宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション 下 (文春文庫 ま 1-96)
- 文藝春秋 (2004年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167106966
感想・レビュー・書評
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全て面白いが’、中でも「西郷札」が秀逸。
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宮部さんによる松本清張傑作短編集最終巻。
今回のコンセプトは・・・
ズバリ、「作家松本清張の書きたかったもの」という気がします。
「タイトルの妙」という章に納められた3つの短編、
「支払い過ぎた縁談」「生けるパスカル」「骨壷の風景」は、
どれもタイトルを見ただけで、
その内容を想像し、早く読みたくてたまらなくなりました。
タイトルから読者の興味を引き付ける、
そんな手腕も清張さんは持っていたのかなと思うほど、
スリリングなタイトルの付け方です。
そして、次の章では、権力についての作品が並びます。
「帝銀事件の謎」・・・
昭和の事件史を清張さんがかくとこんなにもミステリアスになるのです。
実際に起こった帝国銀行での毒殺事件。
その裏にはおそるべき政府とGHQのやり取りがあり、
さらにその奥には、あの戦争時に
細菌兵器の研究に取り組んでいた731部隊の上層部の存在が
見え隠れしています。
戦後の日本において絶対の権力者だったGHQの所業を
清張さんは冷静で論理的に描き表わしていました。
まさに、「記者の眼」です。
清張作品の中には、
社会の悪を暴いた小説も少なくはないのですが、
それを出版するには、それなりの覚悟が要ったことだろうと思われます。
そうまでして清張さんが世の中に残しておきたかったもの。
それは何だったのか。
私の未熟なレポなんかよりも、
実際の原作を読んでみてくださいとね。
清張さんがまだ生きていらしたら、
現代社会を題材に、どんな小説を書いて下さるのか、
私はそちらの方に興味がわいてきました。
ミステリー小説もさることながら、
政府の胸元深くにナイフを突き立てるような
鋭い観点の社会派小説が登場するような気がしてなりません。
政界の裏・・・清張さんだからこそ描けた分野です。
今はそこまで深く取材して小説に仕上げてくれるような
大物の小説家は存在しないと思います。
つくづく、お亡くなりになったのが惜しまれます。 -
13/08/31 最後の「火の記憶」がよかった。
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10年近く前に、ドラマ化を機にブームになったらしい松本清張の、ブームに乗ろうとした短編集。選者に宮部みゆきを据える作戦に、あざといと思いながら乗せられて手に取った。
上、中巻同様昭和の色が濃い作品が多く、犯行の動機や世間の意識などから、ミステリとしては成立していないものも含まれている。例えば「支払い過ぎた縁談」などは楽しむ気持ちで読むのは難しく、こういった作品はもう昭和の匂いを楽しむしかないが、そうでない作品も収録されている。歴史に題を取った作品がそうで、この下巻に収録されている「西郷札」「菊枕」の2編は面白かった。
自分は「菊枕」のラスト近く、圭介の記述が胸に染みた。ほとんど語られなかった圭介であるが、ぬいに対してこんなことを感じていたのだろうか。 -
良いよ。
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さらに下巻へ突入。ここでは「骨壺の風景」がいいと思った。
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人間の黒い情念。愛憎。
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風俗はとんでもなく古いが、 やはりストーリーテラーとしては腕利きだ。かなり読ませる。 「鴉」という短編は名作ではないかと思う。 何気ないプロローグがラストに意外な形で結びつく。
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宮部みゆき氏が監修する清張作品。タイトルで惹かれる短篇や、権力の怖さを描いた作品を紹介している。「帝銀事件の謎」は推理小説家らしい推測で真の犯人像を絞り込んでいる。