北条氏の時代 (文春新書 1337)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166613373

作品紹介・あらすじ

鎌倉幕府150年の歴史をつくった謎の一族、北条氏。
名もなき一介の一族はなぜ、日本の歴史を変えることができたのか――。


北条氏の時代を象徴する「七人の得宗(当主)」を中心に読み解く。


第一章 北条時政 敵をつくらない陰謀術  

         ・鎌倉幕府の誕生  
         ・曾我兄弟の仇討ち事件
         ・13人の合議制
         ・ライバル梶原氏、比企氏を次々と滅ぼす

第二章 北条義時 「世論」を味方に朝廷を破る

         ・幕府きっての武人、和田氏の滅亡
         ・将軍実朝暗殺事件 
         ・後鳥羽上皇との直接対決、承久の乱

第三章 北条泰時 「先進」京都に学んだ式目制定

         ・明恵との出会い
         ・御成敗式目の制定
         ・天皇の即位に介入

第四章 北条時頼 民を視野に入れた統治力

         ・「撫民」とは何か
         ・仏教を政治に生かす
         ・三浦氏の滅亡
         ・将軍を次々と取り換える

第五章 北条時宗、貞時 強すぎた世襲権力の弊害

         ・二度の元寇のもたらしたもの
         ・改革者、安達泰盛の登場
         ・霜月騒動で安達氏が滅亡
         ・御内人、平頼綱の専制


第六章 北条高時 得宗一人勝ち体制が滅びた理由

         ・高時は本当に「暗愚」だったのか
         ・後醍醐天皇はなぜ倒幕を考えたのか
         ・幕府にもっとも近かった足利尊氏の裏切り
         ・全国で根絶やしにされた北条一族

感想・レビュー・書評

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  • 如何にして北条氏は鎌倉幕府の中枢と成り、統治し、滅びたのか。
    北条家のリーダーたちの実力、人脈力、「世論」力で、
    鎌倉時代の姿を読み解き、歴史の流れを語ってゆく。
    中世の鎌倉の地図 現在の都道府県と旧国名
    北条氏系図/天皇家家系
    第一章 北条時政―敵をつくらない陰謀術
    第二章 北条義時―「世論」を味方に朝廷を破る
    第三章 北条泰時―「先進」京都に学んだ式目制定
    第四章 北条時頼―民を視野に入れた統治力
    第五章 北条時宗、北条貞時―強すぎた世襲権力の弊害
    第六章 北条高時―得宗一人勝ち体制が滅びた理由
    北条氏との時代関連年表

    地方の小さな一族が政治の表舞台に登場し、権力を掌握、
    鎌倉時代を牽引し、滅びるまでの通史を、
    核となる人物中心に分かり易く解き明かす。
    それは、北条氏リーダーシップの歴史。
    時代変革の波を乗り熟した、時政。
    承久の乱をも乗り越える御家人中心主義の、義時。
    最も優秀、あらゆることを吸収し行動するリーダー、泰時。
    混乱の政局の末、連署の極楽寺重時と安定体制を整えた、時頼。
    元寇と貨幣経済の浸透の中で揺れ動いた、時宗。
    御内人の存在と得宗の権力による空虚な政権の、貞時。
    御家人たちに見捨てられた鎌倉幕府と最後の得宗、高時。
    そして、呆気ないほどの北条氏の滅亡。
    知りたかった大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のその後の歴史。
    別に読んだ本は研究書で、人物関係が複雑で難解でしたが、
    この本では親族関係とか、さり気なく補完しています。
    「鎌倉殿の13人」の登場人物の子孫が多くいるのも面白い。
    トリックスター三浦義村の子孫のその後や、
    北条氏一族内での諍い、将軍や朝廷と幕府の対峙も、分かる。
    陰謀、暗殺、実行犯の口封じ、一族殲滅、等々、血腥いこと。
    ある意味、欲望の深さって果てしないんだなぁ。

  • 鎌倉幕府の勃興から滅亡まで、北条氏の執権たちを主軸に鎌倉時代を通史として概観する。ポイントを押さえ込み入った人間関係もわかりやすかった(読み終わると頭から抜けてしまいましたが) 今まで永井路子さんのをおもに読んだが勃興期のものが多かった。こうして滅亡までを通史的に読んで印象に残ったのは、滅亡期だった。

    鎌倉幕府、北条氏の滅亡は1333年5月22日、14代執権、高時は討幕軍に囲まれ菩提寺の東勝寺にこもり自害する。ともに散ったのは「太平記」には283人とあり、北条一門か御内人(得宗本家に仕える人)ばかりで、一般の御家人はほとんどいないという。

    北条氏はライバルをたおし、その領地を奪って肥大化してゆき、滅亡時点では日本のほぼ半分の国の守護職を持っていたとされるが、滅亡時には御家人たちには見捨てられていた。御家人ファーストで始まった鎌倉幕府だが、しだいに「得宗ファースト」「御内人ファースト」になっていて御家人たちの不満が高まっていた。

    足利尊氏は御家人であり北条守時(16代最後の執権)の妹が正室でありながら、北条家を裏切り討幕軍となったが、本郷氏は、後醍醐天皇に共鳴したのでもなく、「北条氏中心の幕府を終わらせて、自分が中心となった新しい武士の政権を作ろう」とひらめいただけのことだったとする。その「裏切り」の決心を促したのは御家人たちの「世論」だとする。

    時政、義時、泰時の3代は新しいものを作る草創期。人間にたとえるなら青年期だ。5代時頼は壮年期か。元寇にあたった時宗、その次の貞時は、「強すぎた世襲の弊害」との見出し。それまでの執権は実力で執権を勝ち取ったのに対し、時宗は得宗家の嫡男に生まれた、生まれながらにして執権を約束されていた世襲のリーダーだ、というのだ。それが滅亡への序章となる。

    北条時政~敵を作らない陰謀術
    北条義時~「世論」を見方に朝廷を破る
    北条泰時~「先進」京都に学んだ式目制定
    北条時頼~民を視野に入れた統治力
    北条時宗、北条貞時~強すぎた世襲権力の弊害
    北条高時~得宗1人勝ち体制が滅びた理由


    高時の子、時行は陥落の中逃れる。諏訪に逃れ2年を過ごす。この間に建武の新政が始まり、1335年、高時は挙兵。北条残党や新政に疑問を持つ者達が合流。7月25日に鎌倉に入る(中先代の乱)。が尊氏軍の前に敗走。その後も諦めることなく戦い続け、決起と敗北を繰り返し1353年に足利軍に捕らえられて鎌倉龍ノ口で処刑。これが漫画「逃げ上手の若君」になっており本郷氏が解説を担当。


    2021.11.20第1刷 図書館

  • 分かりやすく、面白かった。
    学校で教わった程度しか、知識が無かったが「なるほど〜」と感じる部分がたくさんあった。
    ただ著者も書いているが、北条さんがたくさん出てくる上に、名前が似ていて(時がつく人がいっぱい!)私は少し混乱してしまいました…。

  • NHK大河ドラマ〝鎌倉殿の13人〟では、<北条義時(小栗旬)>が鎌倉幕府の執権を司り「承久の乱」の戦後処理に注力するなかでの病死、続いて頼朝の妻<北条政子(小池栄子)>が亡くなるまでのドラマ化が予想されるが、鎌倉時代を中心に日本中世史が専門とする著者が、血生臭さと人間臭さのただよう陰謀の時代の通史として、鎌倉幕府滅亡までを分かりやすく解説されている。〝北条一族を滅ぼせば、北条のもつ土地が恩賞として与えられる〟あまたの戦いの歴史は、人間の悪の論理に塗り込められた不条理の証しとして、今も何ら変わっていない。

  • 専門分野だけに流石に面白い。が、だんだんどうでも良くなるのが気になる。

  • 歴史の面白さを再認識させてくれた本郷先生のご専門である鎌倉時代を、特に北条氏を軸に読み解く一冊。
    大河ドラマ「鎌倉殿の十三人」時代から続く、政治システムとして機能した北条氏の解説書。
    さまざまな文献、歴史書を基に、詳に解説される鎌倉時代はとてもリアル。
    ぼんやりと認識していた、将軍頼朝と北条の関係をとてもクリアに学ぶことができる。
    新書ではあるが、情報量が多すぎて、何度も読み返す必要がありそう。
    読んでから買う本認定。

  • 大河ドラマをもっと深く知りたくて読んだ。鎌倉幕府とは、北条氏とは、が分かり易く解説されていて、一層興味がわいた。

  • 文藝春秋社の「本の話 メールマガジン」に応募したら、この本が当たりました。
    日本中世史(鎌倉時代)を専門とする本郷教授の執筆なので、応募したのですが、たまたま今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」とぶつかりラッキーでした。NHKとしてこの時代をテーマにした大河ドラマは2012年の「平清盛」以来です。この時は低視聴率にNHKも悩まされたようですが、今回は汚名返上すべく豪華キャストで臨むようです。

    本書は、当時辺境であった伊豆の田方郡を拠点とする平氏の在地豪族であった北条氏が、如何にして鎌倉幕府の中心的な地位まで登り、その後百年以上に渡り日本を動かす政治集団のリーダーに成り得たのか、かつ滅亡する原因は何であったのか等をリーダーシップのあり方を通じて論じたものです。
    この本を読んで興味を引いたのは、以下の3点です。

    1.北条氏の幕府内での地位
    頼朝を支えた御家人を分類すると、
    ① もっとも重んじられたのが、頼朝の親族にあたる「下野の足利氏」「信濃の平賀氏」。 この一族は将軍になれる可能性があります。後の室町幕府を作った足利尊氏は、この一員です。
    ② 次に「家の子」と呼ばれる頼朝の親衛隊。北条義時や結城朝光等
    ③ 最後は「侍」。これは普通の御家人だが、この中でも大きな意味を持っていたのは、伊豆、駿河、相模、武蔵の南関東四か国の御家人で、ここの出身者であれば、幕府の中枢に入ることができた。北条氏、安達氏、三浦氏、和田氏、梶原氏、畠山氏、比企氏がこれに当たります。
    北条氏もこの有力メンバーの一員ではあるが、飛びぬけて大きな存在ではなく、むしろ頼朝の伊豆時代を経済的に支えた比企氏の方が優勢で、頼朝は二代将軍となる頼家の妻をこの一族から迎えています。
    そしてこの御家人の中から如何にして北条氏が抜けだしてくるか・・・は、省略します。

    2.元寇の時の北条時宗は「救国の英雄なのか」
    結論を言ってしまえば、著者の見解は、「外交能力の欠如した幕府崩壊の遠因となった無力なリーダー」というものです。詳細は本書に譲ります。

    3.幕府の変遷という視点
    ① 鎌倉幕府1.0:頼朝の開いた幕府
    ② 鎌倉幕府2.0:承久の乱で朝廷を打ち破り西国進出
    ③ 鎌倉幕府3.0:元寇以降・・・幕府は、元寇による外からの脅威に対応した挙国一致体制を目指す「(オールジャパン)統治派」と「御家人ファースト派」との争いが続く。この争いは「御家人ファースト派」が勝利するのですが、その後の変遷を経て、執権職を誰かに譲ったのちに、北条本家の当主が権力を掌握し続けるという「得宗家ファースト」というべき偏狭な幕府に変わってゆきます。
    しかも時代の流れでもある貨幣経済に上手く対応できないこともあり、御家人の離反を招き、その中から新しいリーダーとして足利尊氏が登場し、幕府の滅亡へと繋がってゆきます。

    著者は「北条家の成長と安定、それに衰退の歴史を知ることは実に興味深い。足利氏も徳川氏も、家の歴史として見たときに、ここまでのダイナミズムはありません・・(略)・・私たちの視点からすると、なんだか不思議な一族。北条氏の足跡を追いながら、日本という国がもつ特質に思いを馳せて下されれば、書き手としてはこれに過ぎる喜びはありません」と結んでいる。

  • 大まかに理解していると思っていたが、経済の変化 御家人との関係の変化なども含めて概観するとかなり興味深い時代だということがわかります。
    自社巡りが好きなので、改めて鎌倉周辺を回ってみようと思っています。

  • 北条一族の歴史がよく分かる本。

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。1983年、東京大学文学部卒業。1988年、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。同年、東京大学史料編纂所に入所、『大日本史料』第5編の編纂にあたる。東京大学大学院情報学環准教授を経て、東京大学史料編纂所教授。専門は中世政治史。著書に『東大教授がおしえる やばい日本史』『新・中世王権論』『壬申の乱と関ヶ原の戦い』『上皇の日本史』『承久の乱』『世襲の日本史』『権力の日本史』『空白の日本史』など。

「2020年 『日本史でたどるニッポン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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