- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167138165
感想・レビュー・書評
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文章の書き方の章が実に面白かった。そして参考になった。小説やエッセイだけでなく技術報告書にもそのまま適用できる。
後、対談仕立てのせいか、現代かなづかひでいつもの氏の本より少しだけ読みやすかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
書くためには、考える。考えるためには本を読む。そしてその本を、どう選び、どう読めば良いかが、対談の中で語られる。
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人間にとって最高の遊びは、ものを考えること。
これがわかった事が大収穫です。 -
面白かったです。
最初は「あんまり合わないかなぁ。」と思いましたが、読んでいくうちに面白くなってきました。
この本にはとても沢山の人が会話の中に出てきますが、僕はほとんど知らなかったので、もっと本を読もうと思いました。
ただ、この本に書いてあった通り、身の程を知り面白いと思う本をこれからも沢山読んでいきたいです。 -
芥川賞も受賞している作家・評論家・随筆家である丸谷才一が、“思考”のためのノウハウについて語ったもの。
文藝春秋社の『本の話』に1998~99年に連載されたもので、1999年に単行本として発刊、2002年に文庫化された。
具体的には、レッスン1:思考の型の形成史、L-2:私の考え方を励ましてくれた三人(中村真一郎、バフチン、山崎正和)、L-3:思考の準備、L-4:本を読むコツ、L-5:考えるコツ、L-6:書き方のコツ、が語られている。
例えば、「思考の準備」では、
「よく「どうやって本を選べばいいんですか」という質問を受けることがあります。しかし、これは、読みたい本を読むしかないんですね。・・・要するに「本の読みたくなり方において賢明であれ」と言うしかない」
「本の世界は、一人の著者が何人もの著者にバトンを渡して行く。受け取った何人もの著者がまた走って行って、さらに何人もの人にバトンを渡すという仕組みで次々とつながって行く。それによって、人間の文化は続いてきたわけです。この経緯を考えながら本を読めば、より明快な見通しが出てきて、本がさらによく理解できると思います」
「その最初の一冊目をどうやって手にするかという問題は、・・・コツの一つは書評を読むこと・・・ひいき筋の書評家を持つこと、ひいき筋の学者を持つこと」
「われわれ普通の読者の場合でも、ホーム・グラウンドを持っていれば、いっそう深い読み方ができるんじゃないかなあと思ったんです。・・・ホーム・グラウンドでの知識、経験を抱えて、専門以外の分野へもどんどん出て行くわけです。ヴィジターとして他のグラウンドへ行って、そこで十分に戦うことができる、対等に戦える。そのことが大事なんですね」
「生活と一体になっている古典、それが民衆のホーム・グラウンドであり、それが伝統というもんだと僕は思うんですね。イギリス人が、なにかと言えばシェイクスピアでものを考えるように、古典や伝統をホーム・グラウンドにして、文明は成立していると思うんです」等。
また、評論家らしく、古今東西の作家・評論家・学者とその作品が次から次へと出てくるが、その点でも役に立つ。
解説で、大学でフランス文学を教える鹿島茂は、「本というものは教科書以外にはまったく読んだことがないと正直に告白する学生・・・何を書いたらいいか、いやどう考えたらいいかさえわからない学生に・・・ようやく現われた、願ったりかなったりの本であるといっていい。実際、論文指導にこれほど役に立つ本もない」と述べ、「思考のルールブック」と評している。
(2008年11月了) -
14/8/19読了
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・イギリスのアマチュアリズムの伝統
・まとまった時間があったら本を読むな。本は原則として忙しい時に読むべきもの。まとまった時間があったらものを考えよう。
・詩情、詩的感覚がものを考える時に大切。
・「対話的な気持ちで書く」が書き方のコツ -
丸谷才一の書くものはなぜ面白いのか。それは彼自身が面白主義者だからだ。彼は面白くないものを嫌う。その代表として彼が挙げるのは「常識的な見方」と「政治的イデオロギーに染まった見方」である。こうした固定観念から離れて、自由に考えた新しいことをユーモラスに書く。だから丸谷才一の書くものは面白い(そのため彼が面白がって取り上げるものには異端説が多い。少々それに肩入れしすぎるところがあるのはご愛嬌だ)。
本書では丸谷流の面白いことを考えつくためのコツが語られる。個人的に面白いと思ったところを一点。
それは「本を読む前に考えろ」ということ。時間があったら本を読まずに考える、疑問が生まれてもすぐに本を読まずにまずは自分の頭で考える。考えを整理したり熟成させたり仮説を立てたりしながら本を読む方が、必要に迫られた読書である分だけ吸収も早く、思考も深まり、新しい考えも生まれやすいのだと。暇さえあれば本を読み、分からないことがあったらすぐに調べるという癖が染みついている私にとって、これはありがたい警句だった。
そういえばショーペンハウアーも「読書とは他人にものを考えてもらうことである」と書いていたことをふと思い出した。 -
もし若い人におすすめの本を訊かれたら本作を答える。
あらゆる書店で平積みにされている、思考のナントカ学より、これ。
本書からもっとも刺激を受けたのは、仮説は大胆に立てるべし、という指摘。小説家らしい意見。勇気が湧いた。また、そういった大胆な仮説は多かれ少なかれ滑稽なものを含んでいる。そこにユーモアの消息が生じる。ひとつ思いだすものがあった。大江健三郎の小説。
それから、「白玉クリームあんみつ」への違和。この、散文の極限のような名付け方。遊び心の皆無。
日頃思っていたことがずっと明解に書いてあって感心した。そう、白玉クリームあんみつと較べたら、どんな悪趣味な名称だって許される。極端な話、白玉クリームあんみつ、というのは、例えば23145324などと数字で表記するほうがましなほどのっぺらぼうだ。ただ簡単な材料だけを並べただけのもの。
悪趣味よりも、無味乾燥のほうがどれほど危険か、教えられた。