- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166611232
感想・レビュー・書評
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ASD(自閉症すペクトラム障害)かADHD(注意欠如多動性障害)について記述した一冊。
ごく一部の天才がもてはやされる反面、大抵の人は仕事どころか日常生活にも苦労するような状況で、これと付き合うのは当人も周囲も並大抵ではないことがよくわかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
具体的な症例が多く紹介され、ときに読んでいるだけでこれは大変だと苦しく感じることもありました。子供も大人も、あれ?と思うことがあったら、専門医と相談をした方が良いと思いました。がまんが足りない、集中していない、口が悪い、と言われつづけているよりは。特に症状を持つ可能性のある子供がそのように大人に叱られているのは気の毒に思いました。
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マスコミで取り上げられことが増えてすっかり市民権を得た感のある「発達障害」。法改正でこれから大学にもどんどんやって来そうなので自分ごとに感じまずは知識と思って手に取ってみた。本書では「発達障害」とは何なのか、その歴史、正確な定義、分類、診断基準、いくつかの事例について、専門家であり医師である著者が自身の経験も含めて解説してくれています。まず「発達障害」という名称が分かりにくいのだが、どうも当初は”神経”発達障害と呼ばれていたようだ。原因は不明だが脳神経か伝達物質などの脳機能の障害であると見られており、現在は先天的なものと認識されている。自閉症なんかもそうだが、当初考えられていたような親の養育環境などによるものではなく、遺伝性もあることが濃厚のようです。つまり、単なる性格の歪みとかいうレベルじゃなくて(精神)疾患をもたらす障害であり、現在では一部の症状には薬物療法も可能なようです。これは「うつ病」なんかとも通ずる。学術的に発達障害には主に、ASD(自閉症スペクトラム症候群・これにアスペルガー症候群も含まれる)とADHD(注意欠如多動性障害)に分けられるそうで、しっかりと区別できる判断基準があるようですが、精神科医でも大部分は診断が難しいそうです。本書はそう言う意味で、医師や世間への啓蒙書のようになっており、詰め込みすぎでやや専門的な情報が多すぎるような気がした。できるだけ幼児期に親や周囲が気付いてあげて正確な診断のもと対応するのが望ましいし、本人も自覚して対応していれば不幸になりにくいようです。終盤、著者が院長をしている病院における発達障害の成人に対する取組例などが紹介されますが、教育機関とか職場とかで、実際にそのような人を受け入れて上手くやっていくために具体的にどのようなことが必要なのかについては全く読み取れなかった。それはこれからそれぞれが考えて取り組んで行く必要がありそう。
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【なぜあの人は「空気が読めない」のか?】『逃げ恥』の津崎、『風立ちぬ』の堀越、そしてあの人はなぜ「他人の気持ちがわからない」のか? 第一人者が症例と対策を講義する。
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ASDやADHD、学習障害や共感覚などの特徴や、犯罪に結び付くような極端な例についてよく分かった。家庭や社会で本人や周囲に困り感がある場合にどうしていったらよいのかについて、もっと知りたくなった。
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人の気持ちがわからない、同じ失敗を繰り返す、自分は発達障害では?と思うことがたまにある。というか、そういう部分はあるが、経験や仕組みで解決できている部分が多い。ただ、認知の面でどうしても生きづらさはある。相手の気持ちがわからずに信頼関係を築けない。
コレだという解決策があれば良いのだが…
★疾患は生まれつき
成人になって発症するものではない。
★カサンドラ症候群
ASDのパートナーと信頼関係が、築けないことによって生じる精神的、身体的な症状。
元の位置に戻せない、反省がない、自覚がないなど、ゆとりがある時には許せるが、子育てなど多忙な生活ではイライラしてしまう。
★「認識」することの大切さ
「症状」…寛容に接する
「気持ちの問題」…不必要な叱責 -
2.5
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「多動症、自閉症、うつ… 複数の症状が発生する事もある」
・専門医でも判断を間違える事がある
・親や当事者は診断結果を真摯に受け止められるか
・発達障害は適切な治療で改善が見られ、社会復帰可能
自分以外の人間の考えや気持ちはどうしてもわかるものではない。
もし自分なら辛く重たい事実を冷静に受け入れて対処出来るのか… -
筆者によれば、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)の主要登場人物である津崎平匡も、「アスペルガー症候群の疑いが濃厚」(pp.7-8)
本書の内容は、「発達障害の概念とその歴史を振り返るとともに、発達障害を持つ当事者の実生活における諸問題をとりあげ、その解決方法について検討を加える内容」(p.14)。
「一般に「発達障害」とは、アスペルガー症候群(アスペルガー障害)を中心とする自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)、注意欠如多動性障害(ADHD)などを漠然と指している事が多い。」(p. 21)
「発達障害は生まれつきのものであり、成人になってから発症するものではない。」(p. 25)
「ADHD(attention deficit and hyperactivity disorder)は、ある意味、不幸な疾患である。「不幸」という言葉が適切でないならば、長く見逃されてきた、あるいは誤解されてきた病気である。」(p.54)
「ADHDはASDと並ぶ主要な発達障害である。しかもASDと比べてADHDの有病率は高い。小児期においては総人口の5%〜10%程度に及ぶという報告もみられる。この数字はASDの10倍以上である。」(p.54)
「ADHDの脳障害仮説は否定され、MBDという診断名も精神医学の教科書から姿を消した。その後、臨床症状の特徴からADHDという名称が登場したのであり、原因として脳内の神経伝達物質の機能障害が提唱されている。」(p.60)
「総じてみると、多くのADHDの人は、児童期から学生時代までは重大なトラブルを生じずに経過している。多少の症状がみられても、それを周囲の配慮や本人の能力や努力でカバー可能な場合が多いからである。」(p.61)
「同じ間違いを繰り返すことが多く、上司や同僚からたびたび叱責されやすい。本人はまじめに取り組んでいるつもりでも、周囲からみると「手を抜いている」「仕事をバカにしている」などと見られ、職場での関係が悪化する原因となりやすい。」(p. 67)
「ASD、ADHDなどの発達障害の当事者の多くは、行政や福祉からの支援を受けずに、「一般人」として社会の中で暮らしている。」(p. 223)
なお、本書の主張は、筆者の立場によるポジショントーク(和製英語)という側面も否定できない、と思う。