ラストエンペラー習近平 (文春新書 1320)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166613205

感想・レビュー・書評

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  • 習近平を「つまずかせる」には、面子を潰すことだ。中国が格下と見ている国が習近平に「ノー」と言い続けることだ。
    中国がオーストラリアにつきつけた「不満」がすなわち「弱点」なのだ。ここを突けばよい。

  • 内容はやや楽観的ながらふむふむという感じ。

  • ラストエンペラー習近平というタイトルだが、テーマはそこではないと思う。筆者が言うところの、戦略のパラドキシカル・ロジックを述べた本であって、中国の戦略がそのれいとして取り上げられている。パラドキシカル・ロジックとは、いわゆる動学分析のようなところである。他のagentの動きを固定することなく未来を想像することが、人間には非常に難しい。だが、戦略とは直線ではなく、曲がりくねりながら進むものなのだ。

  • ●欧州がアメリカの次に重要だと考えていたのは中国、しかしG7以降、日本に変わった。
    ●2018年3月に、それまで憲法で2期10年までとしてきた国家主席の任期を撤廃した。つまり習近平は死ぬまで中国のトップである続けられるということだ。毛沢東以来の皇帝になろうとしている。
    ●1949毛沢東による建国。大躍進、文化大革命の失敗。鄧小平1989天安門。
    ●2000年チャイナ1.0。経済的台頭。国際秩序への平和的な参加。
    ●2008年リーマンショック。チャイナ2.0。対外強行路線。56兆円にのぼる大型景気刺激策を発表し、いち早く経済成長を回復させた。経済力の規模を国力と勘違いした。→9段線。もともと蒋介石の中国国民党が描いた、単なる願望を地図にしたものであり、荒唐無稽な妄想に過ぎないもの。尖閣諸島。国際的な舞台で、中国国内でしか通用しない発言をするという失態。
    ●2014年。過去の反省を踏まえたチャイナ3.0。しかしここでも選択を間違える。相手を選び選択的攻撃。
    ●2020年コロナのどさくさに紛れてチャイナ4.0。中国は、領土争いとビジネスを別の話だと考えている。これが間違い。戦略(安全保障) は経済に優先する。
    ●中国と言う敵を共有しているので、インドを特別扱い。クアッド、日米豪印。ASEANではカンボジアとラオスが中国を怒らせない採決となり役立たず。
    ●インド、ベトナムも兵器の主な供給元はロシアである。つまり反中包囲網に密かに参加しているわけだ。偽りの恋人。
    ●戦略はスポーツではない。1対1で戦わなければならないと言うルールは無い。中国は海軍力が強いが、海洋力がない。つまり同盟の戦略ができない。

  • 20220530

  • チャイナ1.0は平和的台頭、チャイナ2.0は対外強硬路線、チャイナ3.0は選択的攻撃、チャイナ4.0は全方位強硬路線で、2.0の劣化版

    韓国は中国からの独立状態を保つ意志に乏しいので、クアッドに韓国は参加しない可能性が高いし、参加するとかえってクアッド自体を弱める可能性がある。

    民主制度の国では、国民はその自由を守るために戦わなくてはならない。そうでなくては独立を保つことは諦めるしかない。アメリカに頼るのは核兵器の抑止だけで、それ以外の国防は全て自分たちでやるべきなのだ。

    アメリカの攻撃型潜水艦50隻がすべて原潜であるのに対し、中国の保有する潜水艦62隻のうち、原子力で動くのはわずか7隻しかない。
    米軍の原潜だけでなく、日本の海上自衛隊が保有する12隻のそうりゅう型潜水艦は極めて静かで隠密性が高い。この12隻で人民解放軍の艦船を100隻ほど沈められる。

    これから新しい有人機を開発しようとすることは、テクノロジーを無視しているとしか言いようがない。今この瞬間に有人機の開発は止めるべきである。同じことは水上艦についても言える。私達はドローンとAIという新しい機関銃の時代に立ち会っている。

    戦略(安全保障)の世界では、強さは弱さになる。弱さが強さになる。これを言い換えると、「大国は小国に勝てない」(ただしこの法則は中規模国には当てはまらない)

    紛争の真に最終的な解決方法は、いまなお戦争しかないのである。これは認めない人も多いかもしれないが、まぎれもない事実である。

    戦略(安全保障)はつねに経済よりも優先される。

    戦争から平和になる道は2つある。一つはリソース(兵器や食料など)を消費してしまうことだ。そしてもう一つは国民のメンタリティの変化である。

    戦争が平和をもたらす。が、平和が戦争の原因となる。

  • 筆者がチャイナ1.0としている韜光養晦の終わりにより、中国が敵を増やしてしまっているのは指摘の通りだと思う。理由が大陸国だからなのかは分からないが、海軍力と海洋力(同盟戦略)の違いを理解できておらず空母に手を出してしまっているという指摘も頷ける。9段線の主張は引っ込みがつかなくなっているのだろう。

  • 訳者の奥山さんが著者のルトワックさんにインタビューなどをしたものをまとめた、ということなので半分くらいは共著に近いのかもしれない。実際、いつものルトワック節論文よりかなり柔らかい感じの習近平論考になっていると思う。
    中国は確かに豊かになり強くなったが、それが災いして戦略的には弱くなる一方である、例えば、という論考がいくつも披露される。曰く、チャイナ4.0になって内も外も全方位に喧嘩を売って回る戦狼外交があらゆる他者を反中国同盟に駆り立てる。ジャックマーはじめ国内の起業家を叩いて回るから中国経済の行方に暗雲が立ち込める。お前たちは小国だから黙っていうことを聞けと明言するほどの外交音痴。
    毛沢東になりたい習近平がラストエンペラーだというのは説得力があると思う。そのメンツを潰す小さな不同意を小国が積み重ねれば習近平は倒れるだろうとの予測もそうだろう。しかし、最末期の彼が乾坤一擲の台湾侵攻に賭ける恐れが増すのではないか。そうなれば米軍は沖縄その他日本の基地から出撃するから日本は必ず当事国になる。それが嫌で基地利用を認めなければ日米同盟が破綻するから選択の余地はない。そんな選択をせずに済む軟着陸を考えたいがそうは問屋が下さぬかもしれないね。

  • 字数は少ないが内容は豊富な本。
    2021年現在の国際環境は、日本にとってかなり有利になっている。チャイナ4.0の戦狼外交はチャイナ2.0の悪化版。世界的に反中ムードが高まっている。シーパワー=海軍力、マリタイムパワー=海洋力で、これは中国の理解していない同盟の戦略。
    人材が常に入れ替わるため、ジェットエンジンのようなチームワークが必要な技術は開発できない。
    日本が中国に対する戦略としては、冷戦期にスウェーデンがソ連とフィンランド国境に精鋭を配置したように、中立のまま台湾を支援できるような体勢をとることで抑止する。そして習近平をつまづかせる、すなわち中国からの様々な要請に全てノーと答えて習近平は失敗していると中国国内に印象付けること。
    軍事テクノロジーの逆説として戦車と機関銃の話を挙げている。機関銃は陸軍のどの職種も採用せず、旅順ではロシアの水兵が使っていたことは面白い。戦車も英海軍の航空部隊から始まりチャーチルが承認、本来の任務を隠すために水槽(タンク)を開発していると欺瞞していた。
    中東の木の枝と蛇の寓話。木の枝に意思はないが蛇にはある。相手は木の枝ではなく蛇であることを認識する重要性。
    なんで中国はあんなことするんだろう、言うんだろうという疑問については「国内のことばかりで他者が見えていないから。文明論的にも対等は他国はおらず強者か弱者という見方しかできない」と簡潔な解答を与えてくれた。

  • 国際政治というのは複雑だが面白いと感じました。中国はこれからどうなるんでしょう?
    大国が小国に勝てるとは限らない。
    これに尽きる気がします。
    習近平がいなくなるまでは、中国は拡大志向なんだろうと思います。転換はできないんでしょうね。

    あと、軍事力の大切さも改めて痛感です。

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著者プロフィール

ワシントンにある大手シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級アドバイザー。戦略家であり、歴史家、経済学者、国防アドバイザーとしての顔も持つ。国防省の官僚や軍のアドバイザー、そしてホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーを務めた経歴もあり。米国だけでなく、日本を含む世界各国の政府や高級士官学校でレクチャーやブリーフィングを行う。1942年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方のアラド生まれ。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、ロンドン大学(LSE)で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用される。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。著書は約20ヵ国語に翻訳されている。邦訳には『クーデター入門』(徳間書店)、『ペンタゴン』(光文社)、『アメリカンドリームの終焉』(飛鳥新社)、『ターボ資本主義』(TBSブリタニカ)、『エドワード・ルトワックの戦略論』(毎日新聞社)、『自滅する中国』(芙蓉書房出版)、『中国4.0』(文春新書)、『戦争にチャンスを与えよ』(文春新書)がある。

「2018年 『ルトワックの”クーデター入門"』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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