グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす (文春新書 1327)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166613274

作品紹介・あらすじ

時代の転換点は、すでに静かにやってきている――。

2020年10月7日、かつて全世界の企業でもトップを誇ってきた石油資本エクソン・モービルの時価総額が抜き去られた。
エクソンをエネルギー界の王座から追い落とした企業の名はネクステラ。米国でも誰も知らないような、フロリダの地方電力会社だ。だが彼らは風力発電、太陽光発電のシェアで全米をひそかに席巻し、この10年でその株価は5倍にもなっていたのだ。

もはや再生エネルギーはファッションではない。20世紀の象徴たる石油を抜き去り、再エネこそが21世紀のビジネスの主戦場となったことが、ここに明らかになったのである。
新時代の再エネの巨人「グリーン・ジャイアント」たちは、すでにカーボンニュートラルの世界での覇権をめぐって激しい競争を繰り広げているのだ。

本書では、日本の各業界、政府が内心わかっていながら目を背けてきた「世界の再エネビジネスの最前線」を、米国からあますところなくレポートする。

ネクステラ、エネル(伊)、イベルドローラ(西)といった知られざるグリーン・ジャイアントたちの成長戦略とは。
炭素税導入で先を争う欧州各国。
世界最大のCO2排出国ながら、風力・太陽光にも巨大投資を行う中国。
デンマークの洋上に林立する巨大風力発電の風車。
CO2排出案件からの撤退「ダイベストメント」を叫ぶ投資家たち。
GAFAMもカーボンニュートラルを宣言。
「植物肉」で牛肉を減らし、「牛のゲップの温室効果」を止める。
ビル・ゲイツが建設する次世代原発「ナトリウム原発」とは。

京都議定書の「Kyoto」が環境の代名詞だった時代は過去のものとなり、気づけばCO2削減ビジネスの潮流に乗り遅れていた日本。グリーン・ジャイアントに支配される新世界でカーボンニュートラルを達成するために、われわれはエネルギーと、そして原発とどう向き合えばいいのか!?
ここまでトータルに現在の世界のエネルギーを論じた本はかつてなかった。気鋭の記者が渾身で書き下ろす警世の書!

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    気候変動対策は次なるテクノロジーのフロンティアであり、巨額の投資マネーが動く一大市場と化している。
    地球温暖化は多くの議論を生むトピックだ。一部では、「現在の地球温暖化は太陽の活動変化における気温変動の一環である」という論調のもと、人間の手が及ばないとの認識があるが、近年における科学研究の進展の結果、「人間活動の影響で温暖化が起きている」ことが科学者の大部分の間で合意されるところとなった。これに伴い、脱炭素政策とそこに用いられるテクノロジーは、各国の政治的駆け引きに使われる道具にしてはならず、気候変動は全世界が力を合わせて解決に導くべきだという認識が固まっている。

    本書は、そのような気候変動をめぐる文脈の中で、各国がどのような目標を掲げているのかということ、またカーボンニュートラルを達成するために、企業はどのようなテクノロジーの開発を進めているのかに焦点を当てる。気候変動対策とは、他のどの分野よりもテクノロジーが重要視される。EV車、再生可能エネルギー、代替肉といった新技術の開発と導入は政府からの支援を取り付けやすいだけでなく、新たなビジネスチャンスの土壌となる。地球環境を改善しながら新市場を開拓できる未来性のある業界において、「グリーン・ジャイアント(再エネの巨人)」を含むトップランナーたちがどのような製品を開発しているのかを紐解いていく。
    ――――――――――――――――――――――――――――
    気候変動に対応した製品開発で追い風を受けている業界の一つに「自動車業界」がある。具体的にはEV車の開発だ。

    EV車の開発でトップを走るのはテスラである。
    テスラの躍進を支えたのは大規模工場の獲得による電気自動車製造の低廉化と、「充電」というインフラの整備であった。2012年に自社専用の急速充電ネットワーク「スーパーチャージャー」の設置を開始し、現在は世界の2500地点以上で約2万5000基が運用されているほか、2021年には全てを再生可能エネルギーで賄う計画も発表している。

    一方、テスラと方針を異にするのはガソリン車の王者トヨタだ。
    現在の時勢は、トヨタには非常に都合が悪い。もともとハイブリッド車のプリウスを皮切りに省エネ車製造の先頭を走ってきたトヨタだったが、世界がカーボンニュートラル化を背景としたEVシフトに代わると、ハイブリッド車は「エコ」だとみなされなくなった。
    そのような中で、トヨタはEVに全面的に舵を切らずに、「全固体電池」と「水素自動車」の開発を平行で進めている。(これは本書執筆時点の状況であり、2021年12月14日にはバッテリーEV戦略を発表し、電気自動車に本格的に注力していく旨を宣言している)
    全固体電池はその名の通り固体を用いるのが一番の違いだ。全固体電池はリチウムイオン電池に比べて劣化が遅く、電池の容量も大きくすることが可能で、車載向けでは航続距離1000キロも視野に入っているほか、丈夫で発火しにくく、高速充放電も可能とされる。リチウムイオン電池が持つあらゆる弱点を克服できる、まさに「次世代の電池」だ。
    水素は、燃料電池に酸素とともに取り込むことで電気を生み出す。航続距離は850キロほど。水素エンジン車は水素を直接燃焼させることから、大半の部品で従来のガソリン車のものを活かすことができる。
    EV、電池、水素自動車といった全方位外交は、ノウハウと莫大な資産を持つトヨタだから行えることであり、世界のトレンドをどちらが握るのかは、今後のテクノロジーの進化と政府の環境方針次第であるといえるだろう。
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    以上は本書の内容の一例だが、その他にも太陽光・風力発電をめぐる「グリーン・ジャイアント」の動向やビヨンドミート開発の最前線など、気候変動を食い止めるためのテクノロジーが具体的に列挙されており、本書一冊で世界のトレンドを確認できるようになっている。
    加えて、本書はテクノロジーだけでなく各国のビジョンにも触れている。各企業がどこに照準を合わせるかは政府が定める「排出規制」「環境方針」次第なところもあるため、政府が考えている現在地と未来へのロードマップをまず丁寧に読み解くことが、環境対策の最前線を押さえる重要なカギになる。本書はこれに伴って、グローバル目標→国ごとの方針→企業の開発動向、という流れに沿って説明を行っており、これが分かりやすさと詳しさを両立させている点だと感じた。
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    【まとめ】
    1 現在、再エネ業界で何が起こっているのか
    今、世界が向かっているコンセンサス自体は極めてシンプルだ。目標は「産業革命前と比べ、平均気温の上昇を1.5℃以下に抑える」ことであり、そのために2050年までに「温室効果ガス(GHG)の排出を実質ゼロにする」(カーボンニュートラル)というのが大きな流れとなっている。これはもはや「可能性の議論」ではなく、すでにあらゆる人間活動の前提となっている。

    本書では、新たにエネルギー業界の盟主へと躍り出てきた企業たちを「グリーン・ジャイアント(再エネの巨人)」と呼ぶ。今、ようやく時代が追いつき、彼らはすでに世界のエネルギー変革の主役となっている。同じような逆転劇は今後、エネルギー業界にとどまらず、あらゆる領域で起きていく。なぜなら、もはや「脱炭素」の動きは各国の政治やイデオロギーの議論ではなく、すでに巨額の「マネー」が動く領域になってしまっているからだ。各国でCO2排出権に価格をつける検討が始まり、世界のマーケットを動かす機関投資家たちは、気候変動への取り組みが足りない企業から資金を引き上げている。


    2 カーボンニュートラル狂騒曲
    2021年8月に発表されたIPCCの第6次評価報告書では、「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことに疑う余地はない」と、ダメ押しの一打が放たれた。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「人類への赤信号だ」と指摘している。
    温度変化の目標は「2℃上昇」ではなく「1.5℃上昇」。気候変動の分野では1.5℃と2℃の変わり目を「ティッピングポイント」と読んでいる。ティッピングポイントというのは、臨界点のようなスイッチが入るポイントのことだ。温度はゆっくりゆっくり上がっているが、ある一点を超えると影響の出方がガラッと変わり、いくらその後に温暖化を止め、気温が上昇しなくなったとしても、氷は解け続けてしまう。そのようなスイッチが入ってしまう恐れがあるのが「+2℃点」である。

    カーボンニュートラルは、全世界が具体的数値を目標に掲げながら取り組みに当たっている。
    一度はパリ協定を脱退したアメリカも、バイデン大統領の就任に当たり復帰。今後8年間で総額2兆ドル(可決時には1兆ドルに減額)以上をグリーン化につぎ込む「アメリカ雇用計画」の発表や、世界の40の国・地域の首相を束ね「気候サミット」をオンライン開催するなど、気候変動対策を矢継ぎ早に打ち出している。
    世界の温暖化対策で先頭を走るのは欧州である。EUの欧州委員会委員長のウルズラ・フォンデアライエンは、2030年の温室効果ガス55%減(1990年比)を達成するための野心的な包括案を打ち出しているほか、「国境炭素税」の導入を検討している。
    また、発展途上国の中国も気候対策に前向きだ。
    石炭火力発電所の新設が相次いでいる中国だが、一方で2020年には7161万キロワット分の風力発電所を新設しており、これは2019年に世界全体で建設された風力発電の総量を上回る。太陽光発電も4820万キロワット分を新設し、2030年までに両者の発電能力を12億キロワットまで拡大させる目標だ。


    3 グリーン・ジャイアント
    2020年末、米のエクソン・モービルが、新興再エネ企業に時価総額を一時的に抜かされるという事件が起こった。抜いたのは無名の地方エネルギー企業である『ネクステラ』だ。
    1992年当時、ブッシュ政権では風力発電への助成が始まっていたが、2000年代に入ると、各州が地元の電力会社に再生可能エネルギーの使用を義務付けるようになる。すでに風力発電へと進出していたネクステラは、規模の経済で他社より発電機を安く購入し、安定的な建設と運用を実現していく。以後10年間で、テキサス、カリフォルニア、中西部などで次々風力発電プロジェクトを立ち上げると、さらに2006年には、太陽光発電所も手掛けるようになる。これも、太陽光発電への政府補助が生まれるタイミングを捉えたものだった。つまり、ありふれた地方電力会社の一つに過ぎなかったネクステラは、再エネをめぐり連邦や州政府の規制が変わるタイミングを的確に捉えることで、徐々に転身を図ってきたのである。

    ネクステラを始めとした現在世界を席巻している再エネ企業は、いずれも旧来のエネルギー企業だったのが、この20年のどこかのタイミングで再エネに賭けて「転身」したものであり、テクノロジー業界のように、ピカピカのベンチャーがいきなり登場したわけではない。しかし、再エネのコストがまだ高く、代替手段としか考えられていなかったころから、その可能性を見抜き、建設や導入を優先させてきた。21世紀に入り、テクノロジーの進化と低価格化に合わせて発電性が伸び始めると、欧州メーカーがリードしていた市場に中国メーカーが一気に台頭、採算がとれる価格までコストが下がる。これがグリーン・ジャイアント登場の土台になったのだ。


    4 気候変動とマネー
    近年投資家たちが、世界の石炭火力を始め大量のCO2を排出する新案件に対し、撤退を迫るムーブメントを起こしている。投資マネーの世界では「石炭はリスク」という前提がすでに共有され始めている。
    こうした手法は「ダイベストメント」と呼ばれている。投資家たちが、石炭火力などを手掛けるエネルギー企業の株式売却や、案件に融資する銀行に融資引き上げを提案する行動のことであり、エネルギーや資源会社だけでなく消費財メーカーの間でも加速している。
    また投資家だけでなく、アップルやマイクロソフトといったテック系製造企業が、事業全体、製造サプライ・チェーン、製品ライフサイクルにおいてカーボンニュートラルにすることを目指し、取引先に再エネでの部品や素材の生産を要求している。


    5 自動車メーカー
    世界がカーボンニュートラルに向かう中で、各国の政府は一気に「EVシフト」に舵を切り始めている。IEAのロードマップによると、現状世界の1%にとどまるEVのシェアが2030年には20%、2050年には86%を占めることになる。

    EV界の巨人がテスラだ。
    テスラの躍進を支えたのは大規模工場の獲得による電気自動車製造の低廉化と、「充電」というインフラの整備であった。2012年に自社専用の急速充電ネットワーク「スーパーチャージャー」の設置を開始し、現在は世界の2500地点以上で約2万5000基が運用されているほか、2021年には全てを再生可能エネルギーで賄う計画も発表している。

    これに対して欧州メーカーは、各国政府による規制と自動車産業が一体となって動く「ルールメイキング」を軸にEV市場を立ち上げようとしている。
    欧州の自動車規制は「CAFE」と呼ばれている。これは自動車メーカーが販売したすべての新車の燃費の平均を算定し、その数値が基準を下回らないように義務付けるものだ。2021年現在は走行1キロ当たりのCO2排出量を5グラム以下することが求められている。これを達成するための燃費は約20キロ/リッターであり、達成できない場合は当局に罰金を支払う義務が生じる。燃費20キロ/リッターがどういうレベルかというと、日本ではトヨタのプリウスや日産のノートなど、ハイブリッド車しか達成できていない水準である。純粋なガソリン車では、ほぼ軽自動車しかクリアできないレベルの厳しい基準だ。
    自動車メーカー側からすれば、罰金を減らすためにはEVを開発するしかない。というのもCAFE規制では、EVは走行中にCO2を排出しないことから「ゼロ」とカウントされることになるからだ。ここには巧妙なからくりがあり、カウントが「ゼロ」のEVを1台売れば、もう1台販売した車の燃費が約12キロリッターでも、罰金を逃れることができる。また、基準を超過達成することができればその分を「クレジット」として他社に販売することもできる。欧州はこのように独自のルールを一気に強化することで、自動車メーカーのEV化を促しているのである。

    この規制を受け、世界2位の独フォルクスワーゲンは2030年までに欧州販売の7割をEVにすると打ち出したほか、BMW、ボルボ、ランドローバーといった会社もEV開発を進めることを明言した。

    対する自動車業界の巨人がトヨタだ。
    もともとハイブリッド車のプリウスを皮切りに省エネ車製造の先頭を走ってきたトヨタだったが、世界がカーボンニュートラル化を背景としたEVシフトに代わると、ハイブリッド車は「エコ」だとみなされなくなった。ガソリン車を主体とするトヨタには大きな打撃である。
    トヨタは現時点ではEVはやりたくない、というのが本音だ。現在の電池技術では、製造過程(鉱物の採掘過程)においてすでにCO2を大量に排出しているため、脱炭素の解になっていないからだ。
    トヨタが力を入れているのは「全固体電池」と「水素」である。
    全固体電池はその名の通り固体を用いるのが一番の違いだ。全固体電池はリチウムイオン電池に比べて劣化が遅く、電池の容量も大きくすることが可能で、車載向けでは航続距離1000キロも視野に入っているほか、丈夫で発火しにくく、高速充放電も可能とされる。リチウムイオン電池が持つあらゆる弱点を克服できる、まさに「次世代の電池」だ。
    水素は、燃料電池に酸素とともに取り込むことで電気を生み出す。航続距離は850キロほど。水素エンジン車は水素を直接燃焼させることから、大半の部品で従来のガソリン車のものを活かせるというのも、トヨタにとっては嬉しいポイントだ。


    6 気候変動とZ世代
    アメリカの若者の間で、バーニー・サンダース、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスといったプログレッシブ(進歩派)が人気を集めている。
    ニューヨークのZ世代の若者にとって、「気候にいいことをしよう」というのはかなり一般的である。それは今後地球温暖化が進んだ未来において被害を受けるのは自分たちだという当事者意識から来るものである。同時に、貧富の差が拡大し続ける米国においては、各企業が環境に気を配らず利潤を追求する資本主義こそが悪の元凶であり、貧富の差を是正するための一つのピースが気候変動なのだ。彼らの間では既に資本主義への信頼感が薄れ、社会民主主義への支持率が高まっているというデータがある。


    7 日本に残された勝ち筋
    以前は京都議定書の発効など、世界をリードする環境先進国であった日本だが、東日本大震災による原発停止により火力大国へと変貌する。加えて2012年からの太陽光バブルにより、玉石混交の企業たちが太陽光事業に参入すると、発電を制御する電力会社は再エネにアレルギーを感じてしまった。日本がLNGへの依存、石炭火力の復活といった旧エネルギー政策を推し進めていた時期に、世界はパリ協定に向かっていたのだ。
    この時期の世界とのギャップは、日本のエネルギー業界における技術的空白を生み出す。再エネへのシフトが停滞する中で、太陽光のシェアはすべて中国に奪われたほか、次世代の本命である風力、特に洋上風力では、1社も国産メーカーがない状況だ。大型のLNG火力では、かろうじて三菱パワー(2021年10月に三菱重工に統合予定)が残っているが、世界がカーボンニュートラルに向かう中では、ガス火力の需要もそこまでは伸びない。

    これからの日本がカーボンニュートラルに移行するためにはどうすればいいのか?
    まず規制緩和だ。太陽光発電においては、これまで活用できなかった「荒廃農地」を実現し、太陽光発電の絶対量を増やす。また、送電網の問題を解決するため「ノンファーム接続」を推進するほか、イノベーションによる発電コストの削減も重要である。
    風力発電においては、風車の大型化による発電量の増加とコストダウン、風車数の増大、洋上風力のサプライ・チェーンを作ることが喫緊の課題だ。
    今注目されているのは、火力発電にアンモニア(燃やしてもCO2が出ない)を活用し、2050年までに「ゼロ・エミッション火力」を実現することだ。JERAはすでに2021年6月から、愛知県の碧南火力発電所の燃料にアンモニアを混焼させる実証実験を始めており、2024年度中に20%へ混焼割合を引き上げることを目指している。そして最終的には、2050年までにアンモニアだけを燃やす「専焼」につなげて、CO2排出をゼロにしたい考えだ。

    そして、ゲームチェンジの鍵を握るのは原発だ。2050年のカーボンニュートラルには原発は必要不可欠というのは、日本のエネルギー構成を見る限り事実である。しかし、現在は原発に関して将来の具体的な方針が何も示されていない状態である。原発の議論を避けてきた日本では、新型原発のような安全性の高い原子炉への建て替えなどの議論が起こっていない。このまま騙しだまし古い原発を動かすような姿勢を取っていれば、再エネにおけるイノベーションは生まれないままだろう。

  • ・国境炭素税の検討
    一種の関税。輸入品に対して、その製品が生産国で作られた際に出たCO2の量に応じて課税
    →環境規制の緩い新興国には不利!?

    ・中国の主力は未だに石炭火力発電で、新規建設計画もある。一方で再エネ化も進んでいて3割程度を占める。

    ・再エネ(特に太陽光、風力)の最大の弱点は安定性であり、蓄電技術が進化しない限り電気の需要と供給量は一致させる必要があり、出力調整のしやすいガス火力などが必要

    ・デンマークのグリーンジャイアント、オーステッドは洋上風力発電のトップランナー。コストも激減しており化石燃料よりも安い。

    ・GPIFはESG指数で投資先を評価して投資判断や持株比率を決定している。

    ・ヨーロッパではEV促進のために、各自動車メーカーの販売する自動車トータルの平均二酸化炭素排出量に規制をかけた。超えたら罰金、余れば販売可能(クレジット化)

    ・トヨタの切札「全固体電池」「水素自動車」
    トヨタはEVはやりたくないが、全固体電池は航続距離の短さというEVの弱点を覆せる。水素自動車についてはガソリン車と駆動機構が一緒なため、エンジン製造に関わる技術や雇用を守ることができる。

    ・オートリー(北米発)の代替ミルク=オーツミルク
     →実は代替肉よりも市場規模が大きい。21年上場
      植物性ミルク市場は、1位アーモンドミルク 
      2位オーツミルク。

    ・原発について
     原発ベンチャー「テラパワー」、小型原発「ニュースケール」など、新型原発への注目が増している。

    ・日本の生きる道
    アンモニアを燃料とした火力発電
    「クリーン水素」は再エネによる水素の製造が必要であるため、再エネに余力がある北欧等から調達するしかない。水素の搬送手段は確立されておらず、キャリアとしてのアンモニア利用の考えがあるが、それならアンモニアを直接燃焼させてしまえば良い。そしてその技術は世界ではあまり注目されていない。NOx除去技術においては日本は世界トップクラスである。

  • クリーンエネルギーについて色々な角度からの話があって大変面白かったです。福島第一原発事故が日本のクリーンエネルギー施策の遅れに与えた影響は想像以上に大きく、タイミングの悪さが悔やまれますね。ただ世界は北欧のように地震のあまり無い安全な国ばかりという訳でもないので、地震も多い上に遠浅の海岸にも恵まれない島国がどう原発やクリーンエネルギーと向き合っていくのか、世界をリードするチャンスでもあるなと同時に思います。

  • 人間活動による地球温暖化は、ほとんど間違いない。
    そうした中、アメリカ、中国、ヨーロッパが脱炭素に大きく舵を切っている。
    ここでも日本はイニシアチブを取れそうにない。
    自動車はEVとなり、牛肉や牛乳を摂取しなくなり、植物肉、オーツミルクを食べる。
    再エネ比率を高めるため、太陽光、風力発電の普及、最新の小型原発の開発。

    これらの流れに、対応せざるを得ない状況にきてるけど、日本では遅々として進まなそう。

  • 気候変動問題をビジネスとしてどう捉えられているかを複数プレイヤーの視点から概説されている本。
    現在の動向をキャッチアップする観点で、大変参考になりました。

  • 体系的に現況が理解できました。
    菅さんはスマフォ料金値下げによるデジタル化、カーボンニュートラルの提唱等、いい事やってるのに国民の人気は低かったなぁ

  • 「脱炭素」を取りまく状況が理解出来ました。

  • 中国のCO2排出量だけで世界の3割、2位のアメリカはその半分…ESG実施観点でのネガティヴ/ポジティブスクリーニング
    自動車業界の話題多め。2021年の出版だが、EV市場の覇権争いは2023現在中国BYDとテスラが2強でトヨタの乗り遅れ感は2年前より拡大している印象。
    インポッシブルバーガーの誕生経緯が分かって興味深かった。

  • 再生可能エネルギーを中心とした世界の動きをフラットに解説。イデオロギーはほぼない感じ。

    迷走しないように政府は動かなければならない。
    民主党の大きな間違い。

    読了30分

  • 再生エネルギーが石油を超える未来が来るのか、読み進めながら痛感。また日本が世界と比して再エネ事業に遅れていることが気がかりである。将来のために国として再エネ事業に投資するのを期待したい。

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