トッド人類史入門 西洋の没落 (文春新書 1399)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166613991

作品紹介・あらすじ

トッド理解の最良の入門書にして、主著『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』を読み解くための最適なガイド。政治学、経済学ではわからない現代の混迷(「西洋の没落」)を人類学が解き明かす。「世界」がそれまでとは違って見えてくる! 世界で物議を醸した仏フィガロ紙インタビュー「第三次世界大戦が始まった」も特別収録。

『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』
――「21世紀の人文書の古典だ」(佐藤優氏)
――「読めば読むほど味わい深い」(片山杜秀氏)

(内容)
1 日本から「家族」が消滅する日――「家族」の重視が少子化を招く E・トッド
2 ウクライナ戦争と西洋の没落――「露と独(欧州)の分断」こそが米国の狙いだ E・トッド+片山杜秀+佐藤優
3 トッドと日本人と人類の謎――「西洋人」は「未開人」である 片山杜秀+佐藤優
4 水戸で世界と日本を考える――日本に恋してしまった E・トッド
5 第三次世界大戦が始まった――弱体化する米国が同盟国への支配を強めている E・トッド

●エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
1951年生。フランスの歴史人口学者・家族人類学者。国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、『最後の転落』(76年)で「ソ連崩壊」を、『帝国以後』(2002年)で「米国発の金融危機」を、『文明の接近』(07年)で「アラブの春」を、さらにはトランプ勝利、英国EU離脱なども次々に"予言"。著書に『エマニュエル・トッドの思考地図』(筑摩書房)、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』『シャルリとは誰か?』『問題は英国ではない、EUなのだ』『老人支配国家 日本の危機』『第三次世界大戦はもう始まっている』(いずれも文春新書)『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(文藝春秋)など。
●片山杜秀(かたやま もりひで)
1963年宮城県生。思想史研究者・慶應義塾大学教授。著書に『未完のファシズム』『尊皇攘夷』『11人の考える日本人』など。
●佐藤優(さとう まさる)
1960年東京都生。作家・元外務省主任分析官。著書に『国家の罠』『自壊する帝国』『宗教改革の物語』『佐藤優の集中講義 民族問題』など。

感想・レビュー・書評

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  • 最初に驚いたのは佐藤優さんの「はじめに」が
    入院中に書かれたこと。
    さらに佐藤さんは2022年10月27日モスクワ郊外で開催されたヴァルダイ会議に、ロシア大使から招待されたということ。
    人工透析中で行けなかったそうですが、
    そんな声がかかるんだ!とびっくり。
    でも行くのは怖い気がします。
    (そう思うのは私だけでしょうか?)

    閑話休題。
    昨年トッドさんの『第三次世界大戦はもう始まっている』を読みました。
    トッドさんはウクライナ戦争に関する本を
    フランスではなく日本で出版。
    なぜかというと、日本はヨーロッパ人と同様反ロシア的だが
    戦場から地理的に遠く、
    ヨーロッパ人がウクライナに抱いているほどの
    感情的な関係がないこと。
    そして何より彼はフランスで
    「反逆的な破壊者」という汚名をきせられていますが
    日本では人類学者、歴史家、地政学者として尊重されていること。

    私だけじゃないでしょう、
    「ニホンダイスキ」と言ってくれる欧米人が大好き。
    トッドさんのお話しは面白いけど、
    うーん、鵜呑みにするのはどうかなあと思ってしまいます。

  • エマニュエル・トッドとの対談

    ロシアとウクライナ
    日本や西洋の立場でなく、非西洋的な立場から見れば違った視点が見えてくる。
    進んでいると思われた西洋の家族のあり方。
    ロシアから見たら西洋による侵略からの防衛戦争
    アメリカによるドイツの国力低下を狙った武器許与
    ロシアのGDPでは測れない軍事力

    正義でなく、ここにある現実を知ることの大切さ
    もちろん、殺戮が決して許されることではないけれど、そろそろ、冷静に2つの国の立場を確認することも大切なのかなと思いました。

  • 昨年出たトッドの『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』を読みたいのだが、上下巻の大著だし、難しそうだしで、躊躇していた。そこに、同書へのガイドとして編まれた本書が出たので、読んでみたしだい。


    トッドへのインタビューや、佐藤優さん、片山杜秀氏との鼎談などで構成されている。つまり全体が談話で成り立っているので、わかりやすい。

    そして面白い。帯の惹句通り「世界が違って見えてくる」ような感覚を味わえる。例えば、ウクライナ戦争についての見方が変わった。

  • 題名の「トッド」とは、フランスのエマニュエル・トッドのことである。独自な研究で世界を語るという感のエマニュエル・トッドである。近年『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』という人類の歴史を鳥瞰しながら、幾分掘り下げて行くという、長きに亘る研究の集大成的な本を上梓している。日本語版も登場して然程の時日が経っていない。この本の内容を念頭に、片山杜秀、佐藤優の両氏が「トッドの論点」で最近の話題等も掘り下げて論じるという感の一冊である。
    本書は、トッド自身のインタビュー、トッド、片山杜秀、佐藤優の3氏による鼎談、片山杜秀、佐藤優の両氏による対談というような体裁の各部、5つの纏まりから成っている。各々に興味深い。が、個人的には「ウクライナ戦争と西洋の没落」、「第三次世界大戦が始まった」という部分に殊に引き込まれた。
    「ウクライナ戦争と西洋の没落」、「第三次世界大戦が始まった」という部分に在る論点は、これまでにエマニュエル・トッド関係の本で論じられているモノに触れている内容と被る。それに佐藤優関係の本で論じられているモノも加わり、鼎談として内容が交差しながら掘り下げられている。
    色々な経過を辿った人類の経過の中、現在に至って「第三次世界大戦」とでも呼ばれるようになって行くかもしれない事態に「踏み込んでしまっている?」ということに「気付かなければならない?」ということが本書では示唆されていると思う。
    ウクライナの戦争に関して、本書の中では「思いも掛けぬ長期化」という見立てが色濃いかもしれない。他方に、1年程度の期間で何らかの収束が図られるかもしれないという見立ても在るのかもしれない。「あんた個人が如何思おうと、何ら関係無い…」とでも言われてしまうかもしれないが、それでも個人的には「人々の生命が擦り減らされるようなことを少しでも早く停めて頂きたい…」というように思いながら、この事案に纏わる情報に触れている。
    そしてトッドの研究の出発点でもあるような「家族」という問題を論じた部分も興味深い。表層的に然程の影響が無い様で在りながら、しぶとく影響力を行使し続けるような文化を「ゾンビ〇〇」と本書の中では呼んでいる。「ゾンビ儒教」とでも呼ぶべき、深く浸透した儒教の影響を免れ悪い地域の国々では、「子どもの面倒を」、「親の面倒を」と何でも背負い込むような感が在り、現に要る老いた親の面倒を見る関係で、未来を担う子どもに関する事柄を推し進め悪い側面が否定出来なくなるという論が展開されていた。日本もここで言う「ゾンビ儒教」という域内に入ってしまう。少し考えさせられた。
    初出が雑誌という部分が殆どなのだが、本書は何か「読み応えが在る記事を集めて一気に通読」という感じでもあると思う。本書のような、大著の内容を念頭に、その「触りの議論」へ一般読者を誘うような本は、なかなかに好いと思う。

  • トッドの知性は現在世界の知識人の中でも、ずば抜けて信頼がおけるということを再認識した。

    トッド自身の語り口の妙は相変わらずだが、トッドの集大成ともいえる「我々はどこから来て、今どこにいるのか?」の読みどころを論じる片山と佐藤による対談も勘所をよく押さえていて、良いおさらいになった。

    ウクライナ戦争が「政治的価値観の対立」であるのは表面的なことであって、(そして経済的な動機もあくまで一面であって)より深い次元では「人類学的価値観の対立」であり、したがって意識的なレベルのことに尽くされないということを明晰に教えてくれる。


  • 家族類型という考え方がとても腑に落ちた。
    地政学の視点からの深い考察。

  • 新鮮。目から鱗。濁った視野を爽快に洗い流してくれる。そして思いもしなかった視座を提示してくれる。新書で、しかも佐藤優と片山杜秀の対話型解説(贅沢が過ぎる)ということも手伝って、キャッチーに吸引力が凄い。良かったぁ。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/563212

  • 家族の形を分類して考察するところが目新しく、面白かった。日本は長男が家を継いでいく的な直系家族だというのは今の時代たしかに違うけど根底として残っていると感じているし、ドイツが同じような家族形態であったこと、さらに直系型であるが故に社会が安定・硬直しがちで、英米の核家族型社会の破壊的創造と対比されるところはなるほどだった。
    また、ウクライナ戦争についてプーチンの方が多様性を重視していて西洋側が文化を押し付けようとしている、という部分は日本メディアでは聞かない話なのでもっとちゃんと知りたいと思った。

  • トッドさんの最新の見解を対談形式を通して確認できるのでとても読みやすかった。またその見解が他国よりもここ日本で比較的受け入れられているというのは日本人の柔らかさなのかなと思う。
    そして距離人種如何に関わらず争いの早期終結を心から願っています。

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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