- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166610877
作品紹介・あらすじ
『鬼龍院花子の生涯』『極道の妻たち』『陽揮楼』『吉原炎上』『三匹の侍』『人斬り』……極彩色のエンターテイナー、映画監督・五社英雄。五社作品の持つ情念に魅せられた著者は関係者への徹底した取材を重ねるが、その生涯を描き出すのは困難を極めた。稀代の“ホラッチョ”五社の証言は、背中の彫り物ひとつをとっても同じ人物のものとは思えないほどときにブレる。どこまでが真実でどこからが嘘なのか? これは、全身エンターテイナー──「人を喜ばせる」ことに生涯をかけた男の、ハッタリ上等、虚々実々の物語である。テレビ界出身だった五社英雄は、長らく日本の映画評論界から不当に無視に近い扱いを受けてきた。その言動は常に毀誉褒貶の対象だった。真っ白なジャケットとズボンで敵だらけの現場に乗り込み、水たまりがあればそのジャケットを脱いで女優にその上を歩かせて周囲の度肝を抜き(しかも翌日にはまた新品同様の白ジャケットで現れる)、80年には銃刀法違反で逮捕され、一時は映画界を追放されて、すべてを失った。しかし、現在の時代劇やアクションは五社の存在なくしては語れない。今では当たり前の、刀がぶつかり合い、肉を斬り骨を断つ効果音。これらを最初に生み出したのも五社だった。テレビの小さな画面でいかにして映画に負けない迫力や殺気を出すか? 悩んだ末に辿りついた発想だった。自らの人生も「演出」した男はなぜその背中に鬼を掘り込んだのか? 台本にはなかった「なめたらあかんぜよ!」の秘密とは?虚実ハッタリ入り乱れた生涯に翻弄されながら、春日太一が渾身の取材で「鬼」の静かで哀切な真実に迫る。
感想・レビュー・書評
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https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689807詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
みんな大好き友近も大好き五社英雄ですよ。
五社好きにはたまらないエピソード満載の本です。
そもそもこの人フジの社員だったんですからね、いま有名人のガキしか採らないあのフジで。
五社映画といえば…
エロくない女優さんでもエロく
出てくるキャラは男女問わずみんな絶倫
かたせ梨乃さまのおチチは必要以上の長回し
などなど…
中学生時分のアタクシの股間を直撃してくれました。
ごちそうさまでした。
もし今の時代に五社がいたら、長澤まさみや有村架純にあんなコトやこんなコトをさせて撮ってくれたんぢゃないかと思うと…惜しいですね。
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まだガキだった頃、テレビCMに流れた「炎上する屋敷をバックに佇む花魁」は、とても印象的であった。弱さ、はったり、妬み、劣等感、そねみ、優しさ、愛情、裏切り、、、本書によると、五社監督は人間くささを凝縮したような人であった。どうりで、映画が人間くさいはずだ。
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『ゴロウ・デラックス』にて紹介されていた春日太一さんの本を初読了。 この五社英雄氏という激しいまでの熱量を持った人物を、負けない熱量でもって、かといって入り過ぎることなく一気に読ませた春日さんの筆が素晴らしい。 確かに五社英雄という人物は極端な人ではあるものの、エンターテイメントに命をかける覚悟を持った人であったとは思う。果たして今、それだけの覚悟を持ってモノづくりに挑む人たちはどれほどいるのだろうかと考えるとちょっと暗澹たる気持ちに陥るが、本を読むことで映画も観ようと思わせてくれる作品でもある。
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『吉原炎上』などで有名な映画監督、五社英雄の生涯に迫る。
私の世代としては80年代から90年代の脱がせ屋としての五社英雄しか知らなかったが、そこに至るまではフジテレビから始まり男臭いバイオレンスドラマや映画を撮りまくっていた五社英雄。その生き様は映画の様に激しく泥臭くでもどこか弱さがあるようなそんな印象を持った。
昭和の名優達の名前もどんどん出てくる。五社英雄はじめ登場人物たちの生き様からなぜか昭和を感じられるのがこの本のいいところ。 -
録画した「吉原炎上」をこっそり何度も観たものです。
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冒頭から五社自身が語っていた身の上話のウソが暴露される。ウケるためだったら平気でウソをつく見栄とハッタリの塊のような男の肖像が、丹念な裏取りで描かれる。
テレビという当時見下されていたメディアから上から目線を見下していた映画界に殴り込みをかける気負いから、元からのハッタリ気質に磨きをかけ、映画の見世物としての原点に戻って成功していく。
今のテレビ界と映画界の関係を見ると信じられないような状態で、ここ数十年の変化の大きさにほとんど嘆息する。
一方で安定したサラリーマンというテレビ局員としての地位をなかなか捨てきれない小心さも描かれる。その地位を思いがけない形で放棄せざるをえなくなり、退路を断つつもりで背中に入れ墨を入れる。このあたりは、さすがに調べきれていない部分が多い。
振幅の大きい、大胆さと小心さ、ハッタリと繊細さが混ざった一人の男の軌跡がそのまま作品に反映しているのが浮き彫りにされる。
どの作品が誰に企画だったかといった原点にまで遡って調べてあるのが貴重。「鬼龍院花子の生涯」が梶芽衣子の、「薄化粧」が緒形拳の持ち込み企画だとは知らなかった。
多くの人たちとの協力関係も描かれ、だから「鬼龍院」の起死回生のカムバックもできたのだろう。
裏をかえすと、割と安直に頼まれると、あるいは思いつき程度でほいほい仕事を引き受けたので、特に晩年いささか仕事が荒れたところも「北の蛍」「十手舞」などの失敗として具体的に指摘している。
映画・テレビ以外にもやっていた週刊誌の対談連載なども丹念に取り入れ、どうやって女優たちを脱がせたか、といった下世話にして大事な話も収録している。 -
テレビマンから映画監督への第一号?となった五社英雄監督の現場の様子がよく伝わってくる。
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【ハッタリ上等、極彩色のエンターテイナー】刀がぶつかり肉を斬る効果音の発明。遺したものの大きさに比して無視に近い扱いを受けてきた鬼才。稀代の“ホラッチョ”真実の物語。