    ・集団思考
    ■日本はハイコンテクスト社会
    ・コンテクスト(言語,共通の知識,体験,価値観,ロジック,嗜好性)の共有性が高い文化
    ・お互いに相手の空気を読める
    ・言語化しなくてもいい文明の共有がある社会
    ・グローバル化の時代には足かせとなる
    ・グローバル化とは「ローコンテクスト社会」になること
    ■強い「個」であれ。「We」ではなく「I」

  • ■書名

    書名:中国人とアメリカ人 自己主張のビジネス術
    著者:遠藤 滋

    ■概要

    今や中国、アメリカの二大国と関係せずして成功はできない。では
    、彼らとどう付き合えばチャンスの道は拓けるのか?彼らの「攻略法」
    とは?両国で商社マンとして活躍した著者の豊富な経験と事例によ
    る体験的ビジネス論!
    (From amazon)

    ■気になった点

    ・両方とも非を認めない。 
     ただし、アメリカ人は証拠が出てくると謝る。
     中国人は証拠が出てきても謝らない。

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